キャリアガイダンスVol.441
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菊地未来さんが代表を務める、合同会社ミサキステイルのホームページはこちら!卒業後も就職せず、鎌倉のゲストハウスで2年ほど働いたり、空き家を活用して民泊をやりました。その後知り合いの横須賀市役所の職員に声を掛けてもらい、公共建築課という部署で勤務することに。 役所に入って2年目に、三浦市主催による「トライアルステイ事業」に関わりました。このとき、移住体験者のサポートにボランティアで参加した地元のメンバーと自分たちで空き家を利活用してトライアルステイ事業をやろうと2018年に役所を退職、MISAKI STAYLEを設立したというわけです。 これまでお話ししてきた通り、現在の活動に至るまでに決定的なターニングポイントや高い目標などがあったわけではありません。あったのは、ひたすら「目の前の課題を解決したい」とか「誰もやらないなら自分がやらなきゃ」みたいな思いで、それに突き動かされてきた結果が今なんです。 ですから、高校生の皆さんも、目の前のやるべきこと・やりたいことをやっていれば、自然と次に繋がるので目標を無理に立てなくても大丈夫。重要なのは考えるだけじゃなく、実際に行動することなんです。た三浦に何が必要かを考え、調査・研究を続けました。この大学院時代に今に繋がる大きな転機がありました。あるとき、昔の庄屋さんが蔵と蔵を繋いで住居にしていた、唯一無二の建物が取り壊されることを知りました。このような三浦の文化的な遺産ともいえる建築物が失われるのは、まちにとっても大きな損失。大切なまち並みを守るために何とか残したいと思い、持ち主に「どうしてもこの建物を残したいから売ってほしい。無理なら貸してほしい」と交渉したのですが、聞く耳をもってもらえず、結局取り壊され、跡地には新築の家が建ってしまいました。 この出来事で、空き家に建築的価値があったとしても、自分の思いだけでは残せないのだと痛感。同時に、どうしたら三浦らしい貴重な建物を残せるのかを考えました。地元の人にその価値を理解してもらい、保全しようと思ってもらわなければならない、そのためには口でいくら説明してもわかってもらえないので、自分自身の行動で見せるしかない。こう考えた結果、出てきた答えがゲストハウスです。学部時代から、三浦に来るほとんどの観光客は日帰りなので地元にお金が落ちないことが課題だと認識していました。でも素泊まりのゲストハウスがあれば滞在時間が増え、夕食は外で食べるから地元の飲食店が潤います。そこで、修士論文で空き家をゲストハウスにすることを提案しました。 提案するだけで終わったらこれまで研究してきた意味がなくなるので、大学院 生まれ育った神奈川県三浦市でMISAKI STAYLEという合同会社を立ち上げ、三浦への移住支援、創業支援、空き家の利活用などに取り組んでいます。移住希望者がお試しで居住できるトライアルステイも行っており、私自身も空き家を活用して朝食限定の食堂を営業しています。 入学した高校は工業、商業、普通科が統合された新設校で、大学のように2年生から好きな科目を選べる選択制の総合学科でした。機械科の教師だった担任との進路相談のとき、製図室で図面を引くドラフターという機械を見て使ってみたいと思ったので、2年生からは建築に関する科目を重点的に選択することにしました。ただ、明確に将来、建築関係の仕事をしたいと思ったわけではないんですよ。先のことは何も考えていませんでした。 大学は指定校推薦枠で工学部建築学科に進学。2年生のとき、まちを歩いて自分で課題を見つけて解決策を考えるというフィールドワークを半年間やりました。この授業を通して、何も考えずに生活していたら見えなかったまちの課題点の見つけ方を学び、調査・分析して、解決案を考える力が身につくと同時に、まちの見方が変わりました。 卒業後は大学院に進学し、生まれ育っ三浦への思いを胸に奔走三浦の遺産が失われたことが大きな転機に1 MISAKI STAYLEの5人のメンバー。移住支援事業を民間で、なおかつ地元民と移住者が一緒に行っているのが全国的にも珍しい。2 三浦産の食材を使用して、私ならではの、三浦にない飲食店を作ろうと思い、朝食限定の食堂「朝めし あるべ」を立ち上げた。3 三浦市の使えるのに使っていない空き家の利活用を提案。改修時には片付けをし、三浦に暮らす人が楽しくなる仕掛けをしていきたいと思っている。52022 FEB. Vol.441

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