キャリアガイダンスVol.441
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よう」と高校と地域との協働が始まり、当初、地域課題が前面に出ていたように思います。しかし、生徒が地域に出て学ぶなかで大きく成長する姿が、状況を変えました。「未来を担う子どもたちを社会と共に育てていこう」との意識が学校現場に広がり、その協働モデルは全国の高校にも影響を与えてきました。今では産業界もその一端を担おうとする動きが活発に。連携の可能性は、高校の周辺地域から社会全体へと広がっているのではないでしょうか。―奥田さんは、隠岐島前高校のコーディネーターとして地域と連携したカリキュラム作りや高校生のプロジェクトの伴走を行うなど、約10年間、学校と社会をつなぐ取組に携わってきました。そのなかで、連携状況はどう変化してきたでしょうか。 隠岐島前高校などでは、「地域に学校を存続させるために高校を魅力化し 高校と地域、どちらか一方の論理だけで進めてしまうと、他方が「我慢して付き合う」という状況になりかねません。これら2つのコーディネート機能が発揮され、高校側の教育目的と地域側の期待が重なる部分を、丁寧に探っていくことが大切でしょう。 そして3つ目は協働体制におけるコーディネート機能です。連携の規模が広がるなかでは、属人的な力に頼るのではなく、コンソーシアムのような協働体制を構築し、組織として持続的な活動にしていくことが重要になります。―コーディネート機能が必要でも、それを先生方が担うのは大変です。 私も、先生方だけで担っていくことは、非常に難しいと感じています。3年前に また、先駆けて取り組んできた高校では、連携の仕方が変わってきました。ある高校では、地域から課題を与えてもらって生徒が取り組むという探究学習が、テーマを決めるところから高校生と地域社会の大人たちが一緒に行う方法に変化。別の高校では、地域の大学や行政、企業と共に目指す生徒像を話し合い、商工会議所が高校生のプロジェクトに出資して支援するような取組も始まっています。高校生を「一緒に社会をつくる仲間」とする、学校と社会の共創的な取組が多数生まれてきました。―より実質的な取組にしていくには、どんなことが必要でしょうか。 地域との協働においては、3つのコーディネート機能の必要性が整理されています(図)。協働の対象を広く「社会」と捉えた場合も、同様の機能が求められると思います。 その1つ目は、高校におけるコーディネート機能です。学校の目標や生徒の実態に基づいて、地域社会と関わる教育課程の企画・運営や、地域側との連絡調整が必要となります。 2つ目は地域におけるコーディネート機能。地域側の視点に立ち、地域資源の掘り起こしや、学校外での生徒の活動の支援などを行う機能です。学校が所在する地域のNPOや商工会議所などが担う例が出てきています。学校と社会の連携はより共創的にコーディネーター配置に向けた動きが加速カタチだけの「連携」ではなく「共創」にしていくために今、学校現場で重要性が増す「コーディネート機能」高校が社会と共に生徒を育てるには、何が大切でしょうか。隠岐島前高校で魅力化コーディネーターを務めた経験をもち、現在は島根県や国の仕組み作りにも関わる奥田さんに聞きました。IT企業勤務を経て、2012年より6年間、島根県立隠岐島前高校魅力化コーディネーターを務める。軽井沢風越学園設立準備財団勤務、公立中学校教員を経て、2019年より島根県および地域・教育魅力化プラットフォームにて、学校と社会をつなぐ仕組み作りに携わっている。写真提供:笹島康仁島根県教育委員会/(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム奥田 麻依子さん182022 FEB. Vol.441

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