1966年山手学院中学校開校、1969年山手学院高校開校。建学の精神は「世界を舞台に活躍でき、世界に信頼される人間」の育成。高2生を対象とした15日間のボストン研修のほか、北米文通プログラム、8日間のシンガポールイマージョンプログラム、外国人大学生らと英語でディスカッションするエンパワーメントプログラムなど国際交流教育が盛ん。特別進学コースを中心に国公立大学、難関私大の合格者多数。山手学院中学校・高校(神奈川・私立)まとめ/堀水潤一 撮影/竹田宗司 本校の創設者の一人、松信幹男は「地球を1㎝動かす仕事をせよ」と生徒に言いました。2019年に本校に赴任した私は、少し表現を変え、世の中を動かす「Change Makerになれ」と言っています。与えられた仕事を遂行するのではなく、自ら課題を見つけ、多くの人々と協働し、解決に向かえる人が、社会に変革をもたらすと考えているのです。 生徒にはまた、「当たり前のように見えることでも、自分がおかしいと感じたら声をあげろ」とも話しています。コロナ禍で休校になった際はネットを通じて、「あなたが総理大臣だったら国民にどんなメッセージを発する?」など、思考を促す問いを出し続けました。毎回、100人以上から回答が届くなど、生徒は一生懸命考えており、だから私も一人ひとりに返信してきました。そうしたことを通じて、「自分の意見や考えを発表していいんだ。発表しないとだめなんだ」という機運が高まってきた気がします。例えば、昨年英国で行われたCOP26に本校の生徒が参加し、報道で取り上げられました。日本の高校生が来ていることをアピールするため、敢えて制服で行ったそうです。また、昨年の文化祭を制約付きで実施しようとしたところ、「その開催方式は納得できない」と400人もの生徒の署名が集まりました。近隣の高校の対応をリサーチしたうえで自分たちなりの解決策を提示してきたのです。実に頼もしいことです。 私の目標は、海外大学進学を含め、多くの生徒が世界を舞台に活躍すること。その点、本校は1969年から続く北米研修プログラムなど国際交流教育に定評があります。ただ、同研修の古い文集を読み返すと、初期の頃に感じられた「自分はこれを学びたいんだ!」という熱量が次第に薄まり、「楽しかった」「別れが寂しい」という感想が増えてきたことが気になっています。再び熱量を高くするため、中1から高2まで、つながりをもったプログラムを構築するつもりです。例えば、「シンガポールイマージョンプログラム」では、従来の現地高校生との交流に加え、シンガポール国立大学生と連携したプログラムを導入し、負荷を高めます。 こうした国際交流と並行して進めているのが、非認知能力の育成を念頭に置いた国際教育プログラム、GLP(Global Leader Program)です。課外の「土曜講座」に組み込む形で、アントレプレナーシップ講座や各種プログラミング入門のほか、哲学対話を通じて思考を深める「じっくり考える会」や、SDGsをテーマに英語で議論を深める“Eyes on the World”などを順次設定。多くはNPOやスタートアップの力を借りて始めたものです。教員一人ひとりの力には限界がありますが、畑の違う人々が加わることで視野が広がり、生徒も変容することを期待しています。自前主義では限界があるのが、これからの社会。外部の力も借りつつ、GLPは年々進化していくでしょう。「とりあえずやってみる。走りながら考える」という精神も、変化の激しい社会でますます求められるはずです。ときのり・ひろあき/1955年山口県生まれ。金沢大学理学部卒業。1980年神奈川県立綾瀬高校数学科教諭。続く秦野高校では、生徒と団結し高い進学実績をあげる。45歳で厚木南高校教頭になって以降は、県の高校再編を背景に、フレキシブルスクール(横浜桜陽高校)教頭や、新タイプの通信制高校(横浜修悠館高校)校長を歴任し、新しい学校づくりや高校改革に従事。自ら考え、周囲を巻き込み、対話しながら変化を起こす仕事にやりがいを感じる。湘南高校校長を最後に定年退職。神奈川県教育委員会高校教育課に3年務めたのち、2019年より現職。当たり前を疑い、おかしいと思ったら声をあげろ外部機関と連携したグローバルリーダープログラムの充実を292022 FEB. Vol.441
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