に2回の中間発表を経て、3年次の5月に「収穫祭」と称した最終発表会を行い、優秀チームを選考する。テーマの検討会、中間発表、最終発表会には、先に講義を行った宮城大学の教員が参加し、生徒にアドバイスやフィードバックを行う。塗田先生と共に探究を推進してきた舘内浩二先生は、こう話す。 「テーマの検討会では、各グループが設定したテーマと研究企画書を提出します。それに対して大学の先生が、目の付け所が面白いね、このテーマはもう研究し尽くされているから発展性がない また、T-timeは、進路指導やキャリア教育の一環としても大きな役割を果たしている。「探究で取り組んだテーマに関連した学部への進学を希望したり、探究で身につけたスキルを活かして総合型選抜に挑戦したりと、早くも生徒の進路選択に変化の兆しが見えている」と塗田先生。「偏差値で進路を決めるのではなく、自分が探究を通して取り組んできたことと進路とを結びつけて考える生徒が確実に増えてきている」と舘内先生。さらに、大学入試の捉え方にも変化があったと言う。 「これまで生徒にとっても教員にとっても大学入試は越えるべき壁で、選抜する側とされる側という認識でしたが、大学の先生を身近に感じることで見方が変わったように思います。大学はこういう生徒に入学してほしいんだなという像が結べるようにもなりました。大学の先生に指摘していただいたことは、学年担任の先生や進路指導の担当とも共有するようにしています。さらなる高大連携により、進路指導や入試への向き合い方も変わっていく可能性を感じています」(舘内先生) 宮城大学の高大連携事業では、高校生の学びを支えることに加え、高校の教員に向けて探究の指導法をレクチャーしたり、高校の教員と大学の教員が互いに学び合ったりする場を積極的によ、これを実現するにはどうしたらいいかな…など、研究者としての厳しい目で助言や問いかけをしてくれます。これが私たち教員にとっても新鮮で、勉強になることばかり。テーマ設定によって探究がどこまで深まるかが左右されるんだと、実感しました。また、大学の先生から生徒の評価を聞くことで、生徒を多角的な視点で見られるようにもなりました。大学の先生の言葉は生徒にとっても説得力があるようで、ダメ出しをされたら積極的に方向転換をしますし、褒められるととても喜びます。そうした後押しで勢いがついて、大学の先生に直接質問をしたり、思わぬところまでテーマを掘り下げたりと、驚くような飛躍を見せるグループ、生徒も少なくありません」 最終発表会には市長をはじめ外部の関係者も多数出席する。「いろんな方にコメントを頂き、自分たちの取組が社会とつながっているんだ、学術的に意味があるものなんだと生徒が実感できたことは、非常に意義深いこと」と塗田先生は言う。また、最終発表会を機に、宮城大学、富谷市、商工会議所などによる共同プロジェクトに、富谷高校の生徒がオブザーバーとして招集されることが決まった。「我々としても想定外の発展で、嬉しい悲鳴を上げている」と、塗田先生、舘内先生は顔を綻ばせる。設けているのも特徴だ。塗田先生・舘内先生は、大学の先生から多くのことを学んだと語っていたが、大学側にとっても得るものは大きいと笠原教授は言う。 「高大連携事業を通して高校生や高校の先生との交流が生まれることで、多くの気づきがあります。大学は研究機関であると同時に、学生を育てる教育機関でもある。それを改めて実感する機会になっていると感じます。また、高校生のフレキシブルな思考や豊かな発想は、専門に特化しすぎた私たちに、時に大いなる刺激を与えてくれます。そういった点でも、高校・大学双方にメリットのある取組だと言えるでしょう」 高大接続においては入試も含めた検討が課題だが、宮城大学では入試をどう捉えているのだろうか。アドミッションセンター副センター長でもある笠原教授は、最後に次のように述べた。 「さらなる少子化により、多くの大学では入試における競争はなくなり、1点刻みのペーパーテストで合否をつけることの意味は薄まっていくでしょう。また、入試のボーダーラインが下がることで入学者の多様化が進むことも予想されます。そこで大事になるのが、マッチング型の入試と初年次教育です。今後は、入学後教育を含めた接続型の入試を検討したいと考えています。そのためにも、高校と大学がさらに密に連携して相互理解を深め、高校から大学へ、さらにその先へと、生徒の学びにスロープをかけることが不可欠になるのです」進路選択、進路指導や入試への向き合い方も変化高大の教員の学び合いと相互理解が、学びの接続を支える172021 OCT. Vol.439宮城大学高大連携推進室室長・アドミッションセンター副センター長笠原 紳教授富谷高校主幹教諭舘たてうち内浩二先生富谷高校ユネスコ企画部長塗ぬりた田宣幸先生宮城大学の教員による基本講演時には、富谷高校卒の宮城大生も参加(昨年度は感染症対策のためビデオメッセージでの参加)。高校生に向けて、探究学習が大学の学びにどのようにつながっているかなど体験談を語る。高校生の「学びたい」を高校と大学がともに育てるとき生徒の“学び”と“成長”をつなぐ、高大連携事例
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