キャリアガイダンスVol.439
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びたいのか、何を学びたいのか」という意義や目的、「何が生まれる予感がするか、どんな未来に貢献したいか」という期待感やビジョンを記述する。「志望理由書は、自分の学びを応援してもらうためのアピールの場」と泉教授。11月に行われる試験では、志望理由書を基に面接を実施する。また、全学部共通の「読解・表現力試験」なども行われ、へるん特定型※2には付加評価項目が加わる。 こうして、出願前の面談や出願書類の作成などを通して、生徒は自分は何がやりたいのかを内省し、深めていく。入試に向かうプロセス自体が、大学での学びの準備になっているのだ。 へるん入試で入学が決まった高校生には、「入学前教育(ぷれ大学)」を実施。LMS※3を活用した学部・学科ごとのム」で語学力に磨きをかけたりと、入試枠により特色ある学びを展開している。今年度後期からは新たに、学生同士の学び合いのためのオンラインプラットフォーム「へるんスプラウトルーム」を立ち上げる予定だ。 このようにして、出願前教育から連なる入試を通して育てた学びのタネや意欲を継続的に伸ばしていけるよう、入学前教育、入学後・初年次教育、そして専門教育までを一貫して設計している。 学生の追跡調査によると、へるん入試で入学した学生はそうでない学生に比べて、「入学後の満足度や学びへのモチベーションが概して高い」と美濃地准教授。「大学・学部の教育内容をよく理解し、そこに魅力を感じて入学しているからだろう」と分析する。専門課題、英語入学前教育、入学前セミナーからなり、入学前セミナーは学生団体と協働で開催する。 「昨年はオンラインでの開催となりましたが、学生が主体的に企画を立てて当日はファシリテーターも務め、へるん入試合格者同士がつながる機会をつくってくれました。入学前に縦横のネットワークができ、大学がどういうところか、大学の学びはどんな感じなのかということを先輩から聞けるのは、コロナ禍で課題となっている学生の心理的安全性を高める意味でもとても大切だと感じています」(泉教授) さらに、「入学後教育」では、学びのタネを芽吹かせるための「フレッシュゼミナール」などを実施。へるん特定型の「地域志向入試」で入学した学生は「地域人材育成コース」で学部横断的に学んだり、「グローバル英語入試」で入学した学生は「英語高度化プログラ 「また、高校のキャリア教育や進路指導を支援するという意味でも、高大接続はとても重要だと考えています。私自身の反省も踏まえ、高校の現場では、偏差値や学力で進路選択をするという指導からまだまだ脱却できていません。大学で何を学びたいのか、そのためにはどの大学がいいのかという軸で選択ができるよう、高校の先生方と一緒に高大接続・連携に取り組みたいと考えています」(美濃地准教授) 高校の教員に向けて、調査書の作成ポイントの指南もしている泉教授は、最後にこうメッセージを送った。 「生徒を主語にした学校づくりのためには、教員が生徒の応援団になって伴走することが大事です。動機もないのに大学に進学しても、無為に時間を過ごすことになりかねません。ぜひ一緒に、生徒の好奇心・探究心を掘り起こし、学び続ける人を育てていきましょう」細やかな入学前・入学後教育で大学の学びや生活に接続するへるん入試合格者は、入学後の満足度や学びへの意欲が高い体験的な学びと出願・受験との往復を通して、何を学びたいのか深めていくことができたへるん入試 入学者の声 島根大学に進学し、将来は地方公務員になって地域に貢献したいと考えていました。地域活性化に興味はあったものの、地域活動などに参加した経験はゼロ。自分には特別なものがないことに劣等感を抱いていて、「変わりたい」という願望がありました。また、このまま勉強だけして大学に行っていいんだろうかという悶々とした思いも抱えていました。「これまで何をしたか」ではなく「これから何をしたいか」を評価してくれるへるん入試を受けることで、殻を破れるんじゃないか。そんな期待感があり、高3の夏前に、へるん入試の「へるん特定型 地域志向入試」を受験することを決めました。 そこから、思いきって活動を開始。地域の人が集まる益田市のサードプレイスに顔を出し、地元の人にインタビューをしたり、イベントを企画したりと、活動を広げていきました。実際に地域に出て人と関わるなかで気づいたこと、感じたことがたくさんあり、益田市の魅力も課題も見えてきました。 出願の際は、地域活動を通して感じた「地域活動をする人を支える施策を作りたい」という思いを「学びのタネ」にし、大学では地域を発展させるために必要な政策やその基盤となる法律や経済について学びたいと訴えました。地域活動はワクワクの連続で、実践的な学びの楽しさを体感する日々でしたが、出願書類作成のために自分の感じたことや考えを言語化するプロセスはまさに生みの苦しみでした。逃げ出したくなることもありましたが、体験的な学びと入試のためのアウトプットの往復を通して、自分はこれから何を学びどうなりたいのかを深めていくことができました。 合格後は、入学前の課題やセミナーなどを経て、スムーズに大学の学びに入っていけたと感じます。へるん入試への出願・受験を通して少しずつ大きくなった自分の学びのタネは、今では大学での学びの軸となり、常に学びのタネに関連づけながら物事を考えたり情報をキャッチしたりするようになっています。学びたいという気持ちを原動力に自分から動けるようになったのは、へるん入試を受けたからこそ。入試を通して自分を開拓することができました。212021 OCT. Vol.439※2 へるん入試には「へるん一般型」と「へるん特定型」があり、後者では学習歴や学びたいこと、得意なことに応じて、「地域志向入試」「専門高校入試」「グローバル英語入試」「芸術・スポーツ・技能入試」の4つを設けている。※3 LMS=Learning Management System(学習管理システム)島根大学法文学部法経学科1年(島根県立益田高校出身)大石怜奈さん島根大学教育・学生支援本部大学教育センター泉 雄二郎教授同美濃地裕子准教授高校生の「学びたい」を高校と大学がともに育てるとき生徒の“学び”と“成長”をつなぐ、高大連携事例

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