キャリアガイダンスVol.440
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写真左から、進路指導部長の川田久美子先生、進路指導部(高校2年生担当)の和田圭介先生 桃山学院高校では進路指導において、将来の目標を探すのが1年次、その幅を広げるのが2年次、その実現に向けて具体的に進んでいくのが3年次と位置づけ、1年次2学期に「学部学科調べ」、2年次2学期に「大学調べ」を行ってきた。「学部学科調べ」「大学調べ」に取り組む目的について、今年度高校2年生の進路指導担当を務める和田圭介先生は、「進学先の選択肢を増やすため」と説明する。「関西圏には大学が多く、生徒はつい身近なところから選ぼうとします。なかには京都でさえも、通学圏ではないからと選択肢から除外している生徒も。大阪や関西圏に限定的な視野を全国区に広げ、魅力ある大学の存在を知ることが、大学調べの目的です。学部学科調べは、その前段階。どんな学問があるのか、どの学部・学科で何が学べるのかを知ることに加え、調べ方を学ぶ、という意味合いもあります」(和田先生) また、大学や学部、学科について調べること、知ることを通して、進学への意識や意欲を高めるという目的もある。「進路選択において大事なのは、絶対にあの大学に入りたいという意志や憧れをもつこと。思いが強ければ、途中で目標を安易に下げず、最後までがんばり抜くことができます。そしてそのためには、幅広い選択肢があることを知ったうえでしっかりと比較・検討し、志望校や志望学部・学科を決めることが有効だと考えています」(和田先生)1年次の「学部学科調べ」では、教員がランダムに学部・学科を生徒に割り当てる。「自分が関心のある学部・学科や分野については調べるだろうが、それ以外にはなかなか目が向きにくい。生徒の 1884年、英国聖公会宣教協会から派遣されたイギリス人宣教師らが、「自由と愛の精神」の建学の精神に基づき、男子の教育のために設けた学校が始まり。2001年には男女共学の国際コースを開設し、現在では中高一貫コースを含めて5つのコースをもつ共学校となっている。服装の自由を認めるなど、自主・自律の生徒指導方針も特徴だ。 進路指導においても、生徒の自主性や意志を尊重してきた。一方、通学圏内に大学が多いこともあり、生徒は地理的に限られた選択肢のなかで進学先を選ぶ傾向があった。加えて、あまり調べることなく志望校や志望学部・学科を決めてしまう、途中で安易に志望校のレベルを下げてしまう、地元の国公立大学を目指していたものの早々に私立大学に切り替えてしまう、などという生徒も少なくなかった。また、途中で目標を下げる生徒が出てくると、周囲にも影響を及ぼし、全体的に士気が下がって気持ちが緩んでしまうのも課題だった。 こうしたなか、大学や学部・学科について広く知り、進学先の選択肢を増やすために始めたのが、1年次の「学部学科調べ」と2年次の「大学調べ」だ。10年ほど前から取り組み始め、現在では桃山学院高校の進路指導の要となっている。取材・文/笹原風花大学進学457人、専門学校進学11人、就職1人、その他81人国公立大学には230名、難関私立大(早慶上智・関関同立)には251名が合格。国公立大学合格率(卒業者数に占める国公立大学合格者の割合)は41.8%と、この5年ほどで大きく伸びている。1884年開校/普通科:S英数コース、英数コース、文理コース(文理クラス・アスリートクラス)、国際コース(クラスA・クラスB)、中高一貫コース/生徒数(高校)1976人(男子1073人・女子903人)身近な関西圏に限定しがちな進路選択の幅を全国区に広げる興味・関心にとらわれず、多彩な学問領域の存在を知る452021 DEC. Vol.440

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