社会の変化に振り回されることなく、一人ひとりが自分の良さを生かして働いていくために、高校は何ができるのでしょうか。3校の事例から探ります。「自分にとっての働く」を考える高校事例〝HAPPY〞というスクールスローガンを掲げている白根高校。「幸せ」という意味と同時に、図1のように「Healthy」「Active」「Positive」「Powerful」「Yourself」の頭文字をつなげたHAPPYでもある。特に「(Be)Yourself」が表す「自分らしさを活かした人生を送ること」を願ったスローガンだ。「自分らしさ」とは、人が自分の役割を果たして活動し社会に貢献すること、つまり「働くこと」を通して表現できるものと考えている。 2020・2021年度には山梨県の「キャリア教育推進実践研究校」の指定を受け、「〝HAPPY〞自分らしさを活かした人生をめざして」という主題で研究を実践。この取組は文部科学省の「第14回キャリア教育優良教育委員会、学校及びPTA団体等文部科学大臣表彰」の表彰校に選出されている。 取組の背景には、同校の生徒が大人しくて真面目な一方で、高校入学までにリーダー経験などが少なく、自己肯定感が低いという課題があった。「高校で自分の殻を破りたいと考えている生徒が多いと感じています。例えば、女子生徒がやりたい活動の人気ナンバー1が生徒会活動です。自信をもって人前に立てる力をつけたいという意欲の表れだと思います」(中村千尋校長)「こうした生徒たちにそれぞれの幸せについて意識させること、生徒自身が自分のキャリアを考えるうえで、学校でのさまざまな取組がつながりのあるものととらえられることを念頭におきました」(進路指導研究係主事の秋山香江先生) 自分の殻を破り、「幸せ」という極めて個人的で抽象的な目標に向かって、生徒たちが何をどう目指せばよいか。悩んだ秋山先生は、慶應義塾大学の前野隆司教授の幸福に関する研究と「幸せ」と「自分らしさ」をスクールスローガンに幸せ因子を言語化して生徒の目標を可視化する取材・文/長島佳子スクールスローガン〝HAPPY〞をカリキュラムに落とし込み自分らしさを活かした人生をめざす白根高校(山梨・県立)白根高校のキャリア教育の概要体も心も健康で、人間関係も健全であること体も頭も元気で活発であること前向きで、積極的であることたくましく、協働できること自分らしさを活かした人生を送ること“HAPPY”自分らしさを活かした人生をめざしてクロスカリキュラム“HAPPY”をテーマに幸福について、複数の教科・科目の視点で多角的に考え、自分ごととして理解し、その実現のために主体的に動き始めるインターンシップ事前学習、実施、報告会を通し● 働くことの意義や目的、職業についての理解を深める● 自己を見つめ進路目標を明確にし、学習意欲を高める「キャリア・幸せ因子」に関するアンケート目的取組確認スクールスローガンキャリア教育の主題282022 APR. Vol.442
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