キャリアガイダンスVol.439
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生徒自らの活動を大学と共に支援。学ぶ意欲と自信を引き出す・北稜高校(京都・府立)・京都光華女子大学(京都・私立)生徒の探究支援でつなぐ 北稜高校の地域活性化プロジェクト(PJ)に取り組む生徒へのアンケート結果に、興味深いデータがある。2年生では、「探究学習」や「他者との協同」に対してマイナスイメージが強く、コミュニケーションスキルなどの能力に対する自己評価も低めだ。しかし、3年生では一転、探究学習や協同のイメージが大きくプラスに転じ、能力に対する自己評価向上の可能性もうかがえる(図)。 なぜ学年進行でこのようにプラス方向に変化するのか。その理由を、実践の主導者である同校の松原久先生と、同校との高大連携に取り組み、アンケート結果を論文(地域連携教育研究・2021)にまとめた京都光華女子大学・高野拓樹教授に伺った。 北稜高校の総合的な探究の時間では、1学年は表現スキルの学習を中心に行い、コース別カリキュラムに分かれる2学年から、各コースの特徴を活かした探究プログラムに取り組む。そのなかで文理コース文系選択者(※)が行うのが、地域活性化PJだ。「主権者として本当に地域のためになる政策かどうかを見極める力を育てたい」と、松原先生が5年前に立ち上げた。地域の課題を自分たちで調べてみようという気負わない取組からスタートさせたが、毎年「先輩を超える活動をしよう」と生徒を後押しするうちに、地元企業・団体のほか、近隣の大学を幅広く巻き込んで進めていく活動へと発展してきた。 例えば、「地元の食ツーリズム推進」チームは、地域の伝統食の復元・活用について京都光華女子大学教員にアドバイスをもらい、大阪府立大学教員の指導を受けて雑煮の分布図を作成し、現代風にアレンジした伝統食を提案した。また、「地元無人駅のプロモーション」チームは、京都光華女子大学教員からプロジェクションマッピングについて学び、鉄道会社と連携して冬に投影イベントを開催する計画だ。そのほかにもさまざまな大学や企業などの指導・協力を得て探究を進めている。 同校の生徒は穏やかで落ち着きがあるが、「良くも悪くも目立つことなく無難に過ごし、行動面には物足りなさもある」という。そんな彼らにとって、学校外に出ての活動は簡単なことではない。教員の役割は、外に出たがらない生徒の背中を押すこと主権者としての力を地域や大学と共に育てたい取材・文/藤崎雅子明るいたやすい楽しみなやりがいのある楽しい楽なわくわく役に立つ面白い価値のある簡単な暗い面倒な憂鬱なやりがいのない辛い大変なだるい役に立たないつまらない価値のない難しい3年生2年生図:北稜高校の地域活性化PJに取り組む生徒へのアンケート結果探究学習に対するイメージ探究や協同へのイメージがマイナスからプラスに変化プラスイメージマイナスイメージ生徒の〝学び〞と〝成長〞をつなぐ、高大連携事例142021 OCT. Vol.439「高大連携型教育を用いた探究学習に関する実践的研究 -探究学習に対する生徒のイメージやスキルに影響を及ぼす要因-」(地域連携教育研究,2021)のデータを使用し、編集部にて図作成。上図のほか、「他者と協同して活動することに対する生徒のイメージ」についての質問でも、2年生平均値3.83点に対し3年生平均値3.08点と学年進行でプラスに変化(7件法で調査/数値が小さいほどプラスイメージ)。また、「考えや意見、タイプの異なる周囲の人とも協力しようと努力できるか」の質問については選択肢1(そう思う)の割合が2年生より3年生が多く、論文では、コミュニケーションスキルに対する自己評価が学年進行によって向上している可能性が指摘されている。単発の出張授業や指定校入試を超えて、生徒の「学びたい」という思いを共に育て、さらなる学びにつなげるような高大の〝学びの共創〞が増えています。ここでは5つの事例を取材し、高大連携に込めた高校と大学それぞれの狙いや手ごたえ、実現したい教育の姿についてお聞きしました。

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