キャリアガイダンスVol.440
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を体験し、自分の解決したい課題のためにプログラミングや表現技法を学ぶほうが、多くのことを吸収します。ですので、まずは本人が何に興味があるのか、彼女たちの声を聞いたうえで、それに対してテクノロジーやアートでこんなことができるよと後押ししています。他人の用意したドアではなく、生徒が自分のドアを通って、いろいろな世界に行けるようにしたいのです」 一連の取組で、生徒たちの学ぶ姿勢にも変化が見られるようになった。 「『この課題に興味があるからこれをやりたい』と考え、実際にアクションまで起こせる生徒が増えました。自分の関心から学びに入ることの効果も感じています。各教科の学びがより前向きに定着するようになり、生徒が自ら始めたことがうまく回りはじめると、その体験が本人の自信にもつながっています」(髙木理事長) 堺先生は女子校でのプログラミング教育にも手ごたえを感じている。 「単元ごとにアンケートを取っているのですが、『めちゃくちゃ悩んだあとに解決できると気持ちいい』といった感想が多いのです。彼女たちがプログラミングで何かを生み出せていると感じ、それを楽しめているなら、学んでいる意義があるなと思います」 学校全体ではまだ課題もあるという。 「面白いことは好きでも、できあがったものを楽しむ側で、自分で何かを生み出すまではまだ至らない生徒もいます。だから授業でも課外活動でも、今の女の子が『面白い!』と興奮して取り組める創造的な活動を先生たちとさらに増やしていきたいのです。そうすることで、生徒が自分のやりたいことのために、教科の境界を越えて、また『女性は〇〇に不向き』というジェンダーバイアスも乗り越えて、幅広い知識や教養を学ぼうとする環境を実現したいと思っています」(髙木理事長)帰国後の「協働ゼミ」で留学経験をさらに自分の力に髙野さん:探究活動で、廃棄する予定の米からプラスチックを作る研究をしました。「クジラの胃の中にプラスチック」というニュースを見て、大好きなクジラを傷つけず、海洋汚染も防ぐ、植物由来で分解されやすいプラスチックを作ろうと思ったのです。化学は得意ではなく、教科書を覚えるのも苦手。でも先生に相談しながら、自分で調べて実験を繰り返すのは楽しかったです。大島さん:プログラミング講座で、宮本さんとコンテストに出す動画を制作しました。私の担当はアニメーション。映像編集ソフトで、原案イラストから3Dモデルを作って動かしたり、背景を加工したりしました。意識したのは、トライ&エラーを重ねて自分たちの理想に近づけること。相手目線で考える姿勢も学べたと思っていて、探究活動の発表にもすごく役立ちました。宮本さん:私はイラストを担当しました。デジタルの絵は、顔や口をレイヤー(階層)に分けて描けるので、修正しやすいのが好きです。やり方はほぼ独学で覚えました。何かを作るときは自分の感覚を言語化する能力も必要なんだ、と感じたので、国語や思考力科の学びが生きたと思います。目標に向かって進む力もつきました。髙野さん:プラスチックの研究で私もコンテストで発表したのですが、理科や社会の知識から、動画編集やプレゼンの技術まで必要になって。文系・理系を問わずいろいろな知識を蓄えたほうが、大好きなクジラのためにもなるのだと思いました。探究活動や課外活動でデジタルも駆使した創造を教科の枠組を越えた活動に取り組んだ生徒たちの声教科の学びの定着が深まり創造的な活動を楽しむように教科の境界もジェンダー意識も自ら越えていく面白い学びを左から、1年生の大島明子さん、宮本 玲さん、3年生の髙こうの野優花さんプログラミング講座の大島さんと宮本さん(コラム参照)による動画では制作過程も紹介。テクノロジーの活用を楽しんでいるのが見て取れる。探究活動の髙野さん(コラム参照)の発表資料。社会の課題を調べて科学的な解決策を考える、といった教科横断的な学びが実践されている。172021 DEC. Vol.440自分の枠を「越える」学び ~非連続な成長を引き出す5つの越境~「教科」の境界を越える

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