キャリアガイダンスVol.438
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第1~3回哲学対話の専門家による「問い」の講座第4~5回コンサルタントと協働での「課題設定」や「調査」(企業からの依頼例:「女性層の取り込みアイデアを」)第6回依頼企業の現場体験→「問いの発見」(※)第7回依頼企業へのインタビュー第8回コンサルタントと協働でのプレゼン準備第9回依頼企業へのプレゼンテーション第1~3回第4回以降多様な社会人による講義と演習(国会事故調、元戦略コンサル、企業経営者etc.)■ 田園調布雙葉中学高校(東京・私立)システム思考による「ものの見方」を学ぶという状況を体感する仕掛けだった。そのうえで、立場の違いを越えて本音で話し合うにはどうすればいいかを考えた。 3年生の選択科目「プレゼンテーション実習」では、実在する企業や団体に対して、相手の課題を解決するための提案をすることに生徒たちが挑む。 協力を仰いだ企業などから「私たちの商品に女性層を取り込むアイデアが欲しい」などといった依頼を出してもらい、生徒たちが「それを実現するには何が課題となるか」から考え、ネットで調べたり、フィールドワークやインタビューもして分析 導入となる第1回から第3回までは、ソーシャルメディアNewsPicksの社員が講師を担当。同社は、国内外の経済ニュースを専門家や著名人のコメントつきでオンラインで届けている。そうした情報を扱うエキスパートから、「ものの見方」や「ニュースの見方」について、生徒自身も個人ワークやグループワークで頭を使いながら学ぶのだ(図1参照)。 そのうえで第4回以降は、毎回異なる社会人講師を招き、各講師ならではの世界にふれて、関連するテーマを生徒も自分で考え、表現することまで行う。 例えば、東日本大震災による原発事故を調査報告した「国会事故調」の方の授業。この回では、事故の背景に「自分で考えない組織依存のマインドセット(思い込み、常識)」があったという生々しい話を聴いたあとで、アニメや漫画が大ヒットした『進撃の巨人』のロールプレイを行った。「巨人襲来を防ぐ壁に囲まれた社会」で、統治する支配層、普通に暮らす市民、壁に疑問をもち異端者扱いされる人。三者三様の立場を演じてみたのだ。「自分がどう思うかではなく立場になりきって考えてみて」と促され、統治役の生徒からは「異論が出るのを阻止したい」、市民役の生徒からは「平穏でいたいので見て見ないふりをする」、異端者役の生徒からは「同志を増やす」などという発言が。 「ではその三者がいる社会は危機を乗り越えられそう?」と講師の問いかけ。「うーん…」という空気が教室に漂う。立場に縛られて社会全体が思考停止になるし、提案するアイデアをまとめ、相手へのプレゼンまで行う。数カ月にわたる活動であり、いわゆるプロジェクトベースドラーニング(PBL)だ。 さらにその活動には、哲学対話の専門家や、企業の戦略立案に携わるコンサルタントも寄り添い、問いや課題の設定の仕方や、調査の進め方、プレゼンのポイントなどについて、実践を通じて助言をしてくれる(図2参照)。 授業に関わる協力者の顔ぶれが豪華すぎて「予算のある私立だからできるのでは」と思われるかもしれない。が、実際にはそうではない。小林先生が自ら開拓した人にボランティアベースでお願いしたり、協力者側のPRにもなる条件を整える代わりにほぼ無償で力を借りたりして、お金の面でも無理のない形で、多数の社会人が参加する授業を実現させてきた。 「教員の役割は『ティーチャー』から『ファシリテーター』に変わってきたとよく言われますが、どちらの役回りも、教員の私がいつもやるより、さまざまな専門性をもつ外部の方にもやってもらったほうがより効果的だと思うのです。そのほうが緊張感が生まれ、新たな視点も芽生えますから。生徒がよりやる気になり、より学べる環境を目指したら、この形になったという感じです。その点では、これからの教員には、人をつないだり全体の環境を整えたりする『プロデューサー』の役割も求められるように思います」田園調布雙葉学園が運営する中高一貫校で、同学園の幼稚園や小学校とも隣接。幼稚園または小学校からの進学が原則で、中学校や高校からの入試は行っていない。キリスト教精神を基盤とした女子校であり、全人的な教育で「生きることの意義を祈り求める」「与えられた能力に従って自分を表現し、本当の自分に成長していこうとする」「地球社会の一員として、人間の尊厳にふさわしい社会を築くために働く」ような人格形成を目指している。普通科/1941年創立生徒数(2021年度・中学高校)692人(女子のみ)進路状況(2020年度)大学91人・留学1人・その他14人〒158-8511 東京都世田谷区玉川田園調布1-20-9 03-3721-1772 https://www.denenchofufutaba.ed.jp教師がプロデューサーとなり授業の可能性をさらに広げる図1 情報社会学の1学期の計画図2 プレゼンテーション実習の1学期の計画情報社会学では、最初の3回で「ものの見方」について学んだうえで、以降は毎回、多様な社会人をゲストに招き、生徒がその社会人と交流することで「社会(世の中)」を知ることを目指しているプレゼンテーション実習では、さまざまな社会人の協力の下、生徒が実在する物事について、課題の発見から解決策の提案まで行う(※)第6回の「問いの発見」は、当初は第4回に予定していたが、コロナ禍の緊急事態宣言により順番を入れ替えて実施。Zoomで講師と教室をつなぎ、ホワイトボードのWebアプリを使って生徒が「勉強のこと」や「安い牛肉と温暖化の関係」について意見を出し合い、その体験のなかで「思い込みをなくし、全体を見る」というシステム思考を学んだ。592021 JUL. Vol.438

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