出合う。前野教授の提唱する〝幸せの4つの因子〞を生徒アンケートに取り入れ、その質問の提示自体で生徒に「幸せとは」を考えさせ、かつ振り返りで自分の成長を測れるようにした。〝幸せの4つの因子〞とは、つながりと感謝を示す「ありがとう!」因子、前向きと楽観を示す「なんとかなる!」因子、独立とマイペースを示す「あなたらしく!」因子、自己実現と成長を示す「やってみよう!」因子だ。 アンケートでは、キャリア教育で育成すべきとされている基礎的汎用的能力に関する項目と、幸せの4因子に関する項目について、合計22問の設問に対して自分の状況を「非常に当てはまる」から「全く当てはまらない」まで5段階で回答する形式になっている(30ページの図2)。高校入学時の1年生の6月、1年生終了時の3月、2年生でインターンシップを経験した後の9月の、計3回で生徒の変化を測っている。「〝HAPPY〞自分らしさを活かした人生をめざして」を主題に掲げたキャリア教育は、クロスカリキュラムとインターンシップの二本柱で進められている(図1)。以下、二本柱の取組の詳細について紹介していく。 クロスカリキュラムは、〝HAPPY(幸せ)〞をテーマに複数の教科・科目で授業を行う。 例えば、家庭科では、自分の幸せに必要なものを「地位財・非地位財」(経済学者のロバート・フランクが提唱。他人との比較で満足を得るものを「地位財」、他人との相対比較とは関係なく幸せが得られるものを「非地位財」と定義)に分類する授業、国語科ではスクールスローガンからキャッチコピーを考える授業、情報科では、「学校のHAPPYなところ」を見つけて話し合う授業などだ。幸せについて、複数の教科・科目の視点で多角的に考え、生徒たちが自分ごととして理解し、その実現のために主体的に動き始めることをねらいとしている。「全教員の指導案は共有フォルダーで参照できるようにしています。家庭科の授業の内容を国語科で活用したりと、教科を越えて参考にしながら授業を設計していただきました」(秋山先生) インターンシップは白根高校のキャリア教育の核と位置づけられ、2年生全員が地元の事業者で職業体験をする。2004年にスタートした歴史ある取組で、コロナ禍が始まった2020年度は中止を余儀なくされたものの、2021年度は全員の受け入れ先を確保することができた。 インターンシップに生徒が目的意識をもって取り組み、経験を自分ごと化するために、事前学習から事後の報告会まで丁寧にプログラムを設計している(左の写真)。 事前学習では、1年時に「地元の企業を知る」ワークを実施。来校した10企業から各生徒が3企業を選んで話を聞き、自分がどんな企業に興味をもてるかを考える。「分野別職業人講話」では17分野から2分野の話を聞く。少人数制の座談会方式で、生徒たちが知りたいことを質問しやすい形式にしている。2年生になってからは、ビジネスマナー講座を実施。昨年度は東京のビジネスマナーの講師からオンライン形式で講習を受けた。 インターンシップは7月下旬の3日間行われ、2021年度は44企業で127名の生徒を受け入れてもらえた。コロナ禍により直前で受け入れ中止の申し入れがあるなど、必ずしも全生徒が希望通りの業種・職種では体験できなかったが、それでも多くの学びがあった。「『働く』とは具体的にどういうことなのかを自分の目で見てくることが重一つのテーマを複数教科の視点で多角的に学んでいく事前事後の学びまで丁寧に設計されたインターンシップ1941年創立/普通科/生徒数380名(男子163名、女子217名)、 全日制普通科高校。普通科高校としては山梨県内で初めて、2004年から2年生のカリキュラムにインターンシップを取り入れた。2021年度よりコミュニティスクールとして地域連携を促進している。学校データ【インターンシップの流れ】全員がポスターで自分の体験をまとめ、各クラスの代表が1年生に向けて「インターンシップ説明会」という形式で報告を行った。10企業のブースから生徒が3企業を選んで話を聞く「地元の企業を知る」(上)。「分野別職業人講話」(下)は座談会方式で進められた。校長 中村千尋 先生(左)、進路指導研究係主事(取材時) 秋山香江 先生(右)2年生の全生徒が44企業で実施。一人で行く生徒もいたが、緊張しながらも自分に課せられたことをやり遂げ、企業から良い評価を得たことが自信につながっていた。事前学習インターンシップ実施報告会292022 APR. Vol.442いま、「働く」をどう考えるか「自分にとっての働く」を考える高校事例
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