キャリアガイダンスVol.440
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問う主体である「私」を柔らかい状態にするところから始めます。本来人はたくさんの自分から構成されていて、「私」という存在は整合性のとれた一種類の自己ではありません。「たくさんの私」を開放し、自由に世界と出会える状態をつくることで、好奇心の土壌をほぐしていきます。「たくさんの私」が自由に動き始めると、ふとした疑問やちょっとした違和感に敏感になります。そのセンサーを使って世界を柔らかく捉えなおすことで、「問いのタネ」になる情報が自然と集まっていきます。情報を多面的に捉える「編集の型」によって、そのプロセスをサポートします。微かな違和感が確かな好奇心へと脱皮していく過程では、良質な「外部知」と接することが大切です。複数の書籍に触発されたり、対話を通して自分の奥にある関心を発見したり、自分と世界のあいだにあるズレや未知を自覚していく中で、好奇心は勢いよく芽吹いていきます。好奇心の向かう先が見えてきたら、その周辺にある知識を「アンラーン」することを促します。物事の起源を辿り「そもそも」を捉え返すことで、「当たり前」を疑う目と根源的な「なぜ?」に遭遇する知的体力を養います。その矛盾や葛藤の中から、独自の「問い」が像を結んでいきます。「問い」が結像するところまでが世界に分け入る「編集の入口」だとすると、そうして抱えた「問い」といかに向き合い形にして表していくかという、「編集の出口」にあたる探究活動に向かうことになります。連載の最後では、「問いの編集工学」の先にある編集の可能性を概観します。512021 DEC. Vol.440

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