キャリアガイダンスVol.440
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412021 DEC. Vol.440質問内容主題(1)ロールモデル子どもの頃に憧れ尊敬していた人。自分にとってのヒーロー自己概念(2)雑誌やサイト定期的に読んでいる雑誌やテレビ番組、好きなウェブサイトなど職業上の興味(3)好きなストーリー好きな本、映画。好きなストーリーを自分の言葉で語る人生台本(4)指針となる言葉好きな格言や言葉(モットー)、言い回しを話す自分に対する助言(5)幼少期の思い出幼少(3~6歳)期、もしくは思い出せる一番初めの出来事人生についての信念誌上 進路指導ケーススタディ 将来を思い描けない 生徒とどう向き合うか職業調べや職業体験などさまざまな機会を設けて進路学習を進めても、自分の将来を思い描けない生徒がいます。また、将来を常にネガティブに捉え、前に進めない生徒もいます。そのような生徒と向き合う際に役立つ理論として、過去から現在の経験に対する意味づけにより、自分らしいキャリアストーリーを描こうとする、サビカスのキャリア構築理論を取り上げました。取材・文/清水由佳 イラスト/おおさわゆうこんなケース1将来は普通でいいと言う1年生2諦めモードで進路を見失っている2年生3将来をネガティブに捉え投げやりな3年生第21回かりまざわ・はやと●1986年岩手大学工学部卒業後、岩手県の公立高校教諭に。早稲田大学大学院教育学研究科後期博士課程単位修得退学。教育学、教育カウンセリング心理学を専門とする。2015年4月より現職。会津大学 文化研究センター教授 苅間澤勇人先生 【監修&アドバイス】定的に捉えないという点です。人生を一連のストーリーとして解釈し、自分の中に働く意味や価値を見出すことでキャリアが構築されると説きます。そのような個々の主観的なキャリア構築は、伝統的な一定の枠組みで人生を計画できない変化が激しいVUCA時代にマッチした、新しい理論と言えます。 キャリア構築理論では、大きく3つの概念、「職業的パーソナリティ」「キャリア適合性(キャリア・アダプタビリティ)」「ライフテーマ」が示されています。 「職業的パーソナリティ」とは、ホランドなどのマッチング理論から発展したものですが、従来のマッチング理論が人と環境の適合性をある程度厳密に測定し客観的に捉えようとしたのに対し、その適合性は動的で変化するもの、その時々の本人の解釈や理解による、主観的なものと捉えます。そのため職業興味検査なども、例えば「研究タイプはIT向き」と固定的に考えず、「ITに興味がもてるのかも。あるいは最近、研究や探索をして達成感を得た?」のように、可能性としての仮説の説明に用いる必要があると説きます。 「キャリア適合性(キャリア・アダプタビリティ)」は、「現在あるいは今後のキャリア発達課題、職業上のトランジション、個人的なトラウマなどに対処するためのレディネスおよびリソース」と定義されています。具体的には、未来への「関心」、未来に対する自らの「統制」、可 「キャリア構築理論」は、アメリカにおいてキャリアカウンセリングの教育・実践・研究を行ってきたマーク・L・サビカス(Mark L.Savickas)が、スーパーのキャリア発達理論やホランドらのマッチング理論(特性因子論)などを統合し、発展・展開したキャリア理論です。大きな特徴は、一人ひとりの物語や個人の特殊性に焦点を当て、キャリアを固能性を探索する「好奇心」、実現に向けた「自信」の4次元によって構成されると説きます。進路相談のなかでは、この4次元を意識すると、課題の整理につながりやすいと言えます。 「ライフテーマ」は、それぞれの人の人生において解決されるべき課題や到達する必要のある価値のことで、一見バラバラに見えがちなキャリアに統一感のある意味や価値を与えてくれる解釈の枠組みになります。 このライフテーマを見出す手法として、サビカスは5つの主要な質問によって構成するキャリアストーリー・インタビューを実践し、理論化しました(表)。 いずれも仕事や職業から離れた比較的話題にしやすい質問なので、仕事や未来への希望をうまく言葉にできない人にとって、自分なりのストーリーを見出しやすいと言えます。このインタビューのなかで支援者となる教員は、生徒が語る言葉を大事にし、言葉をつなぎ、生徒自身が自分のストーリーに気づけるような質問やフィードバックを行うことがポイントとなります。表 キャリアストーリー・インタビューの5つの質問進路指導に役立つ理論●サビカス「キャリア構築理論」理論を活かす

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