要です。希望の職種とは違っていても、さまざまな職種の大人たちがそれぞれの思いをもって働いている姿を目の当たりにし、共に働いてみることで、自分が将来働くとしたらどのような感じになるかを想像するきっかけとなるからです。インターンシップは『働く』を自分ごとにするうえで非常に役立つと考えています」(秋山先生) インターンシップ後は毎年報告会で振り返りをするが、昨年度は単なる報告ではなく、「1年生のためのインターンシップ説明会」とした。「発表会のポスター作成段階で、自らの体験を周りに伝えようと客観視できます。また、それを他者の役に立てるという意味付けをしました」(中村校長) 自分の体験が1年生の役に立ち貢献できることで、自己肯定感の醸成にもつながったという。 一連の取組を経た生徒たちの変化は、図2のアンケート結果の変遷から見てとれる。また、アンケートの自由記述に表れた生徒たちの声からは、自分を客観視し、将来の進路を考える意欲が高まっている様子がうかがえる。 データでは「課題対応能力」と「あなたらしく!」因子が顕著に伸びている。「あなたらしく!」因子の設問は「自分と他人をあまり比べないほうだ」と「他人に何と思われようとも、やるべきだと思うことはやるべきだ」の2問。「幸せ」について考える授業や職業体験、アンケートでの振り返りを通して、生徒たちが自分らしさを活かそうと一歩を踏み出し始めた証しだ。「インターンシップ後に下降した項目もありました。それも社会の厳しさを知った気づきだと判断しています。それでも以前から本校の生徒は、インターンシップを経験して自分らしさを見出していく傾向が高いです。成績の良い生徒が大学ではなく専門学校を選択し『大学に行くことが最善策ではない』と考えるなど、自分にとって何が大事かを考えた進路選択ができていると思います」(秋山先生)「県内進学者や、その先の進路も県内就職者が多いことが本校の特徴でもあります。インターンシップは地域社会で生きていく社会人としての足場となり、社会に出たときの自分の像を可視化できる体験となっているのではないでしょうか」(中村校長) 多角的な取組と社会での実体験により、同校の生徒たちは自分にとっての〝幸せ〞とは何かと向き合いながら進路選択に臨んでいるようだ。● 1年生のときよりも進路について考えることが増えて、自分の進みたい道も少しずつ決まっていきました。これからも真剣に考えてがんばっていきたいです。● アンケートを通して今の自分を見つめなおすことができたと思う。● 苦手なことにもチャレンジしてがんばっていきたい。● 進路について調べるようになり、目標を立てて行動できるようになっている。● 課題対応能力が高くて、職業観や「やってみよう!」因子が低かったので、自分からいろんなことに挑戦しようと思った。● もっと目的をもって生活したほうが良いと感じた。● 自分の夢や目標をもっと細かく考え、人生設計をしていきたい。● 自分の将来に勉強がどのように役立つか見つけてみようと思った。● 後半の設問で目標を尋ねられたことで、私は高校を卒業したら何をしようと考えるきっかけになった。生徒たちの声「あなたらしく!」因子が飛躍的に伸びた生徒たち※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.442)1年生の6月を基準(0)とし、2回目、3回目の変化を表したもの。「課題対応能力」と「あなたらしく!」因子が顕著に伸びている。アンケートデータから見える生徒の変化「キャリア・幸せ因子」に関するアンケート●「キャリア・幸せ因子」に関するアンケート「やってみよう!」因子「あなたらしく!」因子「なんとかなる!」因子「ありがとう!」因子キャリアプランニング能力課題対応能力自己理解・自己管理能力人間関係形成・社会形成能力職業観・勤労観000.050.05-0.05-0.05-0.10-0.10-0.15-0.150.100.100.150.150.200.200.250.25職業観・勤労観 1)働くことに対して不安や緊張感はなく、社会に出ることを楽しみにしている人間関係形成・社会形成能力 2)相手の考えや意見を聴き、理解しようとしている 3)自分の考えや気持ちを整理して伝えようとしている 4)周囲の人と力を合わせて行動しようとしている自己理解・自己管理能力 5)指示されたことだけでなく、自分で考えて行動できる 6)自分の興味や関心、長所や短所などについて自分で分かっている 7)自分の感情に流されずに、規則を守り、何事も取り組むようにしている課題対応能力 8)苦手なことでも、自分の成長のために進んで取り組むようにしている 9)調べたいことがある時、自ら進んで資料や情報を集めるようにしている 10)解決する問題や課題があった時、原因を考え、解決方法を工夫している 11)計画的に物事を進めたり、改善を加えて実行したりしているキャリアプランニング能力 12)学ぶことや働くことの意味について理解するようにしている 13)学校での勉強と自分の将来をつなげて考えるようにしている 14)自分の将来について目標を立て、その実現のための方法を考えている「ありがとう!」因子 15)人の喜ぶ顔を見るのが好きだ 16)いろいろなことに感謝するほうだ 「なんとかなる!」因子 17)いま抱えている問題はだいたい何とかなると思う 18)失敗や嫌なことに対し、あまりくよくよしない 「あなたらしく!」因子 19)自分と他人をあまり比べないほうだ 20)他人に何と思われようとも、やるべきだと思うことはやるべきだ「やってみよう!」因子 21)得意としていることがある 22)何か、目的・目標を持ってやっていることがある2021年3月2021年9月302022 APR. Vol.442
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