キャリアガイダンスVol.441
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リクルートサービスを活用した実践事例【学習】創立1975年/普通科(男女)/生徒数508人(男子238人、女子270人)進路状況(2021年3月実績)大学78人、短大15人、専門学校等51人、就職14人、その他17人 兵庫県の公立高校には特色ある類型をもつ普通科が多い。多様な進路希望者が集まる猪名川高校もその1つで、幼稚園や保育園、福祉施設で体験学習を行う「教育コミュニュケーション類型」がある。 「進路多様校で通塾率も低い本校には、勉強が苦手で、学習習慣が身につかない生徒が少なくありません。その支援をどうするか。これが最大の課題です」 そう話す酒井 翼先生は、2019年に赴任し、1年生を教えるなかで「中学の既習範囲が定着していないことが、学習意欲の低下に影響しているのではないか」と考えるようになったという。 「中学までの理解度を数値化して学び直し、生徒自身が学び直しの意味を見出せれば、学習意欲も向上するはず。ただし、教員がそれを行うには相当な労力が必要です。そこで、学年団に相談して導入を決めたのが、『到達度テスト』で中学の既習範囲から各生徒の苦手な単元をあぶり出し、その連動課題を配信して学び直しができるスタディサプリです」 2020年から2年生限定で導入したスタディサプリだが、コロナ禍で新学期から休校。4月に予定していた「到達度テスト」も延期になった。しかし、「逆にそれがよかった」と酒井先生は言う。 「3月から休校だったために教員はスタディサプリの講義動画を見て準備をすることができ、生徒たちへの導入や週末課題のやり方も、電話をかけてフォローするなど丁寧な対応ができました。その成果か、4月当初から動画視聴率は90%以上。週末課題の提出率は、生徒への声かけで、スタート時から現在まで、ほぼ100%です」 分散登校が始まった6月に「到達度テスト(中学3年〜高校1年)」を実施し、夏休み明けからは英・数・国の苦手分野の課題配信をスタート。英語と数学は、念願の中学の学び直しまで手が届いたという。 「導入1年目から課題を必ず行う習慣がついたことで、生徒が成績を落とさなくなり、模試の成績も少しですが全体に上がりました。そして、今までは模試や定期考査で半分寝ていた生徒が、最後まで諦めずにがんばるようになった。これは本当に、嬉しいことですね」と酒井先生。 そんな2年生の変化を見て、1年生と3年生もスタディサプリを導入。2021年からは全学年での本格運用が始まった。 「学び直しだけでなく、3年生では講義動画を使った英語の反転授業も行っています。こうした授業も増やしていきたいです」と進路指導部長の田丸優美先生。 1年主任の亀村和昌先生も「入学時から使っている現1年生は、家庭学習での活用が前の1年生より増えています。来年度からは中学の学び直しも始まるので、生徒の変化が楽しみです」と話す。スタディサプリの活用で学びが変わった好事例だ。中学の既習範囲を学び直しで定着させ、学習意欲を高めたい課題苦手分野を課題配信し、提出率はほぼ100%。講義動画で反転授業も活用取材・文/丸山佳子 到達度テスト  課題配信  反転授業【活用キーワード】到達度テストで苦手を把握。中学の学び直しを継続することで「最後まで諦めない力」を育てるスタディサプリ活用法猪いながわ名川高校(兵庫・県立)写真右から教頭守田久美先生1年主任亀村和昌先生(理科)進路指導部長田丸優美先生(英語)3年進路担当・国語科主任酒井 翼先生(国語)「到達度テスト」を実施することで生徒に必要な連動課題が一目でわかるだけでなく、これまで教員が行っていた課題の作問、回収、採点、記帳が必要なくなり、スタディサプリの「for TEACHERS」で一括管理ができるため、大幅な業務軽減につながりました。また、生徒の苦手分野を学年で共有することができ、中学までの苦手分野を課題配信しながら、授業でも苦手克服を中心とした組み立てができるようになったことが、生徒にとっては大きなプラスになっていると思います(酒井先生)。「到達度テスト」で、課題の作問や採点が不要になり、教員の大幅な業務軽減に新1年生には、先輩たちの活用法を配布新1年生には、先輩のリアルな声を伝えることを大切にしているという。「スタサプのノートを作ってテキストを写してから動画を見て穴埋めしています。大事やなぁってところは、赤ペン。間違えそうやったら、青ペン。なんとなく大事やったら、緑色のペン。っていう感じです」などの意見が!2022年度からカリキュラムが変わる関係で、新1年生は、週に1時間、自由に使える時間ができました。学校設定科目にすると評価をしなければいけないので、学力の向上よりも勉強の仕方を身につけることが大切と考え、来年度は総合の時間にして中学の学び直しを行うことになりました。新1年生には、1人1台タブレットが配付されるので、よりスタディサプリが使いやすくなるはず。生徒たちの成長を楽しみにしています(亀村先生)。2022年度からは、新1年生で中学数学・英語の学び直しを総合学習の時間で実施事前に講義動画の視聴範囲を指定し、その内容を復習する形で行う反転授業は、動画を見てこなければ理解できないので、生徒たちもちゃんと視聴してきます。うっかり見逃してしまった生徒には、ほかの生徒が授業前に内容を要約して伝えたり、動画の内容について疑問点がある生徒がいれば、ほかの生徒が教えるなど、以前にはなかった生徒たちの姿が見られるようになったことが嬉しいですね。英語と数学は、全学年で習熟度別少人数制の授業を行っているので、もっと反転授業を増やしていきたいです(田丸先生)。3年生の進学者向け英語選択授業では、講義動画を反転授業に632022 FEB. Vol.441

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