キャリアガイダンスVol.440
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422021 DEC. Vol.440ケース1ケース2ケース3時間をかけた語りで、自分に自信と確信を得ていく 進路相談をしていると、普通に過ごせればいいと言う生徒がいます。宿題や提出物などはきちんと守り、成績もそこそこ。なのに、なぜか進路に関しては意欲が低く、周囲の勧めで安易に選択したり、希望がコロコロ変わったり。そのような生徒とは、特に「ロールモデル」や「好きな雑誌・サイト」などをきっかけに、キャリアアンカーの基になるものを語ってもらうことが大切です。また、それらの語りの延長で、「あなたには能力があって、意志の力でいかようにも変われるチャンスがある」ということをしっかり伝え、キャリアへの「関心」や「統制」「自信」を育むことを意識できるとよいでしょう。自分のヒーロー像やモットーから、課題を客観視してもらう将来を見据えて、価値観への気づきを並行して行う サビカスは、「人は社会との関わりのなかで互いに変化し合う」という社会構成主義の立場から理論を展開します。その点から、諦めがちなど好ましくない思考や行動も、経験により身につけてきたと考えられます。それが何だったのか、そのような思考を客観的に見るとどう感じるかなど、課題を外在化する関わりが大切です。「好きなストーリー」や「ロールモデル」などを通じて、ヒーローやヒロインがどう苦難を乗り越えがんばってきたか、それに対してどう思うかなどを聞いてみたり、「指針となる言葉」などで、自分への応援を再確認できると、抱えている課題の客観視につながるでしょう。 急な進路変更で時間がないと、教師も慌てます。まずどこかに就職を決めてあげるということは大事ですが、一方で、「どこでもいい」をそのままにして仕事観があやふやだと、将来的に安易な離職・転職を繰り返すことになりかねません。時間がないなかでも、専門学校に期待していたことや、自分の得意・不得意なども考え、本人が「自分がなぜこの会社を選んだか」という納得感を大事にしたいところです。また、キャリアストーリー・インタビューの時間なども作り、自分の価値観などを自分の言葉で語れるようにしておくと、将来職場で困難に直面しても、自分で乗り越える助けになるでしょう。生徒: 進路は、普通でいい。この前、お母さんが言っていたけど、公務員って安定してるし、残業もなくていいって。それならいいかな?先生: 公務員だって、今は大変だよ。それより、将来、どんな仕事をしてみたいとか、勉強してみたいとか、何かないの?生徒: う~ん、あんまりないなあ。先生: この前、いろんな先輩たちが話をしてくれたじゃない?生徒: …、まあ、みんながんばってましたよね。先生: あなたは、何かがんばってみたいとかない?生徒: え~。めんど臭いのは苦手。生徒: やりたいことが自分には無理な気がしてきた。先生: どんなことをやりたいと思う?生徒: 医者とか薬剤師とか、医療系の仕事っていいなと思うんだけど、勉強が大変だし、そこまでがんばれるか自信がなくなってきた。先生: 確かに、勉強は大変だけど、やる前から諦めるのはどうかな?生徒: でも、最近、数学とか物理とか、理系科目があんまり得意じゃないかもって思い始めて…。先生: やれるだけやってみて、もしダメだったとしても、その努力は絶対報われると思うよ。生徒: 専門学校に行くって言っていたんだけど、入学金とか予想以上に高くて、ちょっと難しいってことになった。先生: 奨学金とか、いろいろ方法もあるけど調べてみたか?生徒: まあ、そこまでやりたいかってよくわかんないし、とりあえず就職しようかなって。先生: え、今からか!?生徒: どこでもいいからさ。何とかならない?先生: じゃあ、とりあえずまだ募集中の求人がここにあるから、どれか選んでみるか。生徒: どうせどこ行っても大して変わらないだろうし、家から近くて、そこそこ給料が良ければどこでもいいよ。将来は普通でいいと言う1年生諦めモードで進路を見失っている2年生将来をネガティブに捉え投げやりな3年生

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