キャリアガイダンスVol.442
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校生のときに起業し、現在は大学で学びながらビジネスを続けています。きっかけは、高校2年生のときに受けた「アントレプレナーシップ(起業家精神)入門」の授業でした。それまでは起業なんて考えたこともなかったのですが、ビジネスを通じて課題解決ができることを知り、自分が感じてきた課題も解決できるかも…と思ったんです。その課題というのが、紫外線による肌のトラブルでした。私の実家は兼業農家で、屋外で作業を続けてきた母はシミやシワが多くて。子どもの頃から、どうしてなんだろう、どうにかならないのかな…と思っていました。 WHOや環境省の発信などを調べていくうちに、「生涯に浴びる紫外線の半分は18歳までに浴びるといわれている」「子ども時代の日焼けは後年の皮膚がんや白内障発症のリスクを高める要因になり得る」など、知らなかった情報にたくさん出合いました。日本では子どもが日焼け止めを使用する習慣はあまり定着していませんし、日焼け止めの使用を禁止している学校もあります。幼児期から啓蒙しないと変わらないと考え、教材とセットで子ども向けの日焼け止めを販売するというビジネスを考案しました。 授業で起業のプロセスを実践し、〝やってみよう精神〞が鍛えられていた私は、両親の勧めもあってJAグループ主催のオープンイノベーションプログラムに応募。ビジネスプランを見てもらったり推薦状を書いていただいたりと、学校の先生方にも協力していただき、特別賞を受賞しました。その後、TOKYO創業ステーションなどのサポートを受けながら、「太陽の下で安心して暮らせる環境を」をコンセプトに、株式会社Sunshine Delightを設立しました。周囲のみんなが応援してくれる環境だったので、やりたい熱量がすごく大きくなっていて、「起業しない」という選択肢はなかったですね。 商品は、化粧品メーカーのKOSÈと共同開発しました。同社主催の「Innovation Program」に応募したところ、86社の中から採択され、協業の機会をいただいたんです。肌に優しいのはもちろん、子どもでも使いやすいポンプ式、環境に配慮した紙パック素材の使用、保育園などの施設で使いやすい大容量タイプなど、これまでの日焼け止めにはなかった視点で作っていきました。一方、教材の制作についても、外部の方々と協力しながら進めていきました。いろんな人に協力してもらいながら一つひとつかたちになっていくのが、楽しくてたまりませんでした。 実は、起業する前から弁護士になりたいという夢もあったんです。進路をどちらかに決める必要はまだないと思い、大学では法律の勉強をして、弁護士になる道も残してきました。最近は会社の方が忙しくなってきたので、学生という立場や若さが武器になる今は、そのメリットを活かして事業に集中しようと決めました。でも、将来的には弁護士を目指すことも十分にあり得ると思っています。実際のビジネスを通して法律の知識が身につくこともあるでしょうし、起業や経営の経験が無駄になることはありませんから。進路って選択肢を切り捨てながら絞り込んでいくイメージがあるかもしれませんが、やりたい気持ちが少しでもあるなら、可能性を残したままでもいいんじゃないかと思うんです。あくまでも、今のタイミングではこれがメイン、というだけ。ガチガチに決めてしまわなくていい。そう思っています。(株)Sunshine Delight代表取締役社長いとう・えいか●東京都出身。中央大学法学部在学中。中央大学附属高校2年生のときに授業の一環で参加した「高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫)でベスト100企画に選ばれる。その後、JAグループの「JAアクセラレーター」で特別賞を受賞。(株)Sunshine Delightを設立し、代表取締役社長となる。子ども向け日焼け止めクリームをKOSÈと共同開発。保育園等でのモニタリングを経て、本格的な事業化に向けて奔走中。起業も進路も「やりたい」が少しでもあれば、可能性は無理に切り捨てない高■伊藤さんのあゆみ高校で起業家教育を受け、ビジネスにより課題解決ができることを知る。高校2年生JAグループの「JAアクセラレーター」で特別賞を受賞。高校3年生(5月) (株)Sunshine Delightを設立。高校3年生(7月)KOSÉの「Innovation Program 2019」に採択。高校3年生(12月)保育園等での実証実験を実施。大学1年生事業の本格化に向け、当面はビジネスに集中することを決意。大学2年生142022 APR. Vol.442

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