キャリアガイダンスVol.438
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の入社試験はもとより、近年は大学入試でもプロセスが重視されるようになってきていて、志望理由や今後の目標は就職にせよ進学にせよ面接では必ず聞かれます。その対策のためにも不可欠なプロセスだと考えています」3年次になり具体的に進路を決める段階になると、さらに個別対応の色合いが濃くなる。面接指導にも全教員が対応。職員室の前に申込用紙が用意され、生徒が教員を選べるようにしている。「話しやすい先生だけでなく、あえて苦手な先生にも面接指導をお願いするといいよ」と前田先生はアドバイスしているという。「国語の先生が放課後に小論文対策をしてくれたり、看護系に進みたい生徒のフォローを数学の先生がしてくれたり、漠然と養護教員になりたいと言っていた生徒を養護の先生が〝弟子〞にしてくれたりと、先生方の熱意に依存している部分が大きいですね。大変ありがたいことですが、公立高校の教員には異動がありますから、人が代わっても指導が継続するシステムを進路指導部として作っていく必要があると感じています」 高校での3年間が終われば、生徒たちはそれぞれの道を歩いていく。「高校を卒業して次のステージに進んだら終わり…ではない」と前田先生。「生徒の人生はずっと続いていく。5年後、10年後に幸せを感じられているか、楽しく充実した日々を送れているか、先を見据えた進路指導をする必要がある」と締め括った。 やりたいことや憧れの職業があっても、「なんとなく」で思考が止まっている生徒も多い。「それいいね、と教師が肯定するのは簡単だが、安易な選択は就職後、進学後のミスマッチにつながりかねない」と前田先生。大事にしているのが、生徒への問いかけだ。「どうしてその分野・学校がいいと思ったのか、その仕事に就きたいと思ったきっかけは何か、具体的にどんなところに魅力を感じているか、その進路に向けてどんな準備をしているか、その学校に入ったら・その仕事に就いたら、どんなことがしたいか、将来はどうなっていきたいか…とにかく根掘り葉掘り突っ込んで聞いていきます。最初は曖昧でも、問いかけられることで生徒自身が考えるようになり、少しずつ思考が深まっていきます。就職「生徒を全方位から見る、生徒の情報を全方位から集めて進路に結びつける…という意味合いも込めています。進路指導のヒントはどこに転がっているかわかりません。そして、生徒に関する情報をいかにたくさんもっているかで、進路指導の質は大きく変わってきます。とはいえ、教員一人では限界があります。普段の生活や授業中、部活動といったさまざまなシーンで、担任や教科担当、部活の顧問などいろんな先生が多様な切り口で一人ひとりの生徒を見て、情報をストックしていく。そして、教員間で共有する。『あの子が部活でこんなこと言っていたよ』という情報が、ヒントになり得るのです。そのためには各教員の姿勢や情報を収集するアンテナの感度、そして教員間のコミュニケーションが大事になってきますが、その素地ができているのが本校の最大の強みだと思います」 進路指導に対する意識が高い教員が多いのが葛西南高校の特長だが、その背景には前田先生はじめ進路指導部の努力もある。かつて進路指導部内では進路別の分担制をとっていたが、全員で情報や業務を共有する方向へと転換。さらに、「情報があっても使われなければ意味がない」と考えた前田先生は、進路関係の資料やデータを教員が見やすく使いやすいよう整備し、進路指導部の取組についても積極的に発信していった。その結果、教員間の連携は以前に増して進み、生徒の進路をみんなで考えようという空気も醸成されていった。こうした成果が評価され、「令和元年度第13回キャリア教育優良学校」として文部科学大臣表彰を受賞した。 一方、課題もある。「今後、開拓しないといけないのが2年次の取組。3年生に向けて進路を決めていく時期の重要性をどう生徒たちに伝えるか、そのうえでいかに自分で考えさせるか、より詰めていく必要がある」と述べる。また、進路指導・キャリア教育と教科指導との連携強化、総合的な探究の時間の進化にも挑戦したいという。「探究については、外部と連携してやってみたいと思っています。生徒を知る私たち教員がプログラムを考えると、うちの生徒ができるのはこれくらいだろうと、無意識のうちに天井を作ってしまうんですよね。生徒の可能性を広げるためにも、新しい視点を入れながら挑戦したいと思っています」「キャリア教育優良学校」に選定!教科との連携、探究の進化が課題インターンシップ体験発表会の様子。生徒を班に分けて複数の教室で行うHR発表会の後に、代表者が1年生全員の前で行う全体発表会を実施する。グループごとに作成した発表用資料は、実習記録や礼状などと合わせて文集としてまとめている。生徒に問いかけることで、進路選択の理由を深掘りする452021 JUL. Vol.438

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