キャリアガイダンスVol.440
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 英理女子学院高校は2019年度から新たなチャレンジを始めている。校名を高木学園女子高校から改めるとともに、新学部「iグローバル部」を開設。同学部では文理融合カリキュラムを編成、また、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・創造力)、Mathematics(数学)を横断的に学ぶSTEAM教育を推進しているのだ。 改革に乗り出した理由は二つある、と同校の髙木暁子理事長は語る。 一つは、「社会に出れば文系も理系もない、文理融合の教養が求められる」という自身の体験から、「高校でも文系・理系で分けず教科横断で学べるようにしたい」と考えたためだ。 「私が大学で専攻したのは経済学。文系でしたが、データ分析などで数学の必要性を痛感しました。卒業後に勤めたメーカーのマーケティング職でも、人文的発想とロジカルな数理的思考の両方が求められたのです」 もう一つは、「今後はテクノロジーも活用した『創造する力』がより重要になる」と確信していて、その力を「教科の枠を越えたSTEAM教育で育みたい」と考えたからだ。 「例えばインターネットやプログラミングを使いこなせるようになれば、家からでも世界とつながり、ビジネスから個人の表現活動まで、創造的なことに関われます。結婚や育児などライフステージによる変化があっても、状況に応じて力を発揮できます。世間一般では、女性はテクノロジーに弱いとされがちですが、本校は女子高だからこそ、その先入観を払拭し、世界中で女性が活躍していくための教育を推し進めていきたいのです」 STEAM教育の柱となるのが探究活動だ。3年間を通して、生徒が自分の興味あるテーマを掘り下げ、SDGsに関連づけて世界の課題の解決策を提言する。総合的な探究の時間がメインだが、それ以外の授業や課外活動の学びもリンクさせている。 「生徒が探究テーマに沿っていろいろな教科の先生に相談するのはもちろん、学校設定科目『情報』の授業ではプログラミングを学び、『思考力科』の授業ではアイデアの出し方や深め方を学びます。また、ビジネスの第一線で活躍する人を講師に招いたプレゼンテーション講座や、プログラミング講座も開講しています。それらの学習を個別の勉強で終わらせず、探究活動にも生かして、生徒が調査や議論を進め、資料を作成し、最終的にプレゼンテーションと英語論文の作成まで行います」(髙木理事長) プログラミング教育の授業を担当しているのが、堺 和貴子先生だ。コンピュータに考えさせるプログラム―例えば生まれ年を入力するとコンピュータがその人の年齢を計算するプログラムを、生徒が試行錯誤しながら作ることから始め、「ゆくゆくは生徒が自分のやりたいことをコンピュータにさせるプログラムを作るところまでもっていきたい」という。 課外活動のプログラミング講座は、「生徒が自分の興味に合わせてテクノロジーを楽しむ」ことから取り組む。生徒が各種ソフトを使って3DCG制作や動画編集をする、というように。その過程で生徒が「もっと自分の思うように表現したい」と感じたら、プログラミングの知識や表現技法もレクチャーする。この活動に寄り添うのが、カート ワンダーリッチ先生だ。大学ではアートを専攻し、現在、オンラインの海外の大学院でコンピュータサイエンスも学ぶ。 「19世紀に持ち運べる絵の具という〝技術〞から印象派の絵画が生み出され、21世紀に電話の操作画面という新たな〝表現〞からスマホが誕生したように、人間はどの時代もテクノロジーとアートを融合させて生活に応用してきました。そのテクノロジーやアートについて、理論や知識だけ教えても生徒には響きません。生徒が創造するプロセス社会が求める融合的な教養と創造する力を育めるように探究活動や課外活動で自分の興味から学びを広げる生徒の興味から始めるSTEAM教育で、文系や理系の枠も越えて学び、創造力を培う英理女子学院高校 (神奈川・私立)左から、堺 和貴子先生、髙木暁子理事長、カート ワンダーリッチ先生取材・文/松井大助1908年創立/iグローバル部・キャリア部/生徒数534人(女子のみ)/世界での活躍を目指すiグローバル部と、私らしさを生かした人生を考えるキャリア部の2学部で構成。学校データ教科の境界を越える❶162021 DEC. Vol.440

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