キャリアガイダンスVol.438
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附属高校時代を含め長く本学に籍を置く身として、今の中央大学があるのは、先人の努力の結果と感じています。昔も今も学生はいい意味でまじめ。しっかり学び、自分の関心事に存分に取り組める校風は、向学心をもち続け、各界で活躍する卒業生の姿にも表れています。あまり知られていませんが、本学の気風として家族的情味もあげられます。学生と教職員の距離が近く、先輩から後輩へ脈々と学びが受け継がれていくのです。こうした伝統や組織のバリューは意図して生み出せるものではありません。長い年月をかけて醸成されるかけがえのないものです。 一方、手法や枠組みはその時々で意識して変える必要があります。私の専ようマネージしつつ、時に信念をもって組織を牽引する覚悟で臨みます。 最大の課題は2023年に予定している法学部の都心(茗荷谷キャンパス)移転です。志願者増だけではなく、同じ都心にあるロースクールをはじめ、理工学部や国際情報学部、ビジネススクールとの相乗効果をねらっています。 並行して、5000人規模の学生が減少する多摩キャンパスをどう発展させるか。大学としての一体感をもちつつ、郊外型と都心型双方の強みを活かさねばなりません。それにはまず学内の組織を開放すること。学部間の連携や研究科の再編により文理融合を加速させるなど、学問のオープン化によって新たな価値が生じることを期待します。 高校の先生方にとっては、一連の教育改革や入試の多様化で大変なご苦労をされていることと思います。ただ、お伝えしたいのは、学生を見ていて確かな変化を感じること。例えば、入学して間もない1年生でも、課題に取り組む姿勢やプレゼンの内容はかなりのレベルに達しています。英語の外部検定試験に挑戦する学生が増えているのも、高校までの取組の延長として自然の流れなのでしょう。こうした一つひとつが刺激になります。変化する学生に後れをとるわけにはいきません。【学長プロフィール】かわい・ひさし●1958年生まれ。中央大学商学部卒業。同大学院商学研究科博士前期課程修了。いわき短期大学助教授、高千穂商科大学助教授などを経て2000年4月中央大学商学部教授。商学部長、副学長、国際経営学部教授(現在に至る)、国際経営学部長などを経て、21年5月より現職。【大学プロフィール】1885年創立。法学部、経済学部、商学部、理工学部、文学部、総合政策学部、国際経営学部、国際情報学部の8学部ほか、大学院7研究科、専門職大学院2研究科を擁する。法学部の都心移転を機に、多摩をはじめとする各キャンパスが連携し新たなバリューを醸成する門は会計学。それも管理会計分野であるため、マネジメントにおいても組織論や情報理論を応用してきました。例えば商学部長として最初に取り組んだのは50以上あった委員会を半減させたこと。こうした機能整理は既存のやり方に慣れた人にはネガティブにも映るでしょう。けれど私を含め人間は経験に依存するもの。それが過ぎることのないよう気をつけねばなりません。 また、国際経営学部の学部長に就任した際は、英語による授業展開といった挑戦もさることながら、多様な経験や考えをもつ教職員をまとめることに腐心しました。こうした経験は、今春就任したばかりの学長職にも活きるはずです。皆の叡智を集結できる̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一 撮影/平山 諭中央大学学長河合 久532021 JUL. Vol.438

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