て取り組むことになりました」 現在はオンラインも活用しながら、「大学見学・出前講義」「アカデミック・インターンシップ」「探究型学習の指導支援」「高大連携事業調整会議」「高校教員向け研修会」の5つのプロジェクトを軸に、県内ならびに近隣県の多くの高校と連携している。 探究型学習の指導支援では、2019年度は8校、2020年度は9校の高校と連携し、高校生や高校教員の活動をサポートしてきた。その一例が、宮城県富谷高校だ。ユネスコスクールに認定されている富谷高校では、新学習指導要領の実施に先立ち、数年前から課題探究に取り組んできた。そして、現3年生の学年からは、3年間を通した本格的な探究学習として「T-time」を組み直した。探究を牽引してきた塗田宣幸先生は、課題探究に取り組み始めた当時の課題を次のように説明する。「以前から大学の先生に出張講義に 宮城大学では、2019年に高大連携推進室を立ち上げ、効果的で持続的な高大連携事業を模索してきた。高大連携に力を入れるようになった背景について、笠原紳教授はこう語る。「かつて大学と高校は、大学入試において評価する・される立場であり、特定の学校同士がつながることはアンフェアだとされてきました。しかし、大学での学びの中身をよく知らなかったが故に入学後にミスマッチを起こしてしまったり、大学1年生の理解レベルにそぐわない講義や指導をする大学教員がいたり、入試の筆記試験の成績で資質・能力を判断することの限界が見えてきたりと、多くの課題がありました。高大連携や高大接続が議論されるなか、入試という断崖絶壁を挟んでいた高校と大学との間にスロープをかけよう、宮城県の公立大学として地域の高校との連携をより進めていこうと、学部や部署ごとに対応してきた高大連携事業の窓口を一本化し、大学を挙げ来ていただくことはありましたが、その場限りで、生徒の持続的な学びにつながっていないことが課題でした。また、いわゆる調べ学習止まりの生徒がほとんどで、私たち教員もどう指導していいのかわからないという状況でした」T-timeの構想に際しては、「持続的な地域づくり」という大テーマを設定。近隣にあり、かつ、テーマにまさに合致する地域創生学類をもつ宮城大学に相談し、協力を仰ぐことになった。「そこから歯車がうまく噛み合うようになっていった」と塗田先生は振り返る。「私たち高校の教員は、生徒に正しい方法や答えを教えることに注力してきました。課題探究でもそこから抜け出せずにいたのですが、大学の先生から『研究では問いやテーマを作ることこそが大事』と伺い、自らテーマを決めて仮説を立て、実験・調査して検証する…という研究のプロセスを指導していただくなかで、私たち自身の考え方が大きく変わっていきました」T-timeの流れはこうだ。1年次から2年次1学期にかけては、持続的な地域づくりに関係する知識をインプットしたり、まとめ発表をしたりして、探究の基礎を固める。2年次の夏休み明けに宮城大学の教員による基本講演があり、研究とは何か、いかにして進めるかを学ぶ。その後、生徒は数名のグループに分かれて探究テーマを決め、11月ごろに各グループが設定したテーマの検討会が行われる。さらに、2年次中入試という壁を超えて、高校と大学との間にスロープをかける研究者視点からの継続的な探究支援で、高校の指導が変わる取材・文/笹原風花大学教員が研究者の視点で生徒の探究に伴走。高校教員の探究指導力の向上にもつながる・富谷高校(宮城・県立)・宮城大学(宮城・公立)探究の指導支援でつなぐ図:T-timeの流れ(現3年生の例)162021 OCT. Vol.4391年次~2年次1学期探究の基礎固め2年次9月大学教員による基本講演10月グループごとにテーマ設定、研究計画書を作成11月テーマ、研究計画書への助言・指導グループごとに調査・研究をスタート12月調査・研究への助言・指導大学教員による地域のさまざまなテーマについての出張講義1月中間発表13月中間発表2最終発表会に向けた準備3年次5月最終発表会(収穫祭)不定期年度により「教員研修会」「生徒指導意見交換会」などを実施※赤字の箇所で宮城大学の教員が直接関わる
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