462021 OCT. Vol.439 県下屈指の進学校である長野高校は、長野の未来を担う人材を育むための独自プログラム「NGP(長野グローカルプロジェクト)」を2019年度に立ち上げた。 NGPの前身は、14年度にスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受けて導入した探究活動だ。全国的にまだ探究実践例が少ないなかでの挑戦だったが、「探究活動によって、自ら社会課題に取り組む意欲や自分の考えを発信する力など、従来は埋もれがちだった生徒の多様な力を伸ばせることがわかった」(松澤望美先生)など、多くの教員が生徒の成長に手応えを感じたという。 そこで、5年間のSGH指定期間終了後も探究活動を継続・発展させていこうと、新たに文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」に手を上げた。SGHで培ってきた国内の大学、近隣の高校や企業・団体、海外の大学や高校などとのネットワークを活かすとともに、行政や大学、企業と地域コンソーシアムを組織して定期的に助言をもらうなどの支援体制を整備。SGHの探究をベースに、地域とのつながりを強化したNGPプログラムへと進化を図った。その目標に掲げるのは「SDGs未来都市を創造するグローカルファシリテーターの育成」だ(図1)。プログラムの立ち上げ時から携わるNGP係主任・海沼孝典先生はこう話す。 「グローカルファシリテーターの象徴的な活動として3年間の大きな到達点に掲げているのは、地域課題に対して世界を見据えた政策提言を行うこと。これに向け、異なる立場の人の話に耳を傾けて多様な視点から物事を見る『レイヤー的思考』や、従来の枠組みを超えて現状突破できる『ブレイクスルー発想』、世界を視野に入れて学ぶための『国際的な対話力』を重視し、プログラムや指導方法の改善を図ってきました」 NGPには大きく課題研究と国際交流の2つの柱がある。 課題研究は、1・2学年の総合的な探究の時間で展開する、地域課題の解決策を探る活動だ(図2)。1学年では、まず基礎スキルとしてブレインストーミングやディスカッション、インタビューの方法を体験的に学習する。そして、さまざまな経験を積んだ外部講師との対話を通じて社会課題に対する関心を高めたうえで、グループで探究活動を行う。20年度の1年生は「理想的な工場開発と観光の両立」「地域医療の現状と課題」「災害と対策」など多様な地域課題をテーマに取り組んだ。 NGPではローカルとグローバルの両方の視点をもって地域課題に取り組むことを目指しているが、「海外で成功している解決策を、そのまま長野に当てはめてもうまくいくとは限らない。長野の特徴をしっかり調べて理解したうえで考えることが大切」(海沼先生)と、1学年ではまずローカル視点に重点を置く。地域の課題の現レイヤー的思考・ブレイクスルー発想・国際的な対話力を重視生徒主体の課題研究を通じて自ら学ぶ楽しさを伝える取材・文/藤崎雅子グローカルファシリテーター レイヤー的思考 ブレイクスルー発想国際的な対話力 探究 国際交流 地域との協働 総合的な探究の時間8年前から改善を重ねてきた探究活動をベースに、探究と国際交流を両輪として、地域を担う人材育成に取り組む長野高校。生徒一人ひとりのグローカル視点やファシリテーターとしての多様な力の育成を大切にしています。
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