キャリアガイダンスVol.439
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■ 中央大学附属中学校・高校(東京・私立)調べたり…。続いて、集めた情報を基に、問いへの自分なりの答えとなる「仮説」を立てたり、HOWの問いであれば「解決策」を考えたりして、付箋に書く。 ここまでの流れで、自分で立てた問いについて答えまで出したことになるが、作業はまだ終わらない。ここからが探究マップLightの真骨頂だ。答えについて「なぜそういえるのか」を改めて考える。「ことばとは何か?」「WHY」「WHAT」の問いが多かったが、題材によっては「HOW(どうするか)」の問いを立てる生徒もいるという。 その自分の問いを付箋に書き、探究マップLightに貼る。次に「現状はどうなっているか」「なぜそうなのか」を調べて付箋に書き出す。教科書やワークシートを見返したり、国語辞典やインターネットで「考えた仮説や解決策が正しいなら、こういうことも言えるのではと予測し、さらに調べたり検証したりして、論証をより確かなものにしていきます。仮説演繹という手法から、このステップを踏むことで自分の考えをさらに深めていけます」 根拠を固めるなかで新たな発見があれば、答えを修正し、付箋を貼り替える。また、仮説や解決策を打ち立てたもののまだ気になる点や未解決な点があれば、「新たな問い」を立て作業の2周目に入る。「問いを立てて答えを出して終わりではありません。その作業を2周、3周と回すことで、問いを掘り下げ、自分の考えを深めていくんですよ。そのうえで、付箋で組み立てた構成を基に文章を書きます」 齋藤先生は探究マップLightを使って中学生の授業も進めてきた。高校生よりも時間をかけるが、流れは一緒で、問いを2周、3周と回すのも同じだ。「最初の問いはWHYでもHOWでもかまいません。どんな問いがふさわしいかは、生徒によって違うからです。いずれにせよ、問いと答えと根拠を自分で更新していくと、『なぜ?』から始めた生徒が『どうすればいいか?』まで考え出したり、『どうすればいいか?』を思案していた生徒が『なぜ?』という根本に立ち返ったりと、それぞれの考えが深まっていきます」 問いを掘り下げることを通して、「生徒の価値観を揺さぶることができたら」と齋藤先生は考えている。「現代の社会では、遠くの世界の見知らぬ情報までインターネットで手に入るようになりました。しかし、生徒の価値観を揺さぶるような何かというのは、本当はもっとずっと『手前』にあると思うのです。例えば『ことばとは何か?』という問いのように。すぐには答えが出ない物事について、生徒が自分で考えを深めていく授業をしたい、と思っています」中央大学の附属高校のひとつで、約9割の生徒が中央大学に進学する。中学校もあるが、高校からの入学も可能で毎年入試を行っている。2018年度よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校に。その取組の一環として、教科の枠を超えた課題研究に生徒が取り組む「教養総合」の授業も始まった。読解力と思考力を養うために、文系・理系を超えた多様なジャンルから選定された課題図書100冊を、卒業までの3年間で読むという活動も行っている。普通科/1909年創立生徒数(2021年度・高校)1161人(男子550人・女子611人)進路状況(2020年度)中央大学内部推薦341人・他大学39人・海外大学1人専修学校/各種学校2人・その他4人〒184-8575 東京都小金井市貫井北町3-22-1 042-381-5413・7179 https://chu-fu.ed.jp遠くの情報まで手に入る社会でもっと手前から見つめていく図2 問いを深める考具「探究マップLight」ワークシートや探究マップの作業は3~4人で机を付けて行う。話し合いをしやすくするためであり、お互いの作業を見えるようにして安心感や刺激をもたらすためでもある。論文の骨組みとなる構成を、探究マップLightに付箋を貼って考えていく。その作業では、多くの生徒が、これまでに自分で書いたワークシートや振り返りシートを見返していた。探究マップLightの裏表。ラミネート加工したシートを生徒全員に配布している。シートの左側は、問いを立てて情報を集める「課題抽出」のフェーズ。右側は、集めた情報を基に、仮説や解決策を考える「課題解決」のフェーズとなっている。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 発行メディアのご紹介>> キャリアガイダンス(Vol.439)572021 OCT. Vol.439

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