キャリアガイダンスVol.440
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どんな貢献ができるかという問いを投げかけたり、〝留学生の一人〞ではなく固有名詞で、どんな人として現地のコミュニティに記憶してもらいたくて、そのために何ができるかを考えてごらん、など声がけしています」(山田先生) こうした留学を経て、先生たちから見ても飛躍的な成長を遂げて帰国する生徒たち。特に発信力、自己表現力が顕著に高まってくるという。 「留学先の国々では、学校でも日常生されていなかったことに疑問をもった生徒が、現地の役所に直訴してゴミの分別のプロモーションをしたり、海外で起業したいと日本の担任宛に手紙で直訴してきた生徒もいる。 「単なる発信力ではなく、自分の意見を論理的に伝え、相手の意見もくみ取れる、リーダーとして活躍できる力も養われていると感じます」(都筑教頭) 留学制度と並ぶ同校の特徴のひとつに、1年生と3年生が共に学ぶ「協働活も基本的にお客さま扱いはされません。自分からアクションを起こさなければ友だちづくりも、授業で存在感を出すこともできないことから、生徒たちは自ら動き自己表現する手立てを身につけていきます」(紺野彩織先生) 学びの自由度が高く、やりたいと言えば高校生だからという理由で止められることがないという海外の高校の空気と、前述のような同校の先生たちからの働きかけにより、生徒たちは0から1を創り出すことを考え実行してくる。例えば、現地校の紹介映像を制作したり、ニュージーランドではゴミの分別がゼミ」がある。興味のあるテーマごとにグループで学び合うもので、テーマに対して具体的に何についてどのように学んでいくか、授業設計はゼミ長を中心とした生徒たち自身に任されている。座学やディスカッションだけでなく、学外の官公庁、企業、NPO、大学、地域の商店街などの協働先と連携して実践的な学びを深め、新しい価値を創造することが目的だ。 「3年生たちは留学経験で身につけた発信力や、自分から働きかけて動く主体性を発揮してゼミを運営していきます。ゼミ長希望者も多数出ます。留学先で認めてもらうために現地に貢献しようとしてきたことを、今度は自分の学校や後輩にしてあげたい、郁文館グローバル高校をどうしたいかを自分たちで考えて、主体的に学校をよくしていこうという意識をもつようになるのです」(山田先生) 「それは3年生自身が1年生だったときに、先輩たちからしてもらったことで、ゼミや留学に役立ったり、助けられた経験が多々あるからです。厳しい留学を乗り越えてきた成功体験から、今度は自信をもって自分たちが後輩に経験を伝えることができるようになっています。協働ゼミで縦のつながりをもつことで、留学経験を軸とした自己肯定感の連鎖が学校の文化になっています」(南光秀人先生)留学で場所の境界を越える以上の体験をした生徒たちの声 カナダのオンタリオ州に留学していました。留学前はやりたいことが決まっていなかったのですが、スポーツが得意だったので、推薦してもらった留学先はスポーツが盛んで自然豊かな学校でした。 留学して最初の授業が体育で、しかも得意なサッカー。英語力はまだまだでしたがサッカーを通じてすぐに友だちができました。でも留学2カ月後にコロナ禍でしばらく休校に。学校に行けない期間、家でできることをやろうと、日本の先生にも相談して、オンライン授業や学校からの課題と並行して独自でプログラミングや動画編集などをやっていました。実は自分は理系でありながら1年生の時の授業が大変で文転も考えていたのですが、この活動で理系の自分に目覚め、「音の性質」を研究してみたくなったんです。カナダの自然の中で聴いた音がきっかけです。自分と向き合い、学びたい研究テーマを見つけられました。コロナで想定外の留学となりましたが、困難があっても乗り越えようとする継続力が身につき、自信になっています。留学中のコロナ禍で長い休校を体験その時間でやりたいことが見つかった中島 嶺 ディエゴさん(3年生) 小さいころからタヒチアンダンスを習っていて、ポリネシアン文化に興味があり、ハカがやりたくて留学先はニュージーランドを希望し叶いました。しかし、渡航直後はホームシックにかかり毎日泣いていました。1年後の自分が想像できず辛くて…。でも、1年生の時にたくさん助けてくれた3年生の先輩たちのことを思い出し、「先輩たちみたいになりたい! 目標を達成してみせる!」と考えることで、留学への思いが折れずに乗り越えることができたと思います。 ところが、コロナ禍で留学先の学校でハカの練習がなくなったんです。ハカが私の留学の目的。絶対にやりたかったので、ハカをやっていた小学校の授業を受けたいと直訴して、週1回、高校の授業を抜けさせてもらい受けることができました! 以前は自分の言いたいことを言えなかったのですが、この体験で新しい自分を発見できました。自分から働きかけ、やり遂げてきたことで自信がつき、人と関わる際の最初の一歩の踏み出しがまったく変わって考えがラクになりました。新しい環境で新しい自分を発見!1年間やり遂げたことで自信がついた吉田小春さん(3年生)帰国後の「協働ゼミ」で留学経験をさらに自分の力に飛躍的な成長を遂げ、0から1を創り出せる人材に312021 DEC. Vol.440自分の枠を「越える」学び ~非連続な成長を引き出す5つの越境~「場所」の境界を越える

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