キャリアガイダンスVol.439
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最初は「できない」「しんどい」「やる意味がわからない」と否定的な声が上がる。 そこで「教員が手足を動かさないと、生徒も動かさなくなる」と、活動の先鞭をつけるのは教員だ。松原先生は暇さえあればインターネットで論文をチェック。生徒の活動と関連がありそうなテーマを見つけたら研究者に連絡をとるなどし、日常的に相談ができる大学教員を増やしてきた。 そうして培ったネットワークや知見を基に、生徒たちのやりたいことや課題に応じて大学の研究やその教員などをアドバイスするが、実際のコミュニケーションは生徒に委ねる。自らアポイントを取って大学を訪問するよう促し、さらに壁にぶつかったり煮詰まったりしている生徒がいたら「もっと大学の先生に聞いてみては」と背中を押す。 尻込みしていた生徒たちだが、思い切って一歩踏み出すと変化し始める。ちにとって、PJをここまでやりきったという成功体験は大きな自信になる。だからこそ、マイナスイメージの強かった探究や協同にも前向きな気持ちが引き出されるのだと思います」 3学年ではそれぞれ新たな探究学習に取り組む。引き続き地域課題に関わる生徒も多い。また、大学との接点のなかで「この研究室で学びたい」と進路目標を見つける生徒もいる。 「大学での学びがイメージできるようになることが大きい。こんなふうに学ぶために今から勉強をがんばろう、という進学意欲や学習意欲になるのでしょう」 同校の地域活性化PJにおける高大連携は、学校側で作り込まず、生徒の主体性に重点を置いている点が特徴だ。教員が手をかけるのは、生徒が大「高校の教員とは違う立場からのアドバイスが生徒に響く」のか、次第に松原先生が知らない間にも大学を訪問するようになる。大学教員に相談するなかで別の教員を紹介してもらうなど、生徒自身で関係性を広げるといったケースも出てきた。「大学の先生方に知的好奇心を揺さぶられ、もっと知りたいという気持ちが行動力につながっているのではないか」(松原先生、以下同) 年度末に開催する地域活性化PJ発表会には、「ご指導による生徒の成長の姿をきちんと返していくことが大切」と、PJに協力した大学教員も招待する(2020年度は発表を動画配信)。その前日準備では教員が帰宅を促しても生徒は 「もう少し」と粘り、当日も直前まで調整を続ける。 「これまで思い切った挑戦や自ら困難を乗り越える経験が少なかった生徒た学に足を運ぶきっかけを作るまで。あとは、生徒自身が大学教員のアドバイスを受け、大学のリソースを使って自らの探究を深めていく。生徒にとってのハードルは高いが、「そこに成長のカギがある」というのが、高野教授の見立てだ。 同校では、他コースにおいても高大連携を取り入れた探究学習を推進している。今後、地域活性化PJの実践例も参考に、学校全体の探究学習の一層の充実に取り組んでいく方針だ。そのなかで松原先生が進めていきたいのは、一定時間を大学教員に預けるだけの単発の連携ではない、高校と大学がwin-winとなる〝攻めの連携〞だという。 「大学の先生方からは、高校生を知ることが大学の教育改善に役立つという話も聞かれます。お互いに身構えるのでなく、『一緒にこんな生徒を育てよう』と語り合い、それぞれの良さを活かす連携をしていけたらと思います」生徒が自ら広げる高大連携に成長のカギがある高校の先生方と共に“自分で考えて行動する人”を育てていきたい大学の視点 かつては、単発の出張講義という形で高校に行くことが大半でした。手っ取り早い“高大連携”ですが、「それは単なる“体験”ではないか。もっと高校生の“学び”に携われないものか」という思いがありました。 そんななか、2011年に大学コンソーシアム京都の活動の一環で、高校の探究学習にカリキュラム設計から参加し、連続的に講座をもつ機会を得ました。どのように高校生を育んでいくか、高校の先生方と共に何度も打ち合わせを行って進めていったのですが、そこで高校側の担当者として出会ったのが松原先生です。 その後、松原先生の北稜高校異動後も交流は続き、「探究で何か面白いことを始めたい。協力してもらえないか」と相談されたことから、北稜高校の地域活性化PJでの連携も始まりました。毎年、夏休み明けに、専門である環境問題を切り口にして、探究学習の取り組み方についての講座を開いています。また、随時、高校生からの相談に対応し、そのなかで他学科の教員を紹介することもあります。 こうした高校生との関わりのなかで私が重視しているのは、「知識を与える」のではなく「生徒に考えさせる」こと。自分で考えて行動する人に育ってほしいからです。目指すところは高校の先生方も同じだと思います。探究というフレームを活用して連携を深めれば、そんな共通の目標に共に取り組めるのではないでしょうか。 大学にとって、高校生の探究への深い関わりは、高校生の成長の様子を自らの教育に活かすことのできる貴重な機会です。カリキュラムレベルでの高大連携に向けて一歩踏み出そうという高校に、大学は広く門戸を開いています。152021 OCT. Vol.439「プロジェクションマッピングでこんなことをやりたい」と大学で相談する生徒たち。北稜高校地域活性化プロジェクト担当 教諭松原 久先生京都光華女子大学学長特別補佐 教授京都大学 特任教授高野拓樹先生※2021年度入学者より「英語人文」「環境理数」「総合探究」の3コースに改編京都光華女子大学 高野教授高校生の「学びたい」を高校と大学がともに育てるとき生徒の“学び”と“成長”をつなぐ、高大連携事例

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