キャリアガイダンスVol.439
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2022年から7つの探究科目が加わることで、探究学習に注目されている先生も多いかと思います。そこで、どの教科でも活用できる、「問い」を立てて掘り下げるという国語の授業実践をご紹介します。 生徒が問いを立てて考えていくときに使うのが、図2の「探究マップLight」だ。齋藤先生が同僚の先生と共に開発した。 1学期末の1年生の授業では、教科書の評論文「ものとことば」について、生徒が自分の考えを小論文にする課題に取り組んだ。今までの授業で学んだことを踏まえ、おのおのが問いを立てていく。 「なぜことばはたくさん存在するのか?」 「ことばはどんな役目を担っているか?」 中央大学附属中学校・高校の齋藤 祐先生は、いずれ大学に進む生徒たちに対して「大学で急に書けと言われても、うろたえないで済む」だけの基礎を築こうと、レポート・論文指導に取り組んできた。 しかし当初、生徒が書き上げてくる文章は、調べた内容を表面的にまとめたものが大半だったという。期待していたのは、生徒が自分で考えを深めた結果のものであったはず。資料を読み、文章にしていくなかで「生徒の思考が深まる」ようにするには、どうすればいいのだろう。齋藤先生はこのテーマを追い続けた。 そうして形づくられたのが、図1のような授業だ。生徒たちは教科書に載る評論文や小説を読んだうえで、毎回「自分が考えたこと」を振り返りシートに記入。単元の後半では、読み込んだ教科書の題材を基に、生徒が自らの力で問いを立て、答えを導き、小論文にまとめる。教科書にある著者の主張を抜き書きするのではなく、著者が投げかけたテーマについて、生徒自身が考えたことを言葉にするのだ。 「大学に進んでからも、社会に出てからも、『自分の頭でものを考えられる人』であってほしいのです。自分で問いを立て、考えながら読むことや書くことができるようになる、というのが目標ですね」調べたことを書くだけでなく、自分で考えたことも言葉にして生徒に対する想い生徒を見取って授業をデザイン中央大学附属中学校・高校(東京・私立)探究マップに付箋を貼りながら生徒が自分で問いを掘り下げる授業の実践取材・文/松井大助撮影/竹内弘真前半(4~6コマ)(1) 教科書に載る評論文や小説を読み、ワークシートを使って、各段落の要点を把握することなどに取り組む(2) 毎授業の最後に、振り返りシートに「今日の授業で重要だと思ったこと」と「今日の授業で考えたこと」を記入する(3) 2コマ目以降の授業の導入は、生徒同士のワークシートの読み合わせから後半(3~4コマ)(1) 探究マップLightを使い、読んだ現代文について「問い」を立て、仮の「答え」を想定し、その「根拠」まで考える(2) 出した「答え」から、「新たな問い」を生み出して掘り下げる(3) 探究マップLightに貼り重ねた付箋をもとに、小論文を作成図1 現代文の単元の基本の授業構成生徒の価値観を揺さぶるような授業がしてみたい大学卒業後、私立高校の講師を経て、2005年、中央大学杉並高校の専任教諭となる。その後、2018年度より、人事制度で中大附属中高に異動。中大杉並時代からレポート・論文指導に力を入れてきた。NHKのEテレ高校講座「国語表現」にも監修講師の一人として出演中。国語科齋藤 祐先生今号の先生562021 OCT. Vol.439

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