キャリアガイダンスVol.439
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募集定員の2割強を本入試に割り当てた。「へるん」とは、松江にゆかりのある小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の愛称だ。へるん入試の肝となるのが、「学びのタネ(=高校生がもつ好奇心と探究心)」。高校での探究学習などの〝成果〞を評価する入試とは、一線を画す。「へるん入試では、これまでに何をやったかという実績ではなく、これから学び続けるための原動力となる好奇心・探究心を育成・評価します。〝タネ〞なので、まだ目に見えなくてもいいんだよ。何かに感動した、違和感をもった、疑問を感じた。そこからこんなことを考え、大学でこんなことを学んでみたいと思った…そういったモヤモヤしたものを言語化して、私たちに聞かせてほしい。高校生にはそう伝えています」(泉教授) 育成型をうたうへるん入試では、「出願前教育・入学前教育・入学後教育」の3つのステップで、入試を通して一連の教育サポートを行う(図)。「出願前教育」としては、6月〜9月に面談会 地域との関係を重視し、地域に開かれた教育・研究を行ってきた島根大学では、2016年度より全学部で「地域貢献人材育成入試」を実施してきた。本選抜は入学後の「COC※1人材育成コース」での学びとセットになっており、高大接続教育の先駆けとなっていた。一方、課題もあったと、高校教員を経て現職に就いた泉雄二郎教授ならびに美濃地裕子准教授は言う。「従来の入試でも主体性を評価しようとしたものの、学力試験重視は免れなかった」(美濃地准教授)。「高校生のもつ資質・能力が、学力の3要素のうち狭い評価軸でしか評価されていないのではないか、大学の学びに必要な知的好奇心・探究心や主体性といった要素が見過ごされているのではないかという懸念があった」(泉教授) こうした課題感のもと、「育成型」というコンセプトを打ち出した入試を新たに設計。2021年度入試より総合型選抜「へるん入試」として実施し、初年度は全を実施。特設サイト「へるんスクエア」や冊子「高校の教科・科目から見る島根大学の研究ラインナップ」などで入試情報や大学情報も提供している。面談は地域貢献人材育成入試の頃から実施していたもので、昨年度・今年度はオンラインで実施。出願に必須ではないが、参加者の多くが面談を通して大学・学部や入試への理解、そして自分が何を学びたいのかを深めていくという。「教職員と高校生とが対話を重ねるなかで、その生徒が大学で学びたい・やりたいことと大学・学部のアドミッションポリシーや学科・コースの学びの内容が合致しているかを探り、へるん入試の意図についても丁寧に説明していきます。場合によっては、あなたがやりたいことをやるには他の大学の方がいいね、と他を勧めることも。何度も面談を受ける高校生もいて、自分のやりたいことを見つめ直すいい機会になったという声がよく聞かれます」(美濃地准教授)10月の出願時には、「調査書」「クローズアップシート」「志望理由書」の3点を提出する。クローズアップシートには、高校段階の活動のなかで最も力を入れて取り組んだもの一つについて、その経験から気づいたこと、学んだこと、考えたことを軸に記述。「これは振り返りのステージ。これまでの自分を振り返り、言葉にしてみることを通して、大学という次のステップへとつなげる」と泉教授は説明する。また、志望理由書には、自分の「学びのタネ」に加えて、「なぜ大学で学学び続けるための資質・能力を引き出し評価する育成型入試入試に向かうプロセスを通し、学びへの意欲と意志を醸成取材・文/笹原風花図:育成型「へるん入試」の流れ専門教育出願調査書、クローズアップシート、志望理由書の作成・提出※へるん特定型では追加書類を課す場合あり。試験書類審査、読解・表現力試験、理数基礎テスト(総合理工学部のみ)、面接※へるん特定型では付加評価項目あり。入試を通して生徒の好奇心・探究心を引き出し、大学での学びにつなげる・島根大学(島根・国立)育成型入試でつなぐ出願前教育WEB面談、特設サイトや高校生向け冊子での情報発信入学前教育(ぷれ大学)入学前セミナー、英語eラーニング、学科・専攻別課題初年次教育フレッシュゼミナール、スタートアップ・イングリッシュ、へるんスプラウトルーム202021 OCT. Vol.439※1 COCとは、文部科学省による大学を対象にした「地(知)の拠点整備事業」のこと。地域社会との連携強化による地域の課題解決や、地域振興策の立案・実施を視野に入れた取組を支援する。島根大学は2013年度のCOCならびに2015年度の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されている。

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