在学中、多数のPBLに参加し、プロジェクトを企画したり、それを進めるために地域の人にプレゼンやディスカッションしたり、発表したりという経験が日常的にありました。それを中高の6年間通してやってきたため、大学に入ってからレポートを書くこともディスカッションする授業も、他の学生よりも恐れずに楽しくできている気がします。 私自身が多数のPBLに関わったきっかけは、生徒会活動の一貫で全国高校生集会に参加した際に、他校の生徒たちが社会に関心をもち、実際に解決のために行動している姿に刺激を受けたからです。自分にももっとやれることがあると思うと同時に、同世代にすごい人たちがいることを学校の仲間にも知ってほしくて、難民問題に取り組む他校生を招聘して講演してもらったりもしました。 また、現代社会の授業で震災被災地の復興についてのビデオを見て、そこで活動していたNPOに興味をもち、夏休みに会いに行きました。そのとき「被災地支援には人とのつながりが大事」と教えられたんです。その学びを活かすために、学校がある藤沢と被災地の人をつなげるPBLを立ち上げました。被災地のお店を招いての食フェスなどを企画し、PTAや地域の方の協力も得られ、いざ実践というときにコロナ禍に。中止せざるを得なかったことが心残りでしたが、計画段階で被災地や地域の方々からたくさんのことを学ぶことができ、今後の活動に活かしたいと思っています。 自信をもって言えるのが、高校時代の友人をみんな尊敬できること。PBLなどのさまざまな活動を通して、それぞれの友達が好きなこと、得意なことが見えて、それがみんなの本当の姿なんだと知ることができたからです。生徒一人ひとりの本質が見えるような場を提供してくれたり、伴走してくれる先生やPTAがいる学校で学べたことは本当にありがたい経験でした。仲間の「本当の姿」が見えみんなを尊敬できるような学びを提供してもらった被災地とのつながりでコミュニティ構築を目指したPBLの計画段階で、連携先の団体の一つ「結いの便利屋」の方々を訪問したときの様子。クラウドファンディングの利用で実現した「足湯プロジェクト」(写真上)。2016年に始まった福島の被災地支援の「ひまわりプロジェクト」は、現在も引き継がれて毎年行われている(写真下)。2020年卒中央大学総合政策学部1年 半田明みほ穂さん卒業生の声 「社会とつながる場の一つとしてクラウドファンディングは有効であると考えています。生徒たちの思いがいかに実社会で賛同を得られるかを知ることができる機会となるからです」(小林先生) 例えば「足湯プロジェクト」では、熊本地震の際に被災地支援を行ったつながりを活かし、学園祭実行委員たちが学園祭で阿蘇の温泉水を使った足湯を提供するプロジェクトを企画。温泉水は無償提供してもらえることになったが、運搬費は自分たちで準備しなければならなかった。そこでクラウドファンディングで呼びかけをし、運搬費の35万円のうち約8割をクラウドファンディングで調達することができた。 湘南学園の生徒たちが授業外で評価対象にならないPBLを積極的に立原因で、種を食用とするひまわりの育成ができなくなってしまった現地の人に代わって、ひまわりを育て、収穫した種を福島に送っている。校内や、学校に隣接する土地でひまわりを栽培。中高生メンバーを中心として、幼稚園や小学校、PTAなど、生徒から保護者までが一丸となって取り組んでいる。 費用がかかる場合には、クラウドファンディングを取り入れることもある。ち上げていくのは、社会と関わる活動自体が楽しいと感じていると同時に、自分も仲間も、教科だけでは見せることができない得意分野を発揮できるからだ。教科学習や部活動で目立たない生徒が、PBLで活躍するという例は枚挙に暇がないという。 また、生徒たちが軽々と学校と社会の垣根を越えられるのは、やりたいことを見つけると、教職員やPTA、地域の大人などが後押ししてくれる学校風土があるからだ。特に、卒業生はもちろん、自分の子どもは既に卒業している保護者まで、後援会として物心双方から支援し続けるケースも多い。生徒に関わり、見守る大人の輪が拡充し続けていくことで、生徒が社会と触れる機会が増えていき、生徒を支援する大人の思いを生徒が受け止めて、社会課題に向かう次の活動につなげていく。こうした好循環が学校風土であるからこそ、同校の取組が長く続いているのだ。 学校とPTAが共につくってきた多様な社会に開く風土は、今後も同校の特徴として自然に受け継がれていくと伊藤校長は語る。 「さらに、グローバル化、IT化が進む時代に、狭い学校の中で教育が完結することはあり得ません。学校と社会とのつながり方はいっそう多種多様になっていかねばなりません。特に、ITにおいては、データサイエンスの素養を育むなど現在の学校リソースだけでは対応できない分野においては、大学と連携したり、そうした技術をもっている卒業生や後援会の力を借りながら実現していきたいと考えています」(伊藤校長)学校・生徒・社会のつながりが学校風土だからこそ持続可能時代に合わせて校外のリソースの幅を広げていきたい生徒主体のPBL活動222022 FEB. Vol.441
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