キャリアガイダンスVol.439_別冊
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んでおくことや自ら学ぶ姿勢を養っておくこと。それがあってこそシミュレーション教育が生きるのです。シミュレーションの段階では、ミスや見落としがあればそのつど修正し、振り返ることができます。常に動いている現場ではそれは難しいですから。シミュレーション教育でしっかり準備をしておけば現場で戸惑うことも少なくなり、臨地実習で大きく成長することができます」 また、医学科ではコロナ禍の状況を受けて、6年次の臨床実習に必須科目として「感染症実践コース」を導入。全診療科の医師がチューターとして参加し、学生は主体的に考え、議論をしながら場面に応じて感染症に対応できる力を養う。 このほか、救急・災害医学分野では学生も参加してVR教材を開発。救命救急の臨床実習で活用が始まっている。 続けて、医療人としての高い倫理観や人間性、コミュニケーション力の醸成のための取組を見ていこう。 軸のひとつが1~5年次に履修する医学科の「人間学」という統合講義だ。 「〈自己と他者、社会のなかでの医療、医療倫理〉の3つのテーマを柱とし、少人数のグループワークで議論を重ねる授業です。学生は議論や思索で得られた自分の考えをポートフォリオにまとめ、常に振り返ることができます。このような人間教育を5年間かけて、継続的に重ねていくことで、医療人に必要な人間性をしっかりと養っていきます」(林学長) もちろん看護学科においても倫理観や人間性の醸成は重要なテーマだ。 「看護師にとって大切なのは患者さんやクライエント(広く医療サービスの対象者)の気持ちや立場を理解すること。ですから、生命倫理や看護倫理、心理学、社会学といった人や社会を理解する科目を早い年次から学び、こうした科目と臨地実習を組み合わせて、“病気”ではなく“人”からアプローチする姿勢を養います」(阿部学科長) また、チーム医療、多職種連携が進んでいる医療現場の流れを受け、学部・学科を横断した教育にも力を入れている。 「医学科と看護学科併設の強みを活かし、学科の枠を超えて共に議論し、学ぶことも重視しています。ここに姉妹校である東京薬科大学薬学部の学生も加わり、学生の段階から他職種への理解を深め、チーム医療について実感をもって学ぶ機会も設けています。頭が柔らかい学生のうちにこのような経験を重ねることで、チーム医療に必要なコミュニケーション力が養われていきます」(林学長) 2022年度からは工学院大学も交え医薬工の合同授業も始まるという。 一連の教育で一貫しているのは「自主自学」の精神だ。アクティブ・ラーニングを取り入れた授業では、学生は日々、医療の課題、人の本質について自ら深く考え、仲間と議論を重ねていく。また、医学科では1年生の段階から希望する学生は随時研究室に所属し、自分がやりたい研究に取り組むことが可能。学外の学会に積極的に参加する学生も多いという。また、看護学科では、後輩に教えることを通して自分自身が成長できるチューター制度も導入されているなど、東京医科大学では「自主自学」を実践する環境が整っており、そのための支援も充実している。 「コロナ禍で浮き彫りになったように、医師や看護師は大きな責任とやりがいがある仕事です。そこで求められるのは正解のないなかで自ら考え、決断し、行動する力。大切なのは卒業したあと、どれだけ自ら学び、成長していけるかです。そういう意欲のある学生にぜひ入学していただきたいですね」(林学長)東京医科大学の教育コンセプト図1看護学科阿部幸恵学科長〈人としての生き方、矜持〉〈人や社会との関わり方〉校是正義・友愛・奉仕建学の精神自主自学ミッション患者とともに歩む医療人を育てる高度分娩シミュレータを使ったトレーニングの様子(看護学科)6Vol.439 別冊特集

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