キャリアガイダンスVol.438
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くさんあって、私たちも把握するのが難しいぐらい」と出水一弘教頭(取材時/現県教育委員会事務局)。LHRと月曜7限の「チャレンジタイム」を使うフェスタのほかに、3年次3単位の課題研究や2単位の総合実践で多種多様な活動が行われている(下図)。 活動に通底するねらいは、まちの人と関わりながらキャリアを形成していくことに加え、〝シビック・プライド〞を育てること。「ただまちに愛着をもつのではなく、当事者意識を伴う責任感や、参画意欲を伴う市民性のことです。課題研究や総合実践では、連携先から課題を提示される班もありますが、生徒が問題意識をもち、課題を認識できるよう導いてほしいとお願いしています」と中村先生。 連携先は企業や市役所、市内の農業大学校や小中学校もあり、5〜10人程度の班単位で動く。校内で調査や準備をする班もあれば、毎回、連携先に出向く班、放課後や週末にも活動する班がある。動き方は班に任せられており、共通するのは活動の中間発表と最終発表を校内で行うこと。 中村先生は「クラスで発表する班代表はくじで決めます。発表内容も好きなことを発信して、と特に形を示しているわけではありません。でも、どの生徒に当たっても自分なりに課題を捉え、活動し、振り返って考えたことが伝わる質の高いもので感心します」。出水教頭は「本校の生徒の学びに対する意識は高い。勉強したことが何に役立つのか膨らませて考え、何かに挑戦する意欲が育っているように思います」と言う。 ダイナミックな地域連携を支える仕組みに、校務分掌に置かれた「未来デザイン部」と2017年からスタートしたコミュニティ・スクールによる学校運営がある。 未来デザイン部部長でもある中村先生は「変わった名前ですが、デザインとはただの発想ではなく問題解決である、という考え方です。問題認識をし、課題設定をし、課題解決をするのが問題解決。このプロセスは人生そのものであり、まちそのもの、その繰り返しがキャリアを形作ります」と解説してくれた。チャレンジタイムの企画運営などを行うほか、学校が行う地域活性化のための情報発信やコンテンツ・商品開発を司る「知財マネージメント戦略センター」も置く分掌だ。 「地域に学ばせてもらう」のではなく、学校や生徒も地域の一員であるとの姿勢はコミュニティ・スクールのあり方にも表れている。掲げるテーマは「ビジネスとものづくりを学ぶCOC(Center of Community)〜学問のまち「防府」における学び合い・教え合いの拠点に〜」。双方が教育と地域活性の視点をもち、影響を与えあう協働を目指しているのだ。 こうした考えに至ったのは、20年近く前から地元企業と商品開発をする中で「高校発の商品は一時の話題にはなるが、地域の活性化にどう役立つのか、生徒にどんな力をつけようとしているのか」と問われたことがきっかけだった。地域からの問いかけは高校が社会人基礎力育成を掲げ、地域視点に立つことにつながっていった。 自分のための学びから、みんなのための学びへ、自分の未来もまちの未来もデザインできる力を。教員たちが地域から学んだことは今、生徒の中に確かに息づいている。教育と地域活性化の視点をもつ学校運営(左から)中村英哲先生(未来デザイン部部長)、藤村慎一郎校長、出水一弘教頭 ※取材時(2021年3月)★1 課題研究★3 総合実践防府市高校生職員左:ふるさとパワーアップ班・幸せますカメラ女子部は“防府市のHAPPYなシーン”を高校生目線で発信する半年間、市役所職員のアドバイスを受けながら考えた、市の課題改善の施策を市長に直接提案する★2 総合実践上:着物班:市民活動団体「着物着せ隊」と一緒に高校生が企画・出演する着物ショーを映像化 下:鋳物班:防府の特産である鋳物を学び、商業科生徒が企画した商品を機械科生徒が製作 右:生徒が考案した「幸せます弁当」を地元スーパーマーケットで販売552021 JUL. Vol.438

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