キャリアガイダンスVol.439
59/66

思い描いている授業のあり方目指す生徒像他の教育活動や社会とのつながり● 「答え」を欲して情報を集めるだけでなく、すぐには答えが出ないことを自分の頭で考える● 自ら問いを立て、読むことや書くことを通して掘り下げ、考えを深めていくことができる・ 他教科の授業でも、探究マップLightの活用可能性が広がっている・ 学校設定科目「教養総合基礎」でも、中学生3年生から問いの立て方を学ぶ・ 高校3年生になったら、自ら問いを立て1万字以上の卒業論文を作成する国語科の授業・ 教科書の現代文をみんなで読み込み、筆者の考えや登場人物の心境をつかもうとする・ 授業中に読んだことや聴いたことから、「自分が重要だと思ったこと」を意識的に考える・ 授業中に考えたことを振り返りシートに記入し、定期的に見返して、自分の考えを深める・ 小論文作成を通じて、「問いを立て、根拠のある答えや新たな問いを生み出す」ことに挑戦する読む(聴く)なかで思考する書く(話す)なかで思考する認識しているなかだけでの話ではないかと疑問に思った。新しいことばが生まれるというのは、私たちがようやくそれに気づいたということなのかもしれない」 「(同じものでも国によることばの違いで認識に差が出るが)両親から同じ価値観を教えられた兄弟はどうだろう。私と妹と弟は、仲はいいけど全く異なる。一番近いと感じる人にも、私のことばは私の思うようには伝わらないように思う」 「母が『ごみ』と思って捨てた折り鶴は、私にとっては8つ下のいとこからもらった大切な『プレゼント』でした。同じものでも、つけることばが違えば違ったものにな 現1年生の多くは、附属中学校のときから齋藤先生の授業を受けてきた生徒だ。今では探究マップLightにもなじんでいる。評論文「ものとことば」を扱った授業でも、振り返りシートを見ると、おのおのに思考を深めたことがうかがえた。 「森羅万象にはそれを表すことばがあると述べられていたが、それは私たちがるし、ことばをつけた人によって違ったものに見えるのだと思いました」 探究マップの活用は、国語の授業だけにとどまらない。 前任校では、大学のプレゼミ発表の席で、原型の「探究マップ」を使っている生徒がいたという。また、当時合わせて作成した『高校生のための卒業論文ガイド』を、大学でも使っているとしてSNSに載せる生徒もいた。 現在、校内での活用の幅も広がっている。今年度、カリキュラムを再編した附属中学校では、3年生全員が「教養総合基礎」という授業で、問いを手に入れる過程を探究マップLightで学ぶ。さらなる汎用性を高めるべく、英語版探究マップLightの作成も進めている。 齋藤先生にとって一番楽しい時間は、生徒たちの振り返りシートを読んでいるときだ。 「見たこともない発想に驚くというよりは、『あの生徒がこんなことを考えていたんだ!』という発見の面白さですね。『次はどんな問いかけにしたらさらに思考が深まるだろうか』と思案します。生徒一人ひとりが異なっているからこそ、同じテーマを授業で扱っても、どのように展開するかは毎回違います。だから飽きることがありません。この先も、1コマでも多く、生徒と一緒に授業を楽しんでいきたいと思います」生徒はこう変わる教科書の題材からも自分の問いを見つけて考える学校内の幅広い活動や卒業後の活動でも自ら探究■ 生徒INTERVIEW──齋藤先生の授業の特徴といえばなんでしょう?蔵元さん「思考力を養うというか、自分の考えを言葉にする授業です」栗原さん「『文章を読んで出題に答える』のではなく、『文章を読んで、問いを立て、根拠をつくり、答えを出して小論文にまとめる』授業なんです」──国語の授業で「成長できた」と感じていることはありますか?江口さん「以前より深く考えられるようになったように思います。一度結論を出して『これだ』となっても、さらにその先まで考えてみたり」栗原さん「部活動の生物部の研究でも、実験結果からわかったことを基に新たな問いを立てたりと、国語で学んだことを応用しています」蔵元さん「物語を読んでも、主人公はなぜそうしたかを考えるようになりました。3年生の卒業論文でも問いを立てるときに生かせると思います」──授業中、楽しそうでしたが、どこに楽しさを感じていますか?江口さん「自分で立てた問いを自分で考えると、段々、結論がクリアになっていくのが楽しいです」栗原さん「自分の思考を言葉にして、足りないことや不要なことを考えて推敲すると、同じことを言うのでも、よりすっきりとした深い文章になっていくのがわかるんです。その作業が全部楽しいです」問いを立て、言葉にして推敲することで自分の考えが深まっていくのが楽しい写真左より、1年生の蔵元康多さん、江口岬さん、栗原萌花さん592021 OCT. Vol.439

元のページ  ../index.html#59

このブックを見る