キャリアガイダンスVol.441
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業向けコンサルティング会社(O2)の経営者。山形県内の金型製造企業(IBUKI)を子会社化して再建にあたるなか、「地域と中小企業を、そこで暮らし働く人々を、活気づけたい。その活気を全国に波及させることが、日本再興につながる」と考えるようになった。「日本は、世界のデジタル競争力ランキングでも年々ランクが下がっています。かたや、国内での地域格差の課題もある。社会変革を起こすには、未来の主役である若い世代がAIをはじめとしたデジタルの知識や技能を使いこなすことが不可欠です。そのために大事なのが教育。教育を怠った組織と地域には未来「親に頼れず年末年始の生活を乗り切ることが不安な若者に、8万円の現金給付をする」。認定NPO法人Dディーピー×PのSNSでの発信に、7日間で380人もの希望者が殺到した。昨年末のこはありません」(松本氏) 学校教育のなかでも外部が関わりやすい部活動に注目した松本氏は、AIの部活を作ることを発案。産官学民を巻き込みながら仲間を増やし、「やまがたAI部」を設立した。「教育には、企業活動にはないワクワク感がある」と松本氏は言う。「生徒の学びや成長に伴走することは、社員にとってもスキルアップの機会に、そして心の栄養になっています。一方、私たちは民間企業の知恵とスピード、行動力で、教育現場に刺激を与えることができます。志ある先生方と組んで、一緒に新しいものを生み出していきたいですね」(松本氏)とだ。用意していた枠は最大250人。想定以上の数に、「若者が直面する厳しい状況を改めて思い知らされた」と理事長の今井紀明氏は肩を落とす。 さまざまな事情から学校に通えない生徒や、居場所を失い孤立してしまう生徒が増えている。「高校生をはじめとした10代は、セーフティネットから抜け落ちやすく孤立しやすい」と今井氏。「学生対象の食糧支援があったが、高校生は対象ではないと言われた」「ひとり親の母は持病を抱え、障害年金での生活は毎月ギリギリ。学校は楽しいけどお金や食事のことを考えるとしんどい」…そんな高校生の声が日々届く。「10代をひとりにしない」をコンセプトに活動するD×Pでは、不登校、中退、家庭内不和・虐待、経済的困窮、いじめなどにより安心できる居場所や頼れる人を失った10代に向け、オフライン・オンラインの両面で頼れる人とのつながりを提供し、安心して暮らせる環境・収入の安定をサポートしてきた。「学校に行けていなくても中退しても、この先の人生を希望をもって生きていく、その礎をつくりたい」と今井氏は語る。 オフラインでは、通信・定時制高校に通う生徒に向けて、大学生や社会人ボランティアとの対話を通して人とつながる授業「クレッシェンド」を展開。学校と連携した居場所づくりや就職につなげるための仕事体験ツアーにも取り組んできた。また、オンラインでは、LINEで相談できる窓口「ユキサキチャット」を運営。悩みを聞くだけでなく、相談者の課題に対して具体的なアクションを提案し、必要に応じて行政や他の支援先とつないだり、食糧・物資や現金(月1万円、最大3カ月)の給付、パソコンの寄贈を行ったりしてきた。コロナ禍の影響もあり、昨年は相談件数が急増。現在も厳しい状況が続いている。「うちに相談に来る人の約3割が、これまで誰にも相談できなかった、と言うんです。ヤングケアラーなど、一見して気づきにくいケースも増えています。生徒にとって、高校は最後の砦。人生に希望がもてるよう頼れる場所・人をつくる「ユキサキチャット」はLINEで簡単に相談できる。相談は無料で、対応は平日10:00-19:00(土日祝もLINEの受け取りは可)。高校生のときに医療支援NGOを設立。活動のためにイラクへ渡航した際、武装勢力に拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもとバッシングを受ける。対人恐怖症になるも、友人らに支えられ復帰。偶然、中退・不登校を経験した10代と出会い、彼らの境遇と自身のバッシングされた経験が重なり、2012年に認定NPO法人D×Pを設立。10代の声を聴いて伝えることを使命に、SNSなどで発信を続けている。認定NPO法人D×P理事長今井紀明困難な状況にある若者を社会全体で支える食糧支援・現金給付やつながりづくりで、10代をひとりにしない112022 FEB. Vol.441社会と共に生徒を育てる社会全体で生徒を育てる・支える -社会側の視点からー

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