332022 FEB. Vol.441(教室で一人でいることが増え、授業中もぼんやりしていることが多くなった男子生徒。今週3度目の遅刻をしたこともあり呼び出した)先生: 最近、元気がないようだけど、何かあったのかな。生徒: …。何か、毎日がどうでもよくなって。先生: そうか。毎日が虚しい感じなのかな? (いいかえ・閉ざされた質問)生徒: うん…。もう死んだ方がいいかなって。先生: 死にたいほどの気持ちを抱えているのは辛いな。先生も一緒に考えていきたいから、もう少し何があったのか話してもらってもいい? (感情の反映・開かれた質問)生徒: 大学入学共通テスト、失敗しちゃったじゃない。一応、志望校変更して願書出したけど、やっぱり受験するのやめようかと思って。先生: やめたくなった理由、もう少し具体的に教えてもらうことはできる?(開かれた質問)生徒: 願書出すときは、何も考えずに近場の国公立で受かりそうなところって選んだから、なんかやる気にならなくて。先生: その大学を受ける意味がわからなくなったんだね(要約)。生徒: うん。それに、やっぱり共通テストの失敗が悔しくて。来年リベンジしたい気も。先生: そうか。実力を発揮できなかったのが心残りなんだね(いいかえ)。卒業生: 仕事を辞めたいと思って…。 先生: だいぶ辛そうだね。もう少し詳しく聞かせてくれる?(感情の反映・開かれた質問)卒業生: 職場の人とあんまりうまくいっていなくて…。あまり教えてもらえないのに、何かというとすぐ怒鳴られて。 先生: そうか。よくわからないまま叱られるのは辛いね(いいかえ・感情の反映)。卒業生: まあ、自分がぼんやりしていてミスが多いのも悪いんだけど。そもそも、みんな忙しくしていて、何を誰に聞けばいいのかもわからなくて…。 先生: わかる。先生も新人のころさ~(自分の新人教員時代の同じような体験を話す)(自己開示)。<例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ>苅間澤先生のワンポイントアドバイス「寄り添う」姿勢が、自殺のゲートキーパーに 文部科学省の『コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について』において、児童生徒の自殺の理由として令和元年で1番多かったのは「学業不振」、2番目は「その他進路に関する悩み」でしたが令和2年には順位が入れ替わりました。進路の悩みは、それだけ生徒にとっては大きなことなのです。だからこそ、進路相談において、しっかり生徒の気持ちに寄り添い、話を十分に聞いてあげることが重要になります。「進路に関する悩み」と言っても、一人ひとり、抱えているものは異なります。同じ「受験をやめたい」でも、理由や背景は千差万別です。安易にカテゴリー化せず、生徒の声にしっかり耳を傾けてあげてください。また、増加する自殺者の予防役ともなる「ゲートキーパー」としての教師の役割も重要になっています。SOSを見逃さず、より適切な対応ができるよう、日頃から校内で研修を行ったり体制づくりを話し合っておくことも大切です。厚生労働省が自殺対策の取組やゲートキーパー、相談窓口などの情報をまとめたサイト「まもろうよ こころ」もぜひ参考にしてみてください。https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/『マイクロカウンセリング“学ぶ-使う-教える”技法の統合:その理論と実際』アレン・E・アイビイ著 福原眞知子他訳 川島書店マイクロカウンセリングの全体像がわかるバイブル的書籍。
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