キャリアガイダンスVol.440
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562021 DEC. Vol.440 昨年度、「真剣に考えても実現しないとやる気が出ない」との生徒の意見が基となり、グランプリに選ばれたアイデアの実現化を学校側が約束。「小田分校PRのためのゆるキャラコンテスト」や、普段は閉鎖している屋上で教職員と生徒が集まって行う「屋上ランチ」などを学校が許可し、生徒主導で実施した。 「学校は本当にやってくれるんだ」。今年度は、さらに熱が入った。生徒によるオダカン委員会が考えたテーマ「入学者を増やすには」について、自分たちの学校を自分たちで守ろうと意見を交わした。「今年度は入賞のみに限定せず、挙がったアイデアはどれも可能な限り実現させたいと考えています」(山本先生) 次に、起業家教育プログラムと並ぶ特徴的なプログラムである、学校設定教科「探究」についても見ていこう。同校は2学年からビジネス・グローカル・アカデミアの3つの類型に分かれるが、「探究」は、ビジネス類型とグローカル類型の2・3学年のカリキュラムに組み込まれている(図3)。 「探究」には4つの科目があり、卒業後に地元で働く生徒が多いビジネス類型では、「ふるさと探訪学」と「ふるさと創生学」の2科目を履修。地歴公民科の学習内容を総合的に活用しながら、フィールドワークを通じて地域を深く学んでいく。 また、探究学習に力を入れるグローカル類型では、「ふるさと探訪学」に加え、いが形になり、良い経験になったようです」(教育魅力化コーディネーター・小田原希実さん) 起業家教育プログラムのなかには、全学年が一緒に行う、小規模校の良さを活かした活動もある。その代表例が、全校生徒で自分たちの学校について話し合う「オダカン」(小田校カンファレンス)だ。発想法やディスカッション方法などを外部講師から学んだあと、学校に関するテーマについてグループディスカッションを行い、アイデアをコンテスト形式で競う。 「自分の意見を出すことに慣れない生徒も、学校のことなら話しやすいのではないかと考えました。素晴らしいアイデアを出すことより、それぞれが自分なりに考え、意見を言い合えることに重点を置いています」(山本先生) ディスカッションは8人程度の学年横断グループで行う。1年生は発言ができない生徒も多いが、先輩たちの様子から自分たちが目指す姿勢や行動を学ぶ。2年生では、自分の意見やアイデアを出せる生徒もぐっと増える。3年生になると、自分の意見を言うだけでなく、どうすれば後輩たちが発言しやすくなるかも考えながら、グループの意見をまとめていく。実施後は「先輩・後輩で話せて楽しかった」「自分の意見を聞いてもらえてうれしかった」などの感想が上がり、人気がある学校行事の一つとなっている。「プロジェクト学習Ⅰ・Ⅱ」にも取り組む。プロジェクト学習は起業家教育プログラムと同様に地域の課題解決を通じて幅広い力を磨くことをねらいとしているが、グループではなく個人プロジェクトを基本としていること、そして全員が解決策の実践までを目指す点が特徴だ。 生徒にとって、課題の発見から解決策の実践まで自分で行う個人プロジェクトは、簡単ではない。困難にぶつかったり、方向性を見失ったりしたら教員に相談し、アドバイスやサポートをもらいながら進める。引っ込み思案で地域の方への依頼に二の足を踏む生徒には、最初は教員が一緒に原稿を考え、電話掛けにも付き添う。 「そうしたなかで生徒は徐々に教員の手を離れ、自分で考え、外部の方ともやりとりしながら活動するようになっていきます」(小田原さん) これまで地域の伝統的な祭りの復活や、道の駅との協働による地元の果物を使った「おだものゼリー」の開発・販売、「学校HP閲覧者数1日1000人」を目標に取り組んだ学校PRなど、さまざまなプロジェクトが実施された。 「自分のプロジェクトでは誰もが主役になり、地域の方が協力してくださって自分の考えが形になります。それが自信や意欲につながっていると感じます」(小田原さん) 地域にとっても学校存続は悲願であり、同校の活動に非常に協力的だ。その関係性を活かし、来年以降はグローカル類型以外も含めて「一人一プロジェクト」を可能にしていきたいという。 では、こうした起業家教育プログラムや「探究」で培った力や興味・関心は、進路選択にどうつながっていくだろうか。引っ込み思案だったある生徒はプロジェクト学習で「見える世界が変わった。もっと世界を広げたい」と、国際協力に興味をもつようになり、進路目標を大学の国際関係学部進学に絞り込んで熱心に受験勉強に取り組んでいる。また、チームや後輩醸成された興味・関心を広い視野をもって進路に接続課題解決策の実行まで行う個人プロジェクト生徒全員で学校について議論。出たアイデアを実現「オダカン」では異学年グループで学校をテーマに意見を出し合う。オダカンで出たアイデアから生まれた「屋上ランチ」を全校で楽しんだ。内子町の自然のシンボルである小田深山でフィールドワーク。図3 学校設定教科「探究」の構成ふるさと探訪学(2単位)※ふるさと探訪学(2単位)※プロジェクト学習Ⅰ(2単位)プロジェクト学習Ⅱ(2単位)ふるさと創生学(2単位)【ビジネス類型】(第2学年)(第3学年)(第2学年)(第3学年)【グローカル類型】※ふるさと探訪学はビジネス類型・グローカル類型同時開講

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