生徒たちの声一採択。国や自治体、企業、著名なアスリートやコーチが直接関わる一大プロジェクトに発展し、今後の部活動のあり方やスポーツコミュニティのモデルとなるべく現在も挑戦を続けている。同プロジェクトにも深くコミットしている富田さんと渡辺さんは、こう口を揃える。 「プロジェクトの規模が大きくなり、高校生にとって圧倒される状況だったと思います。にもかかわらず、大人の言うことにうなずくだけではなく、『なぜ自分はこのプロジェクトをしているのか』『自分にとってどんな意味があるのか』まで腹落ちさせたうえで、堂々と意見を述べるまでになりました。それを可能にしたのは、鹿追高校の多くの先生方が生徒の成長プロセスを考え、やる気を引き出すコーチングや見守りなど、関わりの度合いを絶妙にコントロールされていたからだと感じています」 これに関連して豊田先生は言う。入学者を増やしたい」という動機から始まり、他校の事例や関係者への聞き取り、教員への提案や話し合いを経て実現させたものだ。生徒からの信頼も厚い慶應義塾大学の渡辺さんは言う。 「メンターといっても私たちは、生徒さんの発表を聞き、『では、先生にこのように話してみたら』といった助言をしただけ。それだけなのに説得力のある素晴らしい企画書を作り、先生方にプレゼンし、本当に当初の目標を実現させた。その実行力に驚かされました」 同じくスポーツ班の生徒による、「部活動を活性化したいけれど、部員が揃わない」という問題意識から始まった部活動改革プロジェクトは、運動部・文化部・帰宅部の垣根を越え兼部を認めるなど、学校の規定を改定させた。プロボノメンターの助言でスポーツ庁の「Sport in Life推進プロジェクト」という公募事業に応募したところ、公立高校から唯 「初めは自信なさ気でも、生徒の中で、『やれるのかな?』から『やるしかない』に変わる瞬間があるんです。そうなると、こちらが言うことはありません。自分たちで考え、行動しますから。もちろん、そういう子ばかりではなく、最後まで積極的に動こうとしない生徒もいます。そんな生徒でも、ほかの子の動きを見て気づくことはあるはず。将来、『そういえば、あの子はこうやって動いていた。今の自分ならできるかもしれないな』と思いだすきっかけになれば、それでいいと思っています」 2021年には、町の支援の下、町民ホールに専用学習スペースが誕生した。常勤スタッフを置かない代わりに、道内外の大学生6人がチューターとしてオンラインで対応する公設塾だ。 「相談したいときに相談できる体制です。探究同様、学習も主体的になればと考えました。町の支援には感謝しています。歴史ある学校は同窓会の規模も大きく、多様な支援がありますが、小さな学校はそれが見込めません。でも、ここでは地域自体が同窓会組織のようなものと感じています」(俵谷校長) 2021年度の新入生は、前年度の倍となる56人となり、2年ぶりに2クラスを確保した。だが改革は始まったばかり。近隣自治体には廃校になった学校も少なくない。「持続可能」の四文字が、流行り言葉ではなく自らの存在に直結している。ただし俵谷校長に、生徒を地域に縛りつける発想はない。 「学校存続や地域創生は大事ですが、一番の目的ではありません。大切なのは生徒の成長。子どもたちの力をどう開花させてあげられるか。そのために、多くの方々の力を借りているのです」小さな学校にとって地域は同窓会組織のようなもの慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教渡辺今日子さん関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科 教授富田欣よしかず和さん未活用資源であるホエーを使って何ができるか。最終的にクッキーになりましたが、味噌汁の素材にするなどの試行錯誤が楽しかったし、今後の活動にも活きると思います。年上の方と接することが多く、自分の意見をきちんと伝えることの大切さも学びました。先を見据えて動く力もついたかな。外部の方といろいろな経験ができるのが鹿追高校のいいところ。経験を活かし、大学では地域活性化について学ぼうと思います。(3年生・北村梨紗さん)地域活性化についてさらに大学で学びたい商品化など未知の世界でしたが、大勢の大人に支えられながら、新しいものを作りだすことの難しさや面白さを感じました。探究の時間だけではとても足りず、家庭科室を借りたり、自宅で試作品を作ったり。そうした過程が楽しかったです。教育関係の仕事に就くのですが、こうした経験を多くの人にしてもらいたいし、地域とも関わっていきたい。鹿追町は高校生にも寄り添ってくれる町。なので、恩返ししたいという気持ちになれるんです。(3年生・林中優ゆつき月さん)鹿追町は高校生にも寄り添ってくれる町IT班としてeスポーツ部を立ち上げようとした理由は、1つ下の生徒数が半減したこと。ショックで、高校の知名度を上げたかったんです。スポーツ班でも、部活動参加者をどう増やせるか検討する過程で同様の案が出たことから一緒に活動することに。先行する通信制高校の先生に連絡し助言も頂きました。部の発足を報じる記事が新聞に載ったことで少しは高校の知名度が高まったかな。後輩が困ったときはいつでも助けたいです。(3年生・髙たかつき附 旭あきらさん)あとは後輩に託すが困ったときは助けたいスポーツ庁の事業に採択されたときは、めちゃくちゃビビりました。でも大人の本気も伝わり、「絶対に実現させよう。今しかやれないことに打ち込もう」と決意しました。お陰で、普通ではできない経験をさせていただいたし、自分の考えを落ちついて話せるようになるなど成長できたことにも感謝です。特に富田さんと渡辺さん、いつもフォローしてくれる髙附君に感謝。いつか自分もプロボノメンターとして戻れるよう、経験を活かしたいです。(3年生・田村 航わたるさん)皆のお陰で成長できた。感謝しかない252022 FEB. Vol.441社会と共に生徒を育てる社会と共に生徒を育てる高校事例
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