キャリアガイダンスVol.440
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―リアルな場所の越境を促進している文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」の荒畦 悟さんと、テクノロジーを活用してオンラインで世界中の識者と教室を結びつけている「Inspire High」の杉浦太一さんに、それぞれのお立場から、場所の境界を越えることで生徒たちの成長を引き出す意義について語り合っていただきたいと思います。荒畦 留学のメリットは、物理的に場所の境界を越えることで、五感をフルに活用して世界を感じられることや、逃げられないアウェイな環境で、マイノリティとなる経験や、予定外の人とのつながりができるセレンディピティを得られることだと思います。そのなかで、世界の広さを知ることはもちろん、自分や日本、育った地域がどんな存在だったか考え、知ることで一皮剥けた成長を遂げていきます。杉浦 我々のスローガンは「Expand Your Horizons」。つまり興味の領域を広げていこうということです。中高生の頃の体験が人生を決定づける原体験になることって多いですよね。その世代での出会いが学校や地域だけに限られたり、ネットでも好きなことしか見ない状況に課題を感じていました。オンラインの活用でその壁を越え、どこにいても世界中の多様な人とつながれる機会を提供したいと考えたのがInspire Highの取組です。リアルな留学の圧倒的なパワーに比べると、オンラインは体験の深さではかないませんが、その分多様なバリエーションを提供できる拡がりがある。やりたいことを見つける火種を提供して心に火を灯すのがオンラインで、その火をしっかり燃やしてくるような深い体験が留学ではないでしょうか。荒畦 そのとおりですね。どこで何をしたいかという動機があると、留学も充実しますよね。危機感を煽る動機づけもありますが、ワクワク感の方がより強い動機になる。世界の国や人とのワクワクするような出会いのきっかけとしてオンラインは非常に有効ですね。 一方で、留学の課題は機会格差で、都市部や私学の生徒に偏っている現状があります。本来、留学など広い世界への興味関心やそこから伸びていく才能は全国均等にあるはずで、それを我々が発掘できていないだけ。機会を全国の生徒に届けたい。そのための情報発信を「#せかい部」というSNSを活用した施策や模擬留学、オンラインイベントなどを通じて実施してアウェイな環境に飛び出し、広い世界と自分に向き合う経験が、失敗も含めて糧となり次の成長へつながっていくあらうね・さとる●上智大学外国語学部卒業後、人材事業会社、専門商社、外資系IT企業の3社で約13年間採用に携わり、2014年より官民協働海外留学創出プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」創業メンバーとして参画。現在はプロジェクトマネジャーを務める。場所の境界を越える心に火がつくと、生徒はどんどん外の世界を見に行く。オンライン&リアルで、場所を越えた学びの機会を取材・文/長島佳子撮影/平山 諭文部科学省 トビタテ!留学JAPANプロジェクトマネジャー荒畦 悟282021 DEC. Vol.440

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