キャリアガイダンスVol.440_別冊
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うな考えのもとに生み出されたのが、未来構想方式なのである。 だから、この未来構想方式の入学試験そのものが、地域創生やSDGsなどをテーマとした同大学の学びや、次に紹介する自ら課題を設定して取り組むマーケティング・イニシアティブでの学びに接続しているのである。 高校で探究活動に取り組み、自律的主体的に学ぶ面白さに気づき、未来構想方式のような入試を経て入学してきた学生に、産業能率大学はどのような教育を用意しているのだろうか。 同大学は、アクティブラーニング型授業やPBLを、全国の大学のなかでもいち早く導入してきたことで知られている。その産業能率大学が経営学部マーケティング学科で2022年度から新たにスタートさせるのが、「マーケティング・イニシアティブ」というプログラムだ。これまでのPBLでは、課題は誰かから与えられるものだった。例えば1年次の「基礎ゼミ」では、連携する石垣島から与えられた地域課題の解決策をチームで考え発表することで、課題解決のための手法や考え方を身につけていく。それに対して、「マーケティング・イニシアティブは1~3年次に夏期に3日間集中して取り組むプログラムですが、PBLで身につけた手法や考え方を活かしつつ、学生自らが企業の課題を発見し、その解決に挑むことが最大の特徴です」と、このプログラム開発を担った経営学部の杉田一真教授は語る。 1年次のラウンドⅠでは、2~3名のチームで関心のある企業を選び、その企業が抱える課題を発見して問題状況を整理して発表する(図2)。2年次のラウンドⅡでは、チームでビジネスプロフェッショナルと協働して解決策を検討し、プレゼンテーションを行う。そしてビジネスプロフェッショナルから実践を想定したフィードバックを得る。3年次のラウンドⅢ、アカデミックアドバイザーに加えて、実務に精通したビジネスプロフェッショナルと意見をぶつけ合いながら、個人でテーマに選んだ企業・組織が直面するであろう課題を設定し解決策を提案書にまとめて、プレゼンテーション機会を創出する。 ここで注目すべき特徴の第一は、先にも述べたがラウンドⅠ~Ⅲを通じて、すべて課題は自分たちで設定するということである。 第二は、ビジネスプロフェッショナルによる支援である。該当分野に精通している社会人としての実務経験をもつ先生や協力企業の若手社員などが、ビジネスプロフェッショナルとして登録されていて、必要に応じてこうした人たちの支援が得られる。 第三は、ラウンドⅢでは個人で提案書をまとめ、自分で企業に対して働きかけ、交渉して提案機会を創り出す点である。そのためには、企業側が提案を受けてみようと思えるほどのクオリティにまで提案を磨き上げる必要があり、ビジネスプロフェッショナルやアカデミックアドバイザーの助言が貴重な役割を果たす。 そして第四は、図のようにこのマーケティング・イニシアティブが、通常の4年間のプログラムと相互に成果を活用する構造で組み立てられている点である。 このようにマーケティング・イニシアティブは、予測不能な時代に、社会や企業の現実の課題を発見し、自ら課題設定して解決に取り組む能力を育むことをねらいとしている。その点で、学生たちのエージェンシーを育むとともに、大学と社会のスムーズな接続をも射程に入れたプログラムなのである。杉田教授は 「いくつもの壁(プロジェクト)を乗り越えて自分らしい未来を描き、空にまっすぐに伸びる飛行機雲のように力強く社会に飛び立ってほしい」と語っている。未来構想方式が求める人材マーケティング・イニシアティブ導入後の学び図1図2 社会課題に対し、主体性を持って向き合うことができる人4年次PBL 超実践型PBLマーケティング・イニシアティブ2年次3年次 高校時代に探究学習、課題研究に取り組み、意欲的、積極的に行動できた人 個人あるいはチームで正解のない問いに対し解を考えることに興味を持ち、身の回りの課題に対し、自ら考え行動したことのある人 地域の課題に問題意識を持ち、将来「起業家」または「組織のリーダー」となり、課題解決の担い手となることを目標とする人1年次卒業プロジェクトラウンドⅢラウンドIIラウンドIマーケティング・プロジェクト企業研究プロジェクト初年度PBL6Vol.440 別冊特集

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