キャリアガイダンスVol.441
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■ コザ高校(沖縄・県立)どう?」と新たなお題。試してみると、今度は渦がうまくできない。なぜだろう。 再び生徒同士で話し合い、「ボトルの底の凸凹のせいでは?」という意見が出た。そこで、別に用意していた底が平らなペットボトルでも実験してみると――逆さにしないでも、きれいな渦ができた!  ということは、「山や海、平野のなかで竜巻が発生しやすい地形はどれ?」と永井先生。ここまでの発見を踏まえて、授業終盤では、竜巻発生のメカニズムや被害を避けるための知見を生徒たちが学んだ。 「なぜ日中の空は青く、夕焼けは赤いのか」を考える授業では、永井先生が理由 例えば「竜巻の発生条件を探ろう」という授業。冒頭ではまず、竜巻を映像で観察し、どんな特徴があるかを生徒同士で話し合った。出てきたのは「回転」「上昇」という意見。そこで永井先生が本題に入る。「竜巻の発生条件は、回転と上昇気流ではないか、という仮説ができましたね。実験で検証してみましょう」と。 用意したのは、洗剤入りの水を詰めたペットボトル。このボトルを逆さにして、振って泡立て、くるくる回すと、泡の「上昇」と水の「回転」を生み出せる。果たしてこの条件で竜巻は発生するのか。 実験してみると、ペットボトルの中に、確かに竜巻のような渦ができた。再現できて楽しそうな生徒たち。でも実験はまだ終わらない。「逆さにしないでやったらの一端を説明した。「太陽光に含まれる青い光は、赤い光などより波長が短く、空気中の分子にぶつかりやすい。ぶつかった青い光が散乱し、空が青く見える」と。この現象を実験でまず確かめた。正方形の水槽に、細かい粒子のワックスを混ぜた水を入れ、懐中電灯で光を当てる。結果、粒子にぶつかって青い光の散乱が起きたようで、水は青みがかった色に変化した。 間髪入れずに永井先生が問う。「ではなぜ夕焼けは赤い?」。ここからは生徒の思考と対話の時間。太陽と人の位置を書き込むワークシートも手がかりに、「光が大気を通過する距離が伸びることに関係している?」との仮説をひねり出した。そこでまた実験だ。今度は長方形の水槽に、横から光を当てる。すると、光を当てた前方は青くなり、一方で奥のほうは朱色に変化した! 沸き立つ教室。永井先生は「距離が伸びるとなぜ赤くなる?」と深掘りを促す。生徒は意見を出し合い、「青い光は最初のほうで散乱してなくなり、残った赤い光が見える」という結論に達した。嬉しかったのか、拍手まで起きた。そこに宿題として新たな問いが。なぜ月食の月は赤く、台風前後の空は紫なのか。 「温暖化が海洋鉛直循環に及ぼす影響」を考える授業では、事前に映画『デイ・アフター・トゥモロー』を鑑賞した。温暖化が原因で氷河期が訪れる物語。こんなことが現実に起こりうるか「検証しよう」というのが授業の趣旨となる。まず、水槽とインクを使った実験装置で、海洋鉛直循環を再現した。地球上では「高緯度地域で、冷気によって表面の海水が冷やされ、重い水となって深く沈み込み、その水が海底をめぐってまた上昇する」という循環が起きている。この鉛直循環が「熱」の運搬にもひと役買うのだが、さて、温暖化で北極の氷、塩分のない真水に近い氷が融けて海面を覆うと、どうなるか。結論から言うと、水の沈み込みは上辺の真水部分にとどまり、海底まで沈み込む鉛直循環は起こらなくなる。地球上の熱の運搬が滞り、寒冷化が進み…。 以上の説明では、どんな現象なのか想像しづらかったかもしれない。だが、生徒たちは装置に真水と食塩水を入れたモデル実験で、循環が止まる現象をその目で確認した。温暖化のリスクの一つが絵空事ではない、と実感できる授業だった。校訓は「自由・平和・叡智」。部活動や生徒会活動が盛んで「文武両道」をモットーとする。ICTを活用した学習環境の整備にも力を入れており、クラウドサービスの学習システムの活用、生徒の所有するタブレットやスマホの校内無線LAN接続、AIによるアダプティブラーニングを取り入れた学習コンテンツの活用などを進めている。2020年度より、沖縄県教育委員会の「学力向上推進(カリキュラムマネジメント)モデル校」の研究指定校。全日制普通科/1945年創立生徒数(2021年度)1116人(男子458人・女子658人)進路状況(2020年度)大学175人・短大24人・専門学校および各種学校115人・就職4人・その他78人〒904-0011 沖縄県沖縄市照屋5丁目5番1号 098-937-3563 http://www.koza-h.open.ed.jp/言葉だけでは想像しづらい自然現象をその目で確認する空の色を再現する実験。実習助手(左上写真中央)の力を借り、ワークシートも工夫して、準備や片付けも含めて50分の時間内に収まるよう、濃密な実験の流れを組み立てている。海洋鉛直循環を再現する実験。インクを使うことで、冷やされた水が沈み込み、底で広がるという動きを確認。そのあとで、表面を真水の層が覆っても鉛直循環が起きるかを実験した。竜巻を再現する実験。底が凸凹のボトルでは逆さにして回すと渦ができ、底が平面のボトルでは逆さにしないでも渦ができる。竜巻の避け方として気象庁の情報の活かし方も学ぶ。572022 FEB. Vol.441

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