キャリアガイダンスVol.441
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1898年創立。普通科(特進コース、文理コース、総合コース)、商業科(会計ファイナンスコース、ITメディアコース、経営マネジメントコース)。建学の精神「自主独立」の人とは、常に考え続けて行動し自分の能力と可能性を信じて品性を磨き保ち続ける人のこと。1936年建造の本館や講堂、柔剣道場は登録有形文化財。全国レベルの運動部が多く、松商学園スポーツセンターを2022年度開設予定。松商学園高校(長野・私立)まとめ/堀水潤一 撮影/市川まど香 これまで私は各地の学校に校長として赴き、それぞれの学校がもつ良さを引き出してきました。同時に、周囲から「この子はここまで」という目で見られていた生徒の伸長を見続けてきました。教師が本気でぶつかれば生徒は本気で応えてくれるもの。ただ問題となるのは、生徒自身が自分の限界を決めているときです。改革を託されたある学校の入学式で驚いたことがあります。第一志望の学校ではないからか、生徒が一様にうつむいていたのです。私は準備していた祝辞をやめ、「まだ何も始まっていないこと」「不可能なんてないこと」などを訴えることから始めました。そして卒業時までに生徒たちは大きく伸長しました。 その点本校は、運動部の活躍もあって知名度が高く、自校に誇りをもつ生徒が大勢います。礼儀正しく明るいというのが、昨年赴任したときの私の第一印象。ただ、「自分の立ち位置はこのくらい」と決めつけている生徒がいることも感じました。勝手に作ったこうした天井を取り払うことも私に課せられた使命です。 そのためには選択の機会を増やし、行動を促すこと。例えば普通科の場合、入学段階で文理コースと特進コースに分かれるのですが、進級時のコース間の移動を容易にしたことで、ハイレベルな環境で学びたくなった生徒の背中を押すことが可能になりました。 学習スタイルにしても「仲間と助け合って勉強したい」「先生に気軽に質問したい」「ICTを活用し自学自習したい」など生徒の好みはさまざまです。組み合わせを含め、どのやり方がフィットするか本人さえわからないかもしれません。ですから一律のメニューではなく、多様な選択肢を用意することで、「それなら、やってみようかな」と、行動に移したくなる環境を、これまで以上に整えているところです。 本校には3つの安心材料があると感じています。1つ目は124年という長い歴史があり、4万人近い卒業生がいること。それはつまり、県内外を問わずどの大学や分野に進んでも先輩がいること。暗闇のなかで灯りをともして待っていてくれるような安心感があります。2つ目は高い進学実績です。進学実績で本校を上回る県内の私学は2校とも中高一貫校。裏返せば本校は3年で伸びるという安心があります。3つ目は、人的・物的環境が整った大規模校であること。情熱的な先生から研究者タイプまで教職員の数は100人以上。多様な人が集うことで、社会性の涵養や適応力の育成につながることは研究でも明らかです。不確実性が高く、変化の激しい社会で生き抜くために、ますます必要とされる力です。 加えて、そうした社会で求められるのは学び続ける力です。一つの場所に停滞することなく常に成長を続け、なりたい自分に一歩でも近づいていく。結果的に人々の役にも立つでしょう。まずは教師自身が学び続ける姿を生徒に見せてもらいたい。「一生懸命学んでいる大人ってカッコいい」「学ぶって楽しそう」と思ってもらえる、モデルとしての姿をです。ながの・まさひろ/1956年生まれ。南山大学外国語学部卒業後、私立高校で長く教鞭をとる。教科指導に行き詰まっていた時期に、校長の許可を得て塾講師を体験。その際、厳しく教え込むスタイルを受講生から全否定される一方、やる気を引き出す諸先輩の指導法を目の当たりにしたことが転機に。その後、常盤木学園高校、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高校などで校長を歴任。「学校再建校長」の異名も。聖徳大学教授、東京都市大学付属中学校・高校校長・客員教授などを経て2021年4月より現職。学校法人松商学園理事、松本大学客員教授。著書多数。選択肢を少しでも増やし生徒の行動につなげたい変化の激しい社会で必要となる適応力と学び続ける力392022 FEB. Vol.441

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