キャリアガイダンスVol.442
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 高校生に「自由に話して」というと、沈黙が続いてしまうこともあるかもしれません。沈黙には2種類あります。1つ目は言いたいことがあるのに遠慮して生じる沈黙。2つ目は「考え中」の沈黙です。ずっと沈黙していて退屈そうに見えても、頭はフル回転している、という場合もよくあります。その場合は、無理に発言を促す必要はありません。 今がどちらの沈黙なのかわからない場合は、率直に聞いてしまってもいいでしょう。「遠慮しているのか、考え中か、どっちですか?」と。もし遠慮していると言うなら、「どうぞ話して」と促します。 時には、一人の人がずっと話し続けてしまうこともあるでしょう。あまりに話す人が偏りすぎるときは「あの人の話も聞いてみたい」と伝えることもあります。 今回は3時間の長丁場だったので、間に20分の休憩を入れました。もし全体が1時間半程度でも、参加者が緊張している場合は休憩を入れるのがおすすめです。対話の時間よりもカジュアルに、参加者同士が話せる機会にもなります。実際、今回の対話でも「休憩以降に話しやすくなった」と話した高校生がいました。緊張をほぐすためにも大事な時間です(松川)。大人も真剣に悩んでいるとわかって、自分もこのテーマを考えてみたくなったのだろう。 自分の進路について話す生徒もいれば、「自分が『自分らしい』と感じる瞬間」について、高校生活での経験、集団の中での役割へと話を広げる生徒も。それぞれに違う視点での話が続く。「今の話を聞いて思うことはある?」と松川さんが促すと、すぐに話し出す生徒もいれば、なかなか口を開かない生徒もいる。途中から、次に話す相手を指名する形で対話を進めたが、松川さんは「話すのも話さないのも自由。指名されたタイミングで話したくなかったら『今はパス』と言っていいからね」と繰り返す。生徒の考えに対して、大人が異なる見地から意見を述べる場面もあった。 休憩時間には、大人と生徒が入り混じり、会話が盛り上がった様子。休憩終了後は、生徒たちもだいぶリラックスした表情になっていた。 次は高校生を中心に対話を始める。松川さんは「大人たちの対話で印象に残ったことは?」と聞いたが、生徒たちからは「自分自身はどう働きたいか」といった話が出てきた。大人たちの対話を「自分ならどうするか」と考えながら聞いていたのかもしれない。自分ごととして「働く」を語り出した生徒たち高校生が対話対話40分↓休憩20分時間配分の例(3時間の場合)テーマファシリテーションのポイント思考は外から見えない。沈黙を恐れないで以前は保育士になりたいと思ってたんです。子どもが好きだから。でも甥っ子が生まれたのをきっかけに「子どもが好き」だけでは保育士の仕事は務まらないかもと思うようになって…。私は子どもを育てているけど、そんなふうに考える人が保育士さんだったら嬉しいけどな。自分でアイデアを出して、自分で行動することが好きだから、自営業とかのほうが向いてるのかなって思いながら最初は聞いていました。でも組織の中にいても、自分らしさを発揮する方法はあるのかな。252022 APR. Vol.442いま、「働く」をどう考えるか多角的に「働くこと」を思考する。大人と高校生の哲学対話

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