キャリアガイダンスVol.442
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校もある。 この哲学対話の手法を用いて、高校生が多角的に「働くこと」、そして自分の進路について考えるため、哲学プラクティショナーの松川えりさんに協力を仰いだ。松川さんは「哲学対話は、具体的な経験から語ることが大事」と話す。経験のない高校生が「働く」を思考するための懸け橋が必要と考え、さまざまな職業の大人の方をお呼びした。手順はまず大人が経験に基づいて対話を行う。次に、大人の経験を思考の土台として、生徒たちが「自分らしく働くこと」について考え、最後に全員で対話する構成とした。自由に思考するために、 自由に話し、聞き、考える。対話が始まれば誰もが対等。哲学対話とは、身近なテーマを題材に、対話のプロセスを通じて思考を深めるものだ。その発祥は1970年代にアメリカで始まった「子どものための哲学」まで遡る。テーマに対して、さまざまな立場・角度から、問いや考えを交換する。その場ですっきり正解が出るものではないため、自ずとモヤモヤが残り、対話後も思考が深まることが多い。 どんな道筋を辿るかは参加者次第で、進行役が知識を提供するセミナーとも、決められた手順で結論を導き出すグループディスカッションとも違う。よって、一つのテーマに対して多様な論点があることや、異なる他者との意見交換に必要な姿勢を学ぶことができると期待されている。昨今、教育現場でも哲学対話への関心は高まり、総合的な探究の時間に取り入れる学未来の「働く自分像」を描けるように、高校現場では職業人講話などを通じて生徒に働きかけてきました。見聞きし、読んだ働く大人の話を、自分自身と結びつけて思考を深めるためには? 小誌は哲学対話の実践者である松川えりさんと地域の大人たちの協力を得て「働くこと」についての哲学対話を実施しました。高校生が対話を通して思考した様子をレポートします。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任研究員を経て、フリーランスで哲学カフェなどの企画・進行を行う。通称“岡山のてつがくやさん”。企画・ファシリテーター 松川 えりさん取材・文/塚田智恵美 撮影/松本紀子「働く」を等身大で考える222022 APR. Vol.442

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