キャリアガイダンスVol.440
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に、続ける必要があるのかという声が生徒からも先生からも出ていたのだ。 「教員の判断で止めることもできましたが、やはり生徒の活動なのだから、生徒たちの話し合いで決めてもらうことにしたのです」(熊谷先生) 活動を通して、生徒たちは以前よりも自信をもつようになり、物事の背景を推察する力も高めていった。 「厳しい校則を変えたいと『切実な自分ごと』として取り組んだだけに、本当に変えられたことが自信になったようです。何十年も続く伝統を変えることには、怖さもありました。でもその怖れがあるから、生徒たちも今だけのノリで決めず、『その伝統はなぜあるのか』まで考えて校則を見直せたように思います」(熊谷先生) 「校歌・応援歌の練習にしても、『帰属意識が高まる』『上下関係を学べる』側面があることまで生徒同士で議論したうえで、『こうすればもっと良くなる』と提案していました。伝統だから従う、嫌だからやめる、ではなく、伝統ができた理由まで考えたうえで、大事な本質を残す形で見直してくれたのです」(小田原先生) 学校全体の変化もあった。生徒の自由度が増し、雰囲気が明るくなったという。無茶をする生徒が出るかと思いきや、「生徒主体で決めたルールなので、どのラインまで大丈夫かをおのおのが自分で考えて行動しようという意識があるようです」(小田原先生)。 熊谷先生には印象的だった言葉がある。頭髪・服装指導を教員は「就職や進学の面接に備えるため」とも説明してきたが、ある生徒はこう言ったのだ。「自分たちはそんな馬鹿じゃない。面接の時は面接用の恰好をするし、TPOは自分でちゃんと考えます」 生徒も交えた学校制度の見直しは、今後も続くと熊谷先生は考えている。 「学校にしても、社会にしても、常に課題は出てくるもので、そのつど制度の見直しは必要になりますよね」 実際、探究活動でLGBTQのことを考えた生徒から、女子がズボンの制服も選べるようにしたいという提案もあったそう。小田原先生はその思いに耳を傾けながら、ルールの議論にとどまらない、より本質的な話になっていくのかな、と今から感じている。 「校則で女子がズボンを選べるようになっても、みんなに受け入れる心の準備がなければ、周囲の目を気にして選べない生徒や、からかわれる生徒が出るかもしれません。地域の人がどう受け止めるかも考える必要がありそうです。ルールありきではなく、そうしたことまで生徒と話し合っていけるといいな、と思うのです」 学校のルールを見直すことが、ひいては社会のあり方を考えることにつながっていく。校則検討委員会は次年度も引き続き活動する見込みだ。「変えられる」という自信と熟慮する姿勢を手にして学校のルールを通して社会のあり方も考えていく学校のルール見直しに取り組んだ生徒たちの声瑚雪さん:私と麗天さんは1年次から校則検討委員会に入り、髪型や靴下などの校則の見直しに携わりました。最初は自分の意見をなかなか言えず…。でも先輩が優しく話をふってくださって、段々と発言できるようになりました。麗天さん:話し合ってみると、ある校則の見直しにメリットを感じる人もいればデメリットを感じる人もいて、意見が食い違うのが難しかったです。いろいろな考えを知りたくて、先生や地域の人にもアンケートを取りました。姫歌さん:私と彩華さんは2年生からの参加です。校歌・応援歌の練習の仕方を見直し、職員会議で提案しました。自分たちも大人も納得できる形にするのに頭を使いました。彩華さん:校歌・応援歌練習は『厳しいのが伝統』という意見もあったんです。じゃあその伝統の中身は何なのかと、問題点や意義を出し合って。そのうえで、威圧的な練習は生徒宣言の『毎日通いたくなる学校』にも反するので止めよう、という結論を出しました。姫歌さん:でも校歌を覚えることには一体感を生む良さもあるので、別の機会をつくることにし、そのやり方を今話し合っています。麗天さん:私は、中学校まで自分の意見をみんなの前で言うことができなかったんです。でも靴下の校則を変えてからは、若干言えるようになったかな、と。言わないより言った方が、自分の意見を取り入れてもらえるので。彩華さん:私も人前で意見を言うのをずっと避けてきたんです。でも、立場が違う人とも伝え方を工夫すれば話し合えることがわかり、人と向き合う力がついたように思います。瑚雪さん:視野が広がり、周囲や先のことまで考えながら行動できるようになったのかな、と思います。『私はこう思う』『こうなりたい』とか、昔は恥ずかしいと感じていた自分の話も友達とできるようになりました。姫歌さん:私は、自分たちの力で学校を変えられるのがすごく面白いと感じていて。だから校則に限らず、これからもみんなと、今しかできないことをめいっぱいやりたいです。自分を出せるようになりやりたいことに挑むように後方右から時計回りに、2年生の照井姫ひめか歌さん、岩間彩あやか華さん、中村麗るあ天さん、中村瑚こゆき雪さん222021 DEC. Vol.440

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