キャリアガイダンスVol.441
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「本校には希望進路に応じて4つのコース(特進コース、選抜コース、進学コース、中高一貫コース)があり、進学コースのうち1クラスはスポーツクラスで、国公立大学を目指す生徒から本格的にスポーツに打ち込む生徒までさまざまです。それぞれがそれぞれの目標を掲げ、青春をかけてチャレンジしていこうというのが本校のスタンスで、『それぞれの個性・それぞれの青春』を合言葉にしてきました。この精神や合言葉は、教員の間にも深く浸透しています」 最後に進路を選ぶのは、生徒たち。しかし、面談中に高校入試の苦い経験がフラッシュバックしてしまう生徒や、大学入試では絶対に失敗できない・したくないと頑なになっている生徒、挑戦を避け合格安全圏の大学や選抜方式を選ぶ生徒も少なからずいる。加えて、保護者も安全志向が強い。今年度も3年次11月というタイミングで保護者会を開き、「選ぶのは本人たちです。チャレンジを後押ししましょう」と訴えた。 「保護者の方も、『うちの子が行けるところはありますか?』と聞いてこられるんです。生徒や保護者の気持ちは理解しつつも、『行けるところ』ではなく『行きたいところ』に行こうよと、そのためにがんばろうよと訴えています。これからも、進路指導を通して挑戦することの価値を伝えていきたいと思います」ま。最後にクラス内で発表するのですが、タブレットで資料を作成して投影する生徒、紙芝居でわかりやすく伝える生徒など、それぞれのやり方で発表しています」 2年次3学期からは、小論文や志望理由書の書き方など、大学受験を意識した内容にシフト。3年次5月の「受験ガイダンス」後には、どこの大学・学部のどの選抜を受けたいのか、受験に必要な科目や過去問の傾向はどうかといった具体的な情報について、先輩が残した「受験報告書」などを参考に調べてまとめ、提出する。そして、提出された進路希望を基に、野口先生ら進路指導部の教員は動き出す。 「本校では伝統的に、管理職も含めて全教員を挙げて面接・小論文指導にあたっています。生徒の希望する進路に応じて進路指導部で担当を割り振り、教員1人が生徒3〜4人を受け持って個別に対応しています。大学入試が多様化するなか、総合型選抜以外でも面接や小論文が課せられるケースが年々増えており、今年度、指導の対象になる生徒は200人ほど。夏から2学期にかけては、空き教室や廊下など、校内のいたるところで教員が生徒を指導する姿が見られます」 それぞれの業務に忙しいなか、教員は協力的だ。「多様な生徒の多様な進路実現を支えようという共通認識があり、みんな面倒見がいい」と、野口先生は言う。入試制度を具体的に知り志望校を決定」。その過程で探究の手法を学び、課題研究に取り組む。課題研究のテーマ選びに役立ててほしいと、2年次6月には「大学出張講義」を実施。大学の教員20人余りを講師として招聘し、それぞれの専門分野について研究内容や学問の面白さをゼミ形式でレクチャーしてもらう。専門分野は多岐にわたるため、生徒は自分の興味・関心のある話を聞くことができ、アカデミックな世界に触れられる貴重な機会となっている。 「大学出張講義の内容もヒントにしながら、個人もしくはグループで課題を設定します。AIやスマートフォンといったデジタル分野や環境問題など、テーマはさまざ「行けるところ」に妥協せず、行きたい大学に挑戦してほしいこうした気づきを得てくれたことを嬉しく思い、また成長を感じました」 今後は、「学校外の人や企業ともっとつながり、生徒が社会や大学をダイレクトに感じられる機会を増やしたい」と野口先生は意気込む。 「『社会人から学ぶ』や『大学出張講義』が生徒にとって大きな刺激になっているのを目の当たりにしてきたので、コースごとに実施したり、回数を増やしたりして機会をもっと増やしたいんです。学校内のリソースだけではできないので、外とのつながりや連携を強化して実現したいと考えています」 野口先生の印象に残っているのが、総合型選抜で志望校に合格したある生徒の「自分から動いた経験って大事なんだと実感した」という言葉だという。 「派手なことや目立つことではなく日常的な小さなことでも、自分から動いた、自分からやってみたということに意味があると気づいた、と。そして、それを自分の言葉で書いたり話したりして表現し、入試にも合格できたことで自信になった、と。高校生活を通して外部と連携し、社会や大学を肌で感じる機会を増やしたい今年度の「社会人から学ぶ」の様子。事前アンケートで生徒の希望を聞き、自分の興味・関心のある分野で活躍する講師(卒業生)の話を聞けるよう配慮している。少人数のため双方向のコミュニケーションが可能で、社会人の本音を聞くことができる。多様な目標に向かい努力する多様な生徒を全教員で支える372022 FEB. Vol.441

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