キャリアガイダンスVol.441
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思い描いている授業のあり方目指す生徒像他の教育活動や社会とのつながり● 日常は自然の恩恵を受けて、災害時は避ける、という自然との付き合い方ができるようになる● 「防災の心・技・体」を身につけることで、自分の命や身近な人を守れるようになる● 情報を鵜呑みにせず根拠を確かめたり、俯瞰して総合的に見たりするなど、科学的な視点が身につく地学の授業・ 身近な素材を使ったモデル実験・実習で、地球の自然現象を再現。生徒が自分の手で何が起こるかを試してみて、起きた現象をその目で確認する・ 岩石など実物があるものはふれることを重視する・ 実験でも、教科書の学習でも、生徒が自ら考えて対話することを重視する。①問題提起、②個人予想、③グループ内の発表&議論、④各グループの発表といった展開を授業にできる限り取り入れる実験・実習・実物を重視生徒が考え対話して深める・ 気象や地震・火山のことを先に学び、年間を通して、天候や災害のニュースがあれば授業の冒頭で取り上げる・ 「防災」というテーマを柱に、モデル実験で理解する地学講座を、学校の先生向けや社会人向けにも展開するなっている。旅行に行く前や、季節の変わり目に、生徒が自ら気象情報をチェックするという変化も見られるようになった。 今後、永井先生としては、社会全般への地学教育の普及にも貢献したいそうだ。既に取組も始めている。気象庁と日本気象予報士会が連携した「防災プロジェクト」では、地学教員向けのワークショップや実験講座を実施。この先は全国の先生とも交わりたいと構想する。また、沖縄県初の「防災士養成講座」の講師として、地域の人とも関わるようになった。ゆくゆくは「地学を学びたくても学べなかった社会人向けの実験講座も開きたい」という夢も抱く。日本の高校現場では、特に理系志望の生徒に対して「受験科目 授業にモデル実験を取り入れると、以降は勤務したどの学校でも「生徒の食いつきが全然違った」という。進学校でも、進路多様校でも、「今日は何の実験をするの?」と生徒が興味を示すようになり、観察や分析を基に仮説を立て、実験で検証するという科学的アプローチも楽しむようになった。現任校のアンケートでも、ほぼ100%の生徒が、実験や実習は楽しいと回答している。その実験の過程で生徒同士で対話をすることにも「理解が深まる」と肯定的な感想が多い。みんなで意見を出してから実験で検証すると、多数派の意見より、少数派の意見のほうが正しかったと判明することもあり、科学的根拠を考える重要性を実感する場にもに指定する大学や学部がより多い」という事情から、理科のほかの科目を選択するように促す傾向があるからだ。 「日本列島は、4枚のプレートが重なっているので地震・火山災害が多く、海洋との位置関係から台風災害も多いところです。にもかかわらず、自然災害につながる自然現象を扱う地学が軽視されているように思うのです。自然災害から自分の命を守り、家族など身近な人も守る、という意識をもつこと。自然現象の情報を自ら入手して分析し、科学的に判断していく技能を得ること。そしてその判断に基づいて、行動する力も高めること。そうした防災の心・技・体を、より多くの人に身につけてほしい、と思っています」生徒はこう変わる科学的に考える姿勢や「防災の心・技・体」が身につく■ 生徒INTERVIEW■ 実験へのアンケート結果――永井先生の地学の授業の特徴といえばなんでしょう?村「実験が多いです。メントスコーラで火山の噴火を再現した実験とか。マグマが上昇して爆発して、山とかが飛び散っちゃうんです」普久原「竜巻の実験も楽しかったです。ペットボトルを使うのですが、ボトルの底が、凸凹か、平面かで、渦を作れるかどうか変わってくるんです」玉城「スライドや動画でイメージが伝わるように教えてくれます。部分月食の説明では、先生自身が地球役になって、天体の動きを見せてくれました」吉田「インターネットの情報の間違っているところも教えてくれます」――地学を学んで良かったと思うことはありますか?吉田「天気のことです。積乱雲とか巻層雲とか、雲を見れば雨が降りそうとわかるので。旅行前は、天気図も見て、雲や風の動きを予想しています」村「私も天気のことで、『梅雨前線』『温暖前線』で何がどうなるか理解できるようになりました」玉城「中学校では説明を聞いてもよくわからなかったけど、今の授業はイメージしやすいので、地球のことに興味をもてるようになりました」普久原「日本は自然災害が多いから、その仕組みを知ることで対策や予防にもつながるな、と思っています」実験やスライドでイメージをつかめるから地球のことや防災への関心が強まった左後方より時計回りに、3年生の玉城克まりえ恵さん、普久原楓かのん音さん、村 美花さん、吉田蒼あおね音さん592022 FEB. Vol.441

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