地震や津波、台風などの災害が続いており、地球の自然と賢く付き合うことは誰にでも必要なことだと言えます。その自然と付き合うための知識や技能を、楽しく実用的に学べるよう、創意工夫されている授業実践をご紹介します。しいことに近いのでは』という見方をできるようになってほしいと思っています」 また、「類似点を見つけて分析する能力」や、「時間や空間のスケールを変えて見る能力」、多様な現象を俯瞰して「総合的に見る能力」なども伸ばそうとしている。「これらの能力は、地球のことを理解するのに役立つだけではなく、社会でさまざまな課題に挑むうえでも有効だと思うのです」 では、永井先生は具体的にどんな授業を行っているのか。ポイントは3つある。 一つ目は、地球規模の自然現象を教室で再現する「モデル実験」に力を入れていることだ。自身が考案した実験・実習は10以上あり(欄外参照)、ほかも含め、年間の実験・実習は「地学基礎」で約30回、「地学」で約15回も用意している。 二つ目は、その実験を作業的にこなすのではなく、「続きが気になる展開」や「どんでん返しが起きる展開」のなかで楽しめるよう、ストーリーを練っていることだ(そのために永井先生はテレビドラマなどのストーリーを分析、参考にしている)。 三つ目は、そのわくわくする実験のなかに、生徒が自分で考えたり、対話したりする機会を意図的に入れていることだ。 コザ高校の永井秀行先生が目指しているのは、生徒にとって「楽しい地学」かつ「命を守る地学」となるような授業だ。「地学では『自然現象』や『自然災害』について学びます。この2つは別物ではなく、昔から地球で起きている自然現象のなかに人が居て被害が及ぶと、それが自然災害となります。大気や海洋の変化から地殻変動まで、さまざまな自然現象は、危ない時間帯や場所を避けていけば、害よりもはるかに多くの恩恵を私たちにもたらしている、と言えます。地学の授業を通して、そうした『日常は自然の恩恵を受け、災害時は避ける』という付き合い方を学んでほしいのです。私たちが人生で一番長く付き合うのは、親でも子でもなく、地球なのですから」 授業を通して、実社会で生きる力も育んでいる。端的に言えば、科学的な視点の醸成となるだろうか。例えば「科学的に正しいかを考える姿勢」もその一つだ。「生徒と接していると、テレビやネットの情報を鵜呑みにし、疑うことを知らないと感じることがあります。『論破できる人』や『多数派』が正しいとする風潮も感じます。専門家でも専門外は間違うことがあり、多数派が正しいとも限りません。『科学的に納得できる説明がされたものが、最も正自然現象の恩恵を受け取り災害は避けられるように生徒に対する想い生徒を見取って授業をデザインコザ高校(沖縄・県立)一生の付き合いとなる地球のことをもっと知ってほしい大阪で育ち、大学2年の地学沖縄実習でその自然に魅せられ、4年の教員実習で教職の魅力も知り、「沖縄で教師になる」と決意。三度の採用試験に挑み、晴れて沖縄県の教員に。モデル実験等で多くの受賞歴があり、考案した火山噴火モデル実験は、地学基礎の教科書にも掲載されている。地学永井秀行先生今号の先生モデル実験にわくわくしながら生徒が自ら考え、対話を重ねる授業の実践取材・文/松井大助撮影/竹内弘真※ 永井先生考案の実験・実習を参照したい方は以下よりリストをダウンロードできます。 ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 発行メディアのご紹介>> キャリアガイダンス(Vol.441)562022 FEB. Vol.441
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