キャリアガイダンスVol.438
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482021 JUL. Vol.438 聖徳太子の「和を以て貴しとなす」という教えの下、他者との共生を大切にしながら主体的に生きる生徒の育成を目指す聖徳学園中学・高校。「自らの強みを伸ばし、世界とつながり、新しい価値を生み出す」を教育の柱とし、生徒の多様な面を活かして伸ばす教育活動を展開している。 「人と変わったところがあってもいいし、同じように行動する必要もない。どうせなら徹底的に『出る杭』になってほしい。生徒がそれぞれの個性を活かし、失敗を恐れず積極的に挑戦することを応援しています」(伊藤正徳校長) 挑戦する校風の下、教員も社会変化に合わせた教育の変革に積極的に取り組んでいる。近年では、校内にグローバル教育部を設置し、海外研修や国際理解教育の充実を図るとともに、総合的な探究の時間ではSDGsの観点から世界を学ぶプログラムや世界の課題に取り組む探究プログラムを立ち上げた。また、いち早く1人1台iPad体制を実現し、ICTを活用したアクティブラーニング型の授業も推進している。 さらに17年度には、同校のさまざまな取組を体系づける概念としてSTEAM教育を導入した。理系人材育成というイメージもあるSTEAM教育だが、同校では社会の課題解決に必要な力を身につけるための手法と捉え、すべての生徒を対象に実施。グローバル教育との両輪で教育活動を展開している(図1)。 「現代社会のさまざまな課題の解決には、STEAMの各領域の力が非常に有効です。適切な情報に基づいて自分の意見をもち、論理的かつ感性に訴える表現力をもって発信できるような、教科横断的な力を育成するSTEAM教育に、学校全体で取り組んでいきたいと考えました」(伊藤校長) 同校のSTEAM教育の核となっているのは情報科の授業だ。情報の知識・技能を身につけるだけでなく、目的をもってそれらを組み合わせてアウトプットする体験に重点を置き、小さなプロジェクトを数多く設定。生徒はSTEAMの各領域の知識・技能を使って取り組む。 例えば、早稲田大学小論文入試の過去問題を参考にした、ジャンケンに新しい一手「キュー」を加えてゲームを成立させるグループ活動だ。プログラミング的思考を使ってルールを考え、グループによっては勝率を均等にしようと数学の知識を応用する。考案したゲームを発表し合う際、ルール説明にはプレゼンテーションツールなどのテクノロジーも活用し、わかりやすく表現するにはアートの力が必要になる。生徒が考えるルールは多彩で、「キューはすべての手に負けるが一人だけなら勝つ」といった独自の発想も出てくる。 ほかにも、実際のコンビニエンスストアの売上や仕入れ額などのデータを表計算ソフトで処理して、どう利益を上げるかを課題解決力の育成にSTEAM教育を活用情報の知識・技能を組み合わせアウトプットを繰り返す取材・文/藤崎雅子STEAM教育 教科横断 総合的な探究の時間発展途上国の課題解決プロジェクト ICT活用聖徳学園中学・高校のSTEAM教育は、理系人材に限定したものではなく、すべての生徒が現代社会の多様な課題を解決する力を育むためのものです。その導入は、探究活動の深まりや生徒の成長に、どんな変化をもたらしているでしょうか。

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