―最後に、これからの高大連携で大事にしたいことをお話しください。中村 地方の小規模校を代表するなら、学びをアカデミックなものにつなぐだけではなく、人と人とをつなぐことが大切だと思います。大学生や大学の先生に限らず、身の回りの人とも幅広く交流しながら、地域の持続可能な新しい形を考えられたらいいなと。ICTによって地方と都市部をつなぐことも容易になってきたので、多様な人と一体となって課題解決していくような高大連携を模索していきたいです。中尾 大学の人間としては、一部の教員ではなく、数多くの教職員が、もっと高校の先生や高校生と接する機会をもつべきだと思いました。それによって、気づかなかったものが見えてくるようになる。まさに本日の座談会のように、互いの本音を話してみることが、高大連携の一歩だと思いました。高原 探究を柱とする新学習指導要領によって高校が変わっていったときに、では大学はどう変わるのか。高校生に、「なんだよ」とがっかりされるのではなく、 「やはり大学の学びは面白い」と思ってもらえるよう、大学の価値について考え続けていきたいです。延沢 改めて、単につながればいいのではなく、何のために、どのようにつながるかが大切だと思いました。今日の座談会のテーマに「育てて、つなぐ」とありますが、それだと教師が主語になりかねないんですね。生徒が主語になることなしに、高大接続はありえないのではないでしょうか。 あと、やはり大学は大学でいてほしいとも思うんです。大学でしかできないこと、高校でしかできないことがあるはずで、そこを曖昧にしたままだと、乗り越えるべき「ステップ」が、「スロープ」になってしまい、成長を阻害する可能性もあるのでは。今後は、高大接続の連続性のみならず、非連続な設計にも目を向けて、互いがなすべきことの問い直しが大切だと思いました。貴重な機会をありがとうございました。は大学のリソースを使い、ここは自分自身でやり遂げる」といった組み合わせを、周囲の助言を受けつつ生徒さん自身が考えなければいけないと思います。中村 探究の質を本気で高めようと思ったら個別最適化を進めていくしかなく、それこそ外部の力も必要になります。ただ、一般の高校でできることは、課題を見つけ、それに対してどうしたいかを考え、自走できるよう準備するところまでかなと。でも、それができるってすごいことですよ。延沢 私も、自分から手を伸ばせるようになることが大切だと思っています。それさえできれば、受験も、その後の学びも自分の力で乗り越えて行ける気がします。高校と大学の違いは何かといえば、「教えてもらうマインド」から「自分で学ぶマインド」に変わることっていわれていますよね。今は、高校でも探究やアクティブ・ラーニングなどを通じて、そういうマインドに切り替えやすいのでは?中尾 私などはつい研究の中味を問いますが、もっとゴール地点を低くして、学びに向かう態度に注目すればいいんですね。「大学は自分で学ぶ場所。そのために高校までに何を身につけておけばいいか」といったマインドを理解してもらうだけでも高大連携の意義はあるのかもしれません。が行われることが増えましたが、全体のレベルが落ちた印象があるんです。以前は、SSHの課題研究や、科学部や生物部の生徒さんを中心にワクワクする発表が多かったんですが…。全員で探究しようとか、入試でそれを評価しようという流れのなかで、逆に尖がった高校生を埋没させることにはならないでしょうか?延沢 人って多様なんだから、やり方は違っていいはずなのに、教育の世界って「みんなでやろう」となりがち。良し悪しはともかく、みんなでやれば当然、平均値は下がりますよね。高原 本気で取り組みたいテーマなのかどうかも大きいでしょう。エンジンがかからないと探究も「やらされ感」満載になりますから。ただ、高校のカリキュラム内で大学生顔負けの研究をしようと思うと限界があるため、「この辺までは正課の時間でやって、その先単につながればいいのではなく、何のために、どのようにつながるか(延沢先生)育てて、つなぐ。その先の未来図4: 延沢先生の実践①学びのきっかけや憧れづくり(キャンパスツアー・出前講座等)②生徒の研究テーマと研究者をマッチングした研究室訪問や課題研究③授業コラボ(例えば、魯迅の単元で文化人類学者を招く等。知識の有無が「読み」を変える経験をさせるねらい)④非認知能力や高校版IRなどの共同研究⑤入試改革や高大接続をテーマにした研究会の企画運営(「全国女性進路指導研究会」等5つの研究会運営に携わり、全国の教育関係者や大学教員とつながる)。高大連携に関する5つの個人的取組282021 OCT. Vol.439
元のページ ../index.html#28