年次生はコロナ禍の影響でインターンシップに行けなかったのですが、就職担当の東とうかいりん海林 啓ひらく教諭作成のオリジナルの自己分析シートなどを使って生徒の自己理解を促す指導を手厚くしてくれたんです。それがこうした結果につながったのではないかと思います」 段階を追って少しずつ自己理解を深め、自分がやりたいこと、進みたい道に向かって歩を進める生徒たち。「3年間を通した成長の基盤は、学校生活全体にある」と、大沼先生は言う。 「人間関係に悩んだけど解決できた、部活での挫折を乗り越えた、努力して成績が上がった、授業で先生に褒められた…そうした経験値が生徒の自信になり、成長につながるのだろうと思います。進路関係の情報や体験は、いわばそうした日常への〝スパイス〞。何かに気づいたり、ちょっと違った見方ができたり、そんなきっかけになるものだと思います。進路課として何ができるのか、生徒にどんな刺激が与えられるのか、これからも考え続けていきたいです」験対策、SPI対策など、コースの特性に応じたより実戦に即したものになる。1・2年次生のBeLノートは書き込むスペースが多いワークシート型中心だったのに比べ、3年次生用のBeLノートは資料集的な意味合いが強い。進学や就職に関する最新の情報が掲載されており、毎年、更新されている。 また、コースごとに企業見学会やキャリアアップセミナー、夏期講習なども多数実施している。今年の夏に実施した外部講師による面接講座の終了後、大沼先生は講師から「生徒たちは予想以上に面接がうまかった。がんばればもっと伸びるよ」と激励されたという。 「うれしい驚きでした。生徒が自分をしっかりと分析・理解できていることが大きかったのではないかと思います。今年の3感想文としてお世話になった経営者の方々に送付している。 「2年次後半には5コースに分かれますが、1コースに一人の教員を充てられなくなり、教員が複数のコースを掛けもちしているのが現状です。教員の人数が減ったことで生徒に不利益を与えてはいけません。進路指導の質は絶対に下げられない、でも、先生方の負担もこれ以上大きくはできない。やり方を工夫するだけでなく、やるべきこととやらなくてもいいことの精査も必要だろうと感じています」 3年次の「BeLの時間」は、2年次後半から引き続きコースごとの学びで、志望理由書の書き方、小論文対策、面接試企業見学会では、地元の事業所の協力を得て、さまざまな職場を訪れる。自己理解を深めることが次のステージにつながる 「進路選択にあたり、もっとも重要なのは自分を知ること」と強調する大沼先生。自己分析・理解ができている生徒は、「志望動機や根拠を、自分の言葉で語れるようになっている」と言う。一方、成果は同時に課題でもあり、まだ自分を掘り下げきれていない生徒もいる。「今後の課題は、1年次の指導をこれまで以上に丁寧にしていくこと。教員が手をかけなくても能動的に動ける生徒ばかりではないし、むしろなかなか最初の一歩が踏み出せない生徒が多い学校です。できるだけ生徒と顔を合わせて、時間や手間をかけて、信頼関係を築くなかで指導をする必要があると感じています」 そこで再び課題になるのが、教員の人手不足だ。大沼先生が進路課長に就いた今年度は、取組を精査するために、「まずは全部やってみる」という年に位置づけた。そのうえで、必要なものとそうでないものを見極め、仕組みを変えることで簡素化できる部分がないかなどを検証する予定だ。 「現状のままで続けることには無理があるので、例えば5つに分けているコースを一部統合する、全コース共通の部分を増やすなど、変革をしていく必要があります。これにより、進路の方向性を決めかねている生徒、気持ちが揺れている生徒にとっては、視野が広がる、柔軟に進路変更ができるというメリットもあるでしょう。進路指導やキャリア教育の年間計画も含めて、生徒のためになるかどうかという価値基準を最優先しつつ、新しいものに作り替えていきたいと思っています」 質の高い、かつ、持続可能な進路指導を求めて、北村山高校の挑戦は続く。生徒を最優先にしつつ、持続可能な進路指導を目指す432021 OCT. Vol.439
元のページ ../index.html#43