キャリアガイダンスVol.439_別冊
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3Vol.439 別冊特集いやるコミュニケーション力は必要不可欠です」(園田氏)  もちろん医療の世界でもその点は課題としてとらえるようになっている。2000年代には大学の医学部などでOSCE(オスキー)という客観的臨床能力試験の導入が進み、ペーパーではなく、実技で患者に接する態度などを測る仕組みが定着。そのほか、医学部、看護学部におけるコミュニケーション教育も年々充実している傾向がある。 チーム医療に関しては、園田氏は次のように語る。 「チーム医療のメリットのひとつは、看護師や理学療法士、薬剤師といったスタッフからの提案が医師に届きやすくなることです。医師がトップにいて偉そうにしていると、スタッフは萎縮して意見も言いにくくなってしまいますから。しかし、例えば、入院患者とより長い時間接するのは看護師です。刻々と変化する患者さんの様子は看護師が最も身近で把握していますから、その報告や提案は医療のジャッジにおいて非常に重要なんです」(園田氏) また、医師一人が治療に関するすべてを判断する仕組みは、医師が判断を誤った際に修正が利きにくい。医薬品に関しては薬剤師は医師以上の専門家であり、リハビリに関しては理学療法士のほうが医師より適切な提案ができる場合もある。それぞれのスタッフが専門家の立場から意見を言い、話し合って動くチーム医療であれば、患者に対してより適切な治療を行うことが可能になる。 「まだまだ医師の力が強い現場が多いですが、チーム医療の流れは確実に広がっていますから、5年後、10年後はさらに大きく変わっていく可能性も高いですね」(園田氏)■ BがAを上回る診療科■ 医師が不足する道県■ 医師が余る都府県 もうひとつのキーワードは「主体的に学び続ける力」だ。医療の世界でもITやAIの導入は急速に進んでおり、遠隔医療なども今後はさらに普及していく。 iPS細胞を使った再生医療やがんの治療法なども年々進化している。このように急激に進歩する医療技術、次々に生まれる新しい医薬品を患者の治療に活かしていくためには、医療従事者には仕事をしながら学び、スキルアップしていくことが不可欠だからだ。 「医師にとって必要な力は主にコミュニケーション力、知識、技術の3つと考えています(図4)。この3つがバランス良く身についていくと、かけがえのない存在になりえます。このうち知識に関しては、大学ではもちろん、医師になってからも学び続け、常に最新の知識を習得することが必須です。一部には医学部入学がゴールになってしまっていて、入学後、あるいは医師になってからの努力を怠ってしまう人もいます。それではいくら頭が良くても患者さんに貢献できる医師になることはできません」(園田氏) 看護師についても同様のことが言える。進化する医療現場で看護師として働き続けるには学び続ける力は重要だ。 また、医療の世界では、医師や看護師の過重労働を解消するため、働き方改革が進んでいる。この点も「主体的な」学びが求められる背景となっている。 「かつては医療の世界は過重労働が当たり前で、研修医や若手医師は長時間の苛酷な業務を経験しながら仕事を覚えていきました。しかし、今は働き方改革で研修医も9時に来て5時に2036年に医師不足が予想される地域図12036年に医師不足が予想される診療科図2出所/厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 第4次中間取りまとめ 資料」(2019年)に基づいて作成出所/厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 2018年度 第4回 資料 「診療科ごとの将来必要な医師数の見通しの明確化について」 2016年医師数(A)2036年必要医師数(B)内科11万2978人12万7167人小児科1万6587人1万6374人皮膚科8685人7270人精神科1万5691人1万4003人外科2万9085人3万3448人整形外科2万2029人2万4022人産婦人科1万2632人1万2165人眼科1万2724人1万1830人耳鼻咽喉科9175人7946人泌尿器科7426人8429人脳神経外科7713人1万235人放射線科6931人6918人麻酔科9496人9701人病理診断科1887人2097人臨床検査567人619人救急科3656人4164人形成外科3321人3303人リハビリテーション科2399人2439人

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