キャリアガイダンスVol.439
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■議題:What can Nagano learn from Covid-19 to make our region more sustainable and better prepared for the next pandemic?(持続可能かつ次のパンデミックに備えた街づくり)■プログラム:2021日5月22日(土)13:00~16:00第1部 Opening(問題提議)第2部 Online Discussion(4分科会にて討論)第3部 Closing(提言発表と講評) ■参加者:長野高校生、日本・アメリカ・インド・インドネシア・ウズベキスタン・オーストラリア・台湾・中国・デンマーク・ベトナム出身の高校生、大学生、社会人492021 OCT. Vol.439も多様な参加者たちが主に英語で議論し、提言をまとめてインターネットで世界に発信するというものだ。会議の企画・準備から当日のファシリテーションまで、すべて生徒主体で取り組む。 「この国際会議は、事前に調べたことを一方的に発表するのではなく、多様な価値観をぶつけ合って議論する部分に軸足を置いています。会議の場で出てきた多様な意見も取り入れて、自分たちの提言としてどうまとめていくかは非常に難しいところですが、生徒たちは果敢に挑んでいます」(松澤先生) 21年度は「持続可能かつ次のパンデミックに備えた強い街づくり」を議題に、10カ国の高校生や大学生、社会人の計34人が参加してオンラインで開催(図4)。ファシリテーターを務める科目選択者以外にも、同級生や下級生が運営サポートに当たった。4分科会に分かれて行った議論では、それぞれファシリテーター役の生徒が工夫して議論しやすい雰囲気づくりを行い、活発に意見を出し合った。 ファシリテーターの生徒は英語でのコミュニケーションやオンラインでの発言の促進に苦戦しながらも、終了後は「自分とは違う視点からの意見が新鮮だった」「日本ではあまり出ない発想の意見も聞けた」「一人ひとりが活発に意見を出してテーマを深く掘り下げることができた」など達成感を語った。 文科省の事業は本年度で終了するが、NGPの取組は今後も発展させていく方針だ。その背景には、3年間で大きく成長する生徒の姿がある。 「最初はやらされ感から入る生徒や、自分の考えを伝えるのが得意ではない生徒もいます。しかし学年が上がるにつれて自ら取組を深めていく生徒が増え、教員の手出しや口出しはほとんど不要になっていく。NGPをはじめとする高校生活のさまざまな経験のなかで、自分はどう社会と関わっていきたいか、それにはどんな力が必要なのかを考え、自分たちの地域のために活動していこうとする意欲が引き出されているのではないでしょうか」(海沼先生) 3年間のNGPで目指す活動は、地域課題に対する政策提言だが、近年、生徒自ら〝提言〞の枠組みを超えて行動を起こすケースも出てきた。例えば、昨年度の課題研究から食品ロスの問題に取り組んでいる3年生2人は、自分たちにできることから始めようと、家庭で不要になった食品を回収して食料困窮者に届けるフードドライブの活動を行っている。全校生徒に協力を呼び掛けたところ、連日たくさんの食品が集まり、活動に共感して手伝いを買って出る後輩も現れた。このように一歩踏み出す活動を、今後さらに増やしていきたいという。 「理想を語るだけでなく、高校生にもできることはないかを考え、実際に地域に貢献する活動をやってみる。そして卒業後も試行錯誤を続けていく。そんな流れを後押ししていきたい」(海沼先生) 個人研究を取り入れたことで、生徒一人ひとりの興味関心を掘り下げる取組となったNGP活動。それを生徒それぞれのキャリアにつなげることに、今後重点を置いて取り組んでいくという。 「NGP活動のなかで、いかに将来にわたって追い求めるテーマを見つけ、進路にもつなげていくかが今後の課題。継続してプログラムの進化を図るとともに、進路指導との連携強化などにも学校全体で取り組んでいきたいと考えています」(海沼先生)〝提言〞にとどまらず自ら〝行動〞を起こす自分で学びを深めていく面白さを知った2年生の課題研究は、人の幸福をテーマに取り組みました。幸福度の高さで有名な北欧が好きだったことから、「じゃあ長野の高校生の幸福度を上げるにはどうしたらいいんだろう」と興味をもったのが始まりです。その国の教育制度や地域社会のつながりが生活満足度に影響があるのではないかと考え、国内外の同世代にアンケート調査を実施しました。これまでに知り合った人や、言語交換アプリを通して協力者を呼びかけ、海外の高校生を含む112人が協力してくれました。課題研究には1年生の頃から前向きでしたが、ここまで積極的に行動するようになるなんて予想外のこと。自分から学びを深めていく面白さを知ったからこそできたのだと思います。また、この個人研究に取り組むなかで、経済学の視点からの幸福に関する論文も読んで面白いと思ったのがきっかけで、大学では経済学の視点から人の幸福について研究していく予定です。(3年生・横山そよ花さん)Interview図4 「SDGs地方創生国際会議 グローカルアカデミア2021」の概要課題研究をきっかけとし、校内でフードドライブ活動を行う生徒たち。集まった食品はNPO法人を通じて生活困窮者の支援に役立ててもらうという。昨年度に引き続きオンラインで開催した国際会議。第2部の各分科会では、出身国や地域、年齢の異なる5~6人がそれぞれの立場から発言し、時には笑い声が上がるなど和気あいあいとした雰囲気で進められた。

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